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「格好をつけずに挑戦を」、フジドラマ復活へむけた“覚悟”とは?

 昨今、“視聴率不振”“面白くない”などネットユーザーから散々な言われ方をされることもあるフジテレビのドラマだが、7月クールは好調だ。月9ドラマ『絶対零度 未然犯罪潜入捜査』、木曜10時の『グッド・ドクター』ともに平均視聴率はほぼ2桁台をマークし、ネットニュースでも“復活の兆しか?”といった前向きな言葉が踊る。果たして今、フジテレビ局内でどのような変革が起こっているのか。同局のドラマ制作を統括する牧野正氏に、復活へ向けた取り組みについて聞いた。

不調脱却への兆し? 好調の月9『絶対零度』の「フジテレビらしさ」

  • フジテレビ第一制作室部長の牧野正氏

    フジテレビ第一制作室部長の牧野正氏

 かつて、“ドラマの王者といえば月9”。往年のドラマファンならば、これに異論を唱える者はいないのではないだろうか。フジテレビの看板枠であり、これまでも大ヒットドラマを連発。ファッションや主題歌の大ヒットなども含め、社会や文化を牽引する存在でもあった。だが、『婚カツ!』(2009年)で視聴率1桁を続出させたほか、『極悪がんぼ』(2014年)が初の平均視聴率1桁台を記録し(ビデオリサーチ調べ)、その後も低迷し続けている。

 そんな中、沢村一樹主演の『絶対零度』は、初回10.6%を記録。シリーズ第3弾となる本作は、主演を上戸彩から沢村一樹に変更。将来的に重大犯罪を起こす犯罪者をAIが割り出し、井沢(沢村)ら未然犯罪捜査班が事件を未然に防ぐ姿を描いた刑事ドラマで、第2話は9.6%だったものの、それ以外の7回はすべて2桁をマークしている(8/30現在)。

 SNS上でも「面白い」「スリリング」など多くの絶賛の声が挙がる本作だが、“未来に起こる犯罪の解決”という普通の刑事ドラマのセオリーとは異なる複雑な物語展開に、「わかりにくい」との声も。牧野氏は「それも含めて、ある意味で今のフジテレビらしい刑事ドラマ」と分析する。

月9をリアルタイムで視聴する層は、40代後半以上がかなりの割合

  • 好調の月9ドラマ『絶対零度』(9話は9/3放送)(C)フジテレビ

    好調の月9ドラマ『絶対零度』(9話は9/3放送)(C)フジテレビ

 『絶対零度』以前は平均視聴率が10%に満たない状況が続いていた月9枠だが、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(2016年)、『好きな人がいること』(2016年)、『海月姫』(2018年)など、ここ数年は、若者からの支持が高いドラマが放送されていた。牧野氏は「そこから見えてきたことがある」と言う。

 「例えば『海月姫』の平均視聴率は6.1%。内容に関しては非常に評判良く、何となく世の中のざわつき感と視聴率とが合っていない感覚がありました。恐らく見ていただいた方はもう少しいたと思います。リアルタイムでテレビの前に座って見るのではなく、携帯で見たり後々配信で見たりという方々が結構いらっしゃるのではないかと。現状、月9ドラマをリアルタイムで見ていただいている層をリサーチすると、40代後半以上の方々がかなりの割合でいらっしゃいます。そのF3(50〜64歳)以上の方々に狙いを絞って成功している局もありますが、フジは元々、それは得意ではない。ですが月9を復活させるには意識せざるを得ない。少しでも幅広い層に観ていただく戦略の中、“刑事もの”という間口の広いジャンルで、内容でエッジを立たせてフジテレビらしさを残した。それが『絶対零度』です」

 「おかげさまで数字的には好調。我々の熱意が響いている状況はありがたいですね。10月クールは織田裕二さん主演の『SUITS/スーツ』が控えています。これも“弁護士もの”という間口の広いジャンルで内容がエッジの立ったものになればと思っています。なんとか今の良い流れを定着させていきたいですね」

