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(更新: ORICON NEWS

ゆるい“街ブラ”番組でこそ問われるタレントの技量、一方で”安易な模倣”への懸念も

  • 有吉弘行とフジ生野陽子アナの正直すぎるコメントが人気の『有吉さんぽ』は今年6年目を迎えた。(C)ORICON NewS inc.

    有吉弘行とフジ生野陽子アナの正直すぎるコメントが人気の『有吉さんぽ』は今年6年目を迎えた。(C)ORICON NewS inc.

 今春、お笑いコンビ・千鳥が『千鳥の路地裏探訪』(テレビ朝日系)をスタートさせ、キー局における“街ブラ”番組に参入した。”街ブラ”というジャンルは、タレントが街をぶらぶら歩きながら地元の人々とふれ合い、隠れたスポットや美食を紹介する“ユルさ”がウリ。だが最近は、さまぁ〜ずにマツコ・デラックス、有吉弘行らトークに定評のある実力派が多いことに気づく。なぜこの“ユルい”コンテンツに猛者が集うのか?

さまぁ〜ずにマツコ、有吉ら実力派によるロングラン多数

 街歩き番組は現在も『ブラタモリ』『鶴瓶の家族に乾杯』(ともにNHK総合)、『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京系)、『火曜サプライズ』(日本テレビ系)、『もしもツアーズ』(フジテレビ系)、『ごぶごぶ』(毎日放送)、『じゅん散歩』(テレ朝系)など各局で多数放送されている。

 その金字塔の一つ『モヤモヤさまぁ〜ず2』(テレ東系)は「何があるか分からずモヤモヤする」マイナーな街をさまぁ〜ずが訪れ、「モヤモヤ」を解消するのがコンセプト。当初は深夜枠だったが、“世界一ドイヒーな番組”をキャッチコピーに、徹底したマイナー感とユルさで支持を得て日曜ゴールデンに昇格、12年目を迎えた。

 有吉弘行の『ぶらぶらサタデー・有吉くんの正直さんぽ』(フジ系)も足掛け7年目に突入。一般人相手に有吉の“正直”な(!?)毒舌が冴え渡り、ロングランに。マツコ・デラックスの『夜の巷を徘徊する』(テレ朝系)は今年4年目。夜の酒場で会った女性たちに人生相談されることも多く、女性たちとの対話をまとめた特集回もある。

 例外はあるが最近は、トークに定評のある実力派タレントが“街ブラ”番組を担当していることが多い。

各局で盛況も「撮れ高」は未知数 “街ブラ”は博打コンテンツの一面も

  • 時に「深夜の巷」にいる素人たちの人生相談に乗ることも。マツコ・デラックス(C)ORICON NewS inc.

    「深夜の巷」を徘徊しながら、素人たちの人生相談に乗ることが多いマツコ・デラックス(C)ORICON NewS inc.

 “街ブラ“番組について「元々は逃げのコンテンツだった」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「某番組制作関係者から伺ったことがあるのですが、バラエティのネタが枯渇した昨今、ノウハウもあって作りやすく低予算で制作できる“街ブラ番組”に注目が集まった。安定した視聴率も期待できるため増加しているのです」(同氏)

 だが“街ブラ”には、「撮れ高」が予想できない欠点がある。体当たり系ロケや紀行バラエティ、グルメ系ロケは、あらかじめ訪れるスポット、目玉料理、イベントなどの流れで撮影すればいいが、純粋な“街ブラ”では、偶然発見した店を訪ねたり、地元民と触れ合ったりすることもあり、その際に絡むのも一般人であることから、面白くなるか「未知数」。ハネるかもしれないチャンスもあれば、大コケのリスクもある。

「そこで、何かしらを“撮れ高”に昇華させるタレントの技量が重要に」と衣輪氏。「大半の番組は台本が存在しますが、番組によっては骨組みだけで、記されるやり取りも単なる想定であることが多い。なので『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジ系)の堂本剛さんのように敢えて台本と進行は堂本光一さんに預けるなど場の空気を大切にされる方も多くいます」(同氏)

 ほかマツコはその巧みな話術で、「深夜の巷」にいる素人たちとの対話を電波レベルに引き上げる。有吉は散策道中で出会った一般人や店舗を「愛ある毒舌」でいじることで「日常の街」を「面白みのある街」へと変える。トーク力、コミュニケーション力、瞬発力…“街ブラ番組”こそタレントの技量なくしては成立しない番組と言えるのだ。

千鳥新番組に期待の声、一方で”安易な模倣”への懸念も

 “街ブラ”番組の存続の要はタレントの力量次第ではあるが、そのためにも差別化は必然。NHK総合テレビで08年から断続的に放送されている『ブラタモリ』は、博学のタモリと制作側の徹底したリサーチの相乗効果により「知識と笑い」のバランスがとれた異色の“街ブラ”番組に。『鶴瓶の家族に乾杯』は人たらし・鶴瓶の魅力が満載。ほかの番組もそれぞれタレントの個性が溢れており、制作陣とタレントの二人三脚がうまくいっていることが窺い知れる。

 一方で新参の『千鳥の路地裏探訪』だ。これはテレ朝が誇る天才・加地倫三氏(『アメトーーク!』など)がゼネラルプロデューサー。初回視聴率こそ苦戦したが、“ロケの達人”として知られる千鳥の魅力が徐々にお茶の間に浸透し、SNSでも「千鳥は人の懐に入るのがうまい」「仲良しでかわいい」など好意的な声が増えてきている。

「東京進出直後こそ振るいませんでしたが、最近は『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)などのロケ番組で、関東でも存在感を示してきた。元々お笑いの本場・関西で大人気だったこともあり、ベタな笑いのお約束&セオリーは熟知。それを逆手に取り、ダチョウ倶楽部さん的な“押すな押すな”のくだりでは、逆に押そうとする方が水に落ちたり、大悟さんの玄人好きするボケを“なんでやねん”ではなく“わしゃどうすりゃえんじゃ”“クセが強い”など、斬新なワードで引き立てるノブさんのツッコミが人気です。彼らの笑いは、笑いの方程式化と典型の解体、いわゆるスクラップアンドビルドが特徴ですが、それでいて収束先は “超ベタ”。その“超ベタ”スタイルがお約束の多い“街ブラ”番組と相性がよく、視聴者は、見慣れたベタな番組構成で、ちょっと新しい笑いを日曜朝からほのぼの観ることができているのです」(衣輪氏)

 タレントの本領発揮がキモの“街ブラ”番組。千鳥の活躍を楽しみにしたいが、かつて「ひな壇バラエティ」がブームになるも、各局模倣の流れを生んで飽和したため、視聴者の飽きを招いてしまった例もある。“街ブラ”をはじめ、ロケ番組全般が人気の現在、過剰供給から同じような過ちを繰り返す恐れがないとは言えない。

「コンテンツの乱発は、それ自体の“消費期限”を縮めかねません。特にタレントの技量が如実に表れる“街ブラ”は、安易な量産によってクオリティの低下を招く恐れも」と衣輪氏。各局にはそういった“マーケティング的な”番組作りだけではなく、千鳥など今後有望なタレントを使った新たな、“クセが強い”コンテンツ開発にも勤しんでもらいたい。

(文/西島亨)

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