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冷酷さの中に潜む人間味、後輩の飛躍も作る東野幸治の“芸人力”

  • 東野幸治 (C)ORICON NewS inc.

    東野幸治 (C)ORICON NewS inc.

 色白で他人の不幸をこよなく愛することから「白い悪魔」と呼ばれ、有吉弘行からつけられたあだ名は「二軍のボス」……ダウンタウンの背後に潜みながら、いつの間にか“名MC”へと昇りつめた東野幸治。情報番組にバラエティ、特番などのMCをそつなくこなす一方、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では自ら企画をプレゼンし、ひな壇にも上がる。先輩・後輩からも親しまれ、恩義を感じている芸人も多い。「人間の心がない」と評されながら、実は情に厚い(!?)東野の“芸人力”とは?

分かりやすくかみ砕いて笑いにも昇華、情報番組で見せる所作

 最近の活動で目立つのは、やはりMC。その代表作とも言える『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、松本人志をうまく誘導して面白い発言を引き出し、武田鉄矢や長嶋一茂、社会学者の古市憲寿といったクセの強いゲストコメンテーターをもさばく。先月の放送で松本が欠席した際、東野は冒頭で謝罪しつつ、「一説には風邪、一説にはズル休みということです」と笑いに転化、後に松本が返しやすくアシストしながらも、番組をしっかり成立させていた。

 また、『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(テレビ朝日系)では、ニュース情報番組という東野らしからぬ番組のMCを務めているが、京都光華女子短大教授・鹿島我氏には、「専門家が述べる見解は一度聞いただけでは理解しにくい場合がある。東野はその内容が視聴者には難しいと判断した瞬間、わかりやすくかみ砕く。東野幸治というフィルターを通すことで難しい情報をわかりやすく“清浄化”するのだ」(産経新聞夕刊コラム「キラメキTV塾」より)と絶賛していた。

 そんな東野の対応力の高さを支えるのが、趣味の広さ。新幹線の長い移動時間では読書に勤しみ、海外ドラマやアニメを積極的に観ては、SNSで感想をつぶやく。週刊誌にも目を配りゴシップネタにも詳しいなど、きちんと日々“お勉強”しているのだ。

 また、冷静な自己分析ができるのも東野の強みのひとつ。『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の後番組『世界!極タウンに住んでみる』の初回収録時、記者から“めちゃイケ超え”となる長寿化を期待されると、「僕の役割をまっとうして、いい番組にしてみたい。視聴率とかもあまり気にしないタイプなので、歯車のひとつとしてリラックスしてましたよ」と淡々と語り、「考えちゃうタイプの人はこの仕事受けないですよ」と笑い飛ばしていた(ちなみに目は笑っていなかったが)。

“芸人再生工場”!? 助けられた芸能人も多く後輩の飛躍の場づくりも

 そして最大の“意外性”が、後輩芸人や芸能人に対しての気遣い。そのおかげで後輩たちが持ち直すこともある。たとえば、千鳥。過去、何度か東京進出に失敗した彼らだが、2014年の『アメトーーク!』では、東野の持ち込み企画として「帰ろか…千鳥」を放送。活動の拠点を大阪に戻す提案のようにも取れるが、見事に笑いに転換した。以降、千鳥の露出はみるみるうちに増えていき、見事に大ブレイク。読売テレビ放送の『漫才Lovers』も今年7月、東野から千鳥にMC が引き継がれた。

 品川庄司・品川祐も、同番組で東野に「どうした!?品川」企画を持ち込まれた。昔は尖っていた品川が、映画監督としても活躍して文化人を気取ってはいるが、かつてのギラギラした品川に戻ってほしいと提案する企画だ。

 千鳥にしても品川にしても、少し陰りがみえてきた後輩に手を差し伸べ、再び注目を集めるようにする。東野が彼らを面白いと思っているからこそだが、同時に先輩心も感じ取れる。表向きは東野っぽい悪意に満ちたおふざけ企画で、「もう、大阪帰ったら?」とか「文化人気取ってんなよ!」とかましながらも、マイナスイメージを笑いに転換し、千鳥も品川も救われたのである。

 そして、いつになく東野がぐいぐい引っ張る『東野・岡村の旅猿 プライベートでごめんなさい…』(日本テレビ系)では、相棒である岡村隆史が芸能活動を一時休止した際、出川哲朗などとともに番組を続けることで、きちんと岡村に“戻れる場所”を残しておいた。さらに同番組では、今年3月にベッキーをゲストに起用。ベッキーと言えば、東野が『ワイドナショー』で不倫騒動をネタにした際、「これ以上、私をビジネスに使わないで!」と物申したという因縁の関係。それでも、復帰のタイミングをうかがっていたはずのベッキーが、『ワイドナ』や『旅猿』に出演したのは、スキャンダルを東野に笑いで中和してもらえるという“信頼感”があったからではないだろうか。

最強ひな壇であり中堅芸人こそ、大物にもツッコめる“芸人力”

 有吉弘行に「二軍のボス」とあだ名をつけられたように、中堅芸人のトップをいく“最強ひな壇”に君臨する東野だからこそ、「見渡せる風景」があるのだろう。大物や若手限らず、きっちり自分の役割を見極めて仕事をこなす。ド頭からガツガツ突っ込むのではなく、周りの様子をうかがいながら攻めていく。その絶妙なタイミングは、突っ込まれる側も実に心地よさそうであり、おいしい。まさに芸歴も長く、さまざまな芸人と絡んできた百戦錬磨の東野だからこそできる技。

 今年の6月、桂三度(ナベアツ)の落語で高座に上った際、東野は自身のインスタグラムで「私の芸人論は「お金を払っているお客さんの前で喋る」ですから、今回の出番は「私は芸人だ」という既成事実を作る高座でした」と投稿。TVの仕事(特にMC)で多忙な中、定期的に自分が芸人であることを再確認する作業を行なっていることがうかがえ、それもまた東野らしい真摯な姿が垣間見える。

 読書家で博識、人間観察力にも長け、瞬発力のあるリアクションと邪魔をしないタイミングでの対応、それらをひな壇でもMCでも活かす東野幸治。それでいて、自分の持ち味でもある“冷酷・腹黒キャラ”も消さない。50を超えて今、東野は一番バランスのいい形で“芸人力”を発揮しているとも言えよう。それでもたまには、かつて超ハイレグの衣装を着てWコージで暴れていた「電磁波クラブ」や、27時間テレビでマラソンランナーのトミーズ雅が感動のゴールをした際、「どうでもええんじゃー」と絶叫したような、「狂いっぱなしの東野幸治」も久々に見てみたいと渇望されるのも彼らしさと言えるだろう。

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