「今のフジテレビは“裏通りの店”」、だからこそ木10枠でチャレンジを

自己最高視聴率を記録した『グッド・ドクター』(8話は30日放送)(C)フジテレビ

自己最高視聴率を記録した『グッド・ドクター』(8話は30日放送)(C)フジテレビ

  • 『グッド・ドクター』(C)フジテレビ

    『グッド・ドクター』(C)フジテレビ

 一方、木曜よる10時の山崎賢人主演『グッド・ドクター』も好調だ。サヴァン症候群の研修医(山崎)が小児外科で活躍するヒューマンドラマで、視聴率はこれまで2桁をキープ。先週の7話では自己最高の13.0%を記録した。牧野氏は「月9では王道路線を目指したいが、木10枠はよりチャレンジングな枠にしたい」と語る。

 「木10枠に関しては社内でも様々な議論があり、例えば“大人の女性の恋愛もの”というように、枠のイメージを固定したほうが視聴習慣がついていいのではないかという声もあります。ですが最近の本枠では、『刑事ゆがみ』(2017年)、『隣の家族は青く見える』(2018年)、『モンテ・クリスト伯−華麗なる復讐−』(同年)とジャンルがバラバラなドラマが並びました。ただ、その評判は決して悪くはないので、これもありなのかと。数字を取るのが難しくなっている昨今、ジャンルはバラバラでも“何かフジの木10おもしろいよね”と言ってもらえるような枠にしたいですね。今のフジテレビは、例えるなら、よっぽど買いたいものがなければ訪れない“裏通りの店”。普通のことをしていても買いには来てくれないので、エッジの立ったものにしていきたいと思っています」

強烈描写の『モンテ・クリスト伯』、1話視聴率が「毎分右肩下がり」

 確かに『刑事ゆがみ』あたりから、木10枠の雰囲気は変わってきたように思える。また『〜ゆがみ』『隣の家族〜』『モンテ・クリスト伯』と、どれもSNSなどで見られる視聴者からの評判は好意的だ。

 「『モンテ・クリスト伯』の原作は、無実の罪で投獄されてから脱出するまで(特に牢獄内)の物語にかなりの分量を割いています。ただ、これを連続ドラマ化するなら、無実の罪で投獄され、脱出、そして自分を陥れた者たちに復讐するために舞い戻ってくるという流れを、1話でスピーディーに展開するのがスタンダード。ですが本作では、2話の最後でやっと舞い戻ってくるという流れでした。物語がなかなか進展しないため、1話の視聴率が毎分右肩下がりになるという、稀に見る現象も起こった(笑)。ですが、『モンテ・クリスト伯』という原作に真摯に向き合うということは、そこをちゃんと描くということではないかと。実は、現場では牢獄内をもっと丁寧に描いたほうが良いのではという意見もあった程です。我々は、面白さや物語に“誠実”であれば、ついてきてくれる視聴者もいるはずと信じているのです」

「ネットの指摘はしっかり受け止める」、挑み続ける覚悟

 これら努力の甲斐もあり、7月クールのフジドラマは好調だ。だが牧野氏は「まだまだ道半ば」と兜の緒を引き締めている。

 「ネットユーザーを中心に厳しい声も頂き続けましたが、非常に参考になる意見も多い。実際、当たっているドラマはネットでの評判も良いし、皆様のご指摘はしっかり受け止めたい。また、例えばTBSの日曜9時枠も今ほど安定してない時期がありましたが、良質なドラマを積み重ねた結果、ブランドは確固たるものになっています。我々も、今考え得るベストな布陣で、品質の良い作品を地道に積み上げていこうと考えています」

 「格好をつけずに、あらゆる可能性に挑戦していく…そんなチャレンジ精神で挑み続けたいと思います」

 フジテレビがどんな華麗な復活劇を見せてくれるのか。今後が楽しみだ。

(文:衣輪晋一/メディア研究家)

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