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動物写真家・岩合光昭が映画初監督、猫が見せた奇跡のアドリブとは?

猫が奇跡のアドリブ、岩合氏の“隠されたテーマ”を見事に実現

 そんな映画『ねことじいちゃん』だが、実は隠されたテーマがある。

 「風が吹いたり、月が満ちたり、綺麗な海だったり。そんな島の自然環境をできるだけ出すよう心がけました。なぜかと言うと、人々は島の水で育ち、島の水で作ったお味噌汁を食べ、島の水を飲んで果てるからです。環境が人を育てるのだし、過疎化したとしても、そこで老人が果てることに意味があると思うのです。ある重要なシーンでは、タマが手水鉢の雨水を飲みます。これは完全にベーコンのアドリブだったのですが、映画の根幹に関わることでしたので、私もモニターを見ながら“やってくれた!”と感動しました」

 その地に生まれ、そして果てていく。今作に映し出される美しい風景やベーコンの演技は、日本という高齢化が進む国に生きる我々に、あらためて人生を考えるきっかけをくれるかもしれない。

アニマルセラピーというより魔力? 猫が高齢化社会に必要な“つながり”作る

 また、島に暮らす人々と猫との関わりも絶妙だ。一人の老人が猫と生きることで、得られるものとはなんだろうか。

 「映画の中でも“アニマルセラピー”と言っていますが、それ以上の効果があるのではないか。というのは、猫は魅力というより魔力を持っていて、人と人を結びつける力があるように思うんです。猫を介して人が結びつく。僕は海外で撮影することも多いですが、様々なコミュニティーに実際に猫がいるのを見かける。僕自身、猫のお蔭で現地の人々に受け入れてもらったこともありました」

 人との繋がり、それこそ高齢化社会にとって大切なもの。そんな“魔力”を持つ猫だが、まずは猫自身と仲良くなり、ともに暮らすコツとは?

「自分を主人だと思わないことですね。猫に主人はいないですし、我々を人間とも思っていません。だから、人間に魚やネズミや鳩なんかを捕って持ってくるんです。“お前らは狩りができずにかわいそうに”って(笑)」

 最後にメッセージをいただいた。

「過疎化だとか老人問題だとか、いろいろな問題が含まれた映画ですが、それを明るくファンタジーに描きました。ご覧になる方々が笑顔で楽しく観られる映画になっていると思います。猫好きの方はもちろん、猫に興味がない方も連れてきてもらって、“猫っていいじゃない”と思ってもらえたら幸いですね」

(文:衣輪晋一)

映画『ねことじいちゃん』

2年前に妻に先立たれ、飼い猫のタマと暮らす大吉、70歳。毎朝の日課はタマとの散歩、趣味は亡き妻の残した料理レシピノートを完成させること。島にカフェを開いた若い女性・美智子に料理を教わったり、幼なじみの巌や気心知れた友人たちとのんびり毎日を過ごしている。しかし友人の死や大吉自身もいままでにない体の不調を覚え、穏やかな日々に変化が訪れはじめた矢先、タマが姿を消して――。一人と一匹、生まれ育ったこの島で、共に豊かに生きるために下した人生の選択とは――?



監督:岩合光昭
原作:ねこまき(ミューズワーク)『ねことじいちゃん』(KADOKAWA刊)
出演:立川志の輔 柴咲コウ 小林薫 田中裕子 柄本佑 銀粉蝶 山中崇 葉山奨之 ベーコン
(C)2018「ねことじいちゃん」製作委員会

2月22日(金)公開
【公式サイト】(外部サイト)

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