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一発屋の代名詞に? 軽んじられる芸人の「決め台詞」
代名詞たる“キメ台詞”を手に入れれば一躍「人気芸人」の仲間入りに
昭和の時代、しゃべくり漫才を世に広めた横山エンタツ・花菱アチャコの「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」や人生幸朗・生恵幸子の「責任者出てこい!」、植木等の「お呼びでない?」、谷啓「ガチョーン」、萩本欽一の「なんでそうなるの!」など、高度成長期を象徴する数々の名フレーズが生まれた。また、ザ・ドリフターズでは、いかりや長介の「オイッスー!」、「次行ってみよう」、加藤茶の「ちょっとだけよ〜」、「加トちゃん、ペッ!」など多くの定番ネタを生み出した。
1980年から82年にメディアを席巻した漫才ブームの時代には、B&Bの「もみじ饅頭」、ビートたけしの「コマネチ」、横山やすし「怒るでしかし!」、西川きよし「小さな事からコツコツと」、西川のりお「ツクツクボーシ」と、今でも聞く珠玉のギャグの数々が誕生した。さらに、お笑い第三世代では、とんねるずの「一気!」「貴さんチェック」、ダウンタウンは「イラっとする」「逆切れ」「パンチが効いてる」などの名フレーズが記憶に新しい。
以降、さまぁ〜ず・三村マサカズの「〜かよ!」、オードリー「トゥース」、サンドウィッチマン「ちょっと何言ってるか分からない」など数々の“決め台詞”が世に送り出されてきた。お笑い芸人にとってこうしたパワーワードをいくつ持っているかは、人気のバロメーターとも言えよう。
“決め台詞”=一発屋という色眼鏡で過小評価されている芸人も
それは「ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテンに入るとその芸人は消える、というジンクスがネットでまことしやかに囁かれていることからも明らかだ。
実際、波田陽区の「残念!」(04年)、レイザーラモンHGの「フォーー!」(05年)、エド・はるみの「グ〜!」(08年)、スギちゃんの「ワイルドだろぉ」(12年)、とにかく明るい安村「安心して下さい、穿いてますよ」(15年)など、いずれもメディアを席巻した“人気フレーズ”ではあったが、今ではテレビで見る機会もめっきり減っている。
一方で“決め台詞”のポップさが、実力派芸人をブレイクさせる「助け舟」になることも
実際、ブルゾンちえみは、「35億」の決め台詞でブレイクした後、その次が見いだせず苦悩し、「一発屋で終わるのが怖くて仕方がなかった」とメディアで明かしている。2月に開催された『ワタナベお笑いNo.1決定戦2018』では「35億」を封印し、堂々新ネタで勝負を仕掛けたりもした。同大会に出場した平野ノラも同様に、あえてバブルネタを封印することで、自身に染み付いた「バブル臭」を打ち消すことを試みるなど、それぞれが生き残りを模索している。
一方で、お笑いコンビ・千鳥の代名詞となっている「クセがすごい」などの名フレーズは、東京でブレイクするために見つけ出した“決め台詞”とも言える。というのも、千鳥は自身がブレイクするためにオードリーの「トゥース」や、ブラックマヨネーズの「ヒーハー」といったコンビの代名詞たる“キメ台詞”が必要だと感じており、そのことをラジオなどで度々発言していたのだ。
このように、“決め台詞”のインパクトに消費されないだけの実力を身につけた芸人が、武器となる“キラーフレーズ”を手に入れた場合、その“ポップさ”により全国区のブレイクを果たす場合もある。
一発屋芸人たちが地方で再ブレイクする逆転現象も 懐かしのネタがTVに帰ってくる?
そんな“一発屋”たちが今後、一世を風靡した“決め台詞”を武器に再びTVの檜舞台に戻ってくるかもしれない。 地方で蓄えた実力を元にTVで復権を果たすのか? それともやはり“一発屋”のままで終わるのか? 彼らの再挑戦の行方を見守りたい。