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ORICON NEWS
“売れた後でも”タレントの共同生活が増加 血縁・婚姻関係がないからこその「愛ある暮らし」
家族じゃないけど“他人”でもない、絶妙な距離感の『大家さんと僕』
贈呈式のスピーチで、「大家さんがいつも『矢部さんはいいわね、お若くて何でもできて、これからが楽しみね』とおっしゃってくれて。」と語った矢部。芸人としての自分の生き方、それをマンガに描くこと、大家さんの言葉や暮らしが背中を大きく押してくれたに違いない。肉親であれば、本人を思うあまり踏み込みすぎた言葉をかけてしまうかもしれない。しかし、血縁関係もなく年齢の離れた大家さんだったからこそ、温かい言葉がストレートに響いたのではないだろうか。
作品では、家賃を手渡しするときに部屋に呼ばれてお茶をしたり、大家さんといっしょにデパートに出かけたり…会話の端々に50年以上前の話題が出るなど、自分のおばあちゃんとのやり取りに近い会話に共感。ふたりが交流を深めていく様子はとてもほほえましく、読み進めるうちに人生にとって本当に大切なものを思い出させてくれる一冊となっている。
(【画像】エピソードにほっこり…手をつなぐ矢部と大家さん)
矢部は8月23日にツイッターを更新し、大家さんが亡くなったことを報告。24日に出演した『24時間テレビ41 人生を変えてくれた人』(日本テレビ系)で、大家さんへの思いを語った。番組内では大家さんが亡くなる前に、大家さんへの思いを描いた漫画も披露。「大家さんと出会えて人生の意味がわかりました。幸せの本当の意味を知りました」と涙ながらに読み上げる姿が大きな感動を呼んだ。一般の方である大家さんの訃報を公表したのは、矢部の作品を通して大家さんがたくさんの人に愛されたからこそではないだろうか。
芸にも生きる“コンビ愛”の深さ、一緒に住む利点があるお笑い芸人
7月に『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』(幻冬舎)を発売した阿佐ヶ谷姉妹も、最近まで同居生活を送っていた。共に40代半ばで未婚のふたりは、6年間6畳1間のアパートで同居。ふたりの暮らしぶりからは、家族に似た関係性が伝わってくる。現在は同居ではないが“徒歩5歩”の近距離に住んでいて心強いと語る。
また、「今までケンカは一度もない」というお笑い芸人一の“仲良しコンビ”といえばサンドウィッチマン。彼らもM-1に優勝するまでの10年間同じアパートに暮らしていた。のちに出版した自伝で富澤は、同居していた時期をこう振り返る。
「伊達とふたりで暮していたことも大きいだろう。外で嫌なことがあっても、家に相方がいたら気が紛れる。精神的なトゲトゲが、家に誰かひとりいるだけで緩衝されるんだ。暮らし始めた最初の頃は、お互いイライラすることもあったけど、<生活に干渉しない>っていう暗黙のルールができてから、けっこうふたり暮らしも楽になった」。
同居していたからこそつらい時期を乗り越えることができ、同じ目標に向かって頑張れた。「もし富澤に何かあって、死んだりしたら、僕はこの世界を辞めます」(伊達)と宣言できるほど、10年間で深まったコンビの仲の良さは、いまも生きている。
LINEのグループ名は「テラスハウス」、売れても生活をシェアする不思議な関係
人気バンド・SEKAI NO OWARIも特殊な生活をしている芸能人だ。メンバーのSaoriとNakajinはそれぞれ既婚者だが、かねてから全員で住んでいる「セカオワハウス」と新居を行き来する生活を送っている。「セカオワハウス」とは、地下にスタジオを完備した彼らの制作拠点。いつでも楽曲制作に取りかかれるだけでなく、共同生活だからこその利点も多い。
(【写真】おしゃれ!“セカオワハウス”のリビング&スタジオが公開)
ほとんどの楽曲を手掛けるFukaseによると「テーマはなんとなく話すけど、だいたい考えていることは分かるから」と、他の3人と改めて打ち合わることもないそうだ。曲の世界観を説明せずとも共有できるのは大きなメリット。もともと幼馴染で結びつきの強かったメンバーたちだが、同じ空間に住むことでより関係性が深くなった部分もあるだろう。
様々な形の同居生活が注目を集めている昨今。夫婦や肉親のように距離が近すぎないからこそ、一定のラインを引いた関係が作れる場合もある。もちろん、いいことばかりではないはずだが、相乗効果で刺激し合いながら得られるものも多くある。そして一緒に暮らすからこそ生まれる信頼関係や愛は、きっと人生をより豊かなものにしてくれるに違いない。
(文/辻内史佳)