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ORICON NEWS
「格好をつけずに挑戦を」、フジドラマ復活へむけた“覚悟”とは?
不調脱却への兆し? 好調の月9『絶対零度』の「フジテレビらしさ」
そんな中、沢村一樹主演の『絶対零度』は、初回10.6%を記録。シリーズ第3弾となる本作は、主演を上戸彩から沢村一樹に変更。将来的に重大犯罪を起こす犯罪者をAIが割り出し、井沢(沢村)ら未然犯罪捜査班が事件を未然に防ぐ姿を描いた刑事ドラマで、第2話は9.6%だったものの、それ以外の7回はすべて2桁をマークしている(8/30現在)。
SNS上でも「面白い」「スリリング」など多くの絶賛の声が挙がる本作だが、“未来に起こる犯罪の解決”という普通の刑事ドラマのセオリーとは異なる複雑な物語展開に、「わかりにくい」との声も。牧野氏は「それも含めて、ある意味で今のフジテレビらしい刑事ドラマ」と分析する。
月9をリアルタイムで視聴する層は、40代後半以上がかなりの割合
「例えば『海月姫』の平均視聴率は6.1%。内容に関しては非常に評判良く、何となく世の中のざわつき感と視聴率とが合っていない感覚がありました。恐らく見ていただいた方はもう少しいたと思います。リアルタイムでテレビの前に座って見るのではなく、携帯で見たり後々配信で見たりという方々が結構いらっしゃるのではないかと。現状、月9ドラマをリアルタイムで見ていただいている層をリサーチすると、40代後半以上の方々がかなりの割合でいらっしゃいます。そのF3(50〜64歳)以上の方々に狙いを絞って成功している局もありますが、フジは元々、それは得意ではない。ですが月9を復活させるには意識せざるを得ない。少しでも幅広い層に観ていただく戦略の中、“刑事もの”という間口の広いジャンルで、内容でエッジを立たせてフジテレビらしさを残した。それが『絶対零度』です」
「おかげさまで数字的には好調。我々の熱意が響いている状況はありがたいですね。10月クールは織田裕二さん主演の『SUITS/スーツ』が控えています。これも“弁護士もの”という間口の広いジャンルで内容がエッジの立ったものになればと思っています。なんとか今の良い流れを定着させていきたいですね」
「今のフジテレビは“裏通りの店”」、だからこそ木10枠でチャレンジを
「木10枠に関しては社内でも様々な議論があり、例えば“大人の女性の恋愛もの”というように、枠のイメージを固定したほうが視聴習慣がついていいのではないかという声もあります。ですが最近の本枠では、『刑事ゆがみ』(2017年)、『隣の家族は青く見える』(2018年)、『モンテ・クリスト伯−華麗なる復讐−』(同年)とジャンルがバラバラなドラマが並びました。ただ、その評判は決して悪くはないので、これもありなのかと。数字を取るのが難しくなっている昨今、ジャンルはバラバラでも“何かフジの木10おもしろいよね”と言ってもらえるような枠にしたいですね。今のフジテレビは、例えるなら、よっぽど買いたいものがなければ訪れない“裏通りの店”。普通のことをしていても買いには来てくれないので、エッジの立ったものにしていきたいと思っています」
強烈描写の『モンテ・クリスト伯』、1話視聴率が「毎分右肩下がり」
「『モンテ・クリスト伯』の原作は、無実の罪で投獄されてから脱出するまで(特に牢獄内)の物語にかなりの分量を割いています。ただ、これを連続ドラマ化するなら、無実の罪で投獄され、脱出、そして自分を陥れた者たちに復讐するために舞い戻ってくるという流れを、1話でスピーディーに展開するのがスタンダード。ですが本作では、2話の最後でやっと舞い戻ってくるという流れでした。物語がなかなか進展しないため、1話の視聴率が毎分右肩下がりになるという、稀に見る現象も起こった(笑)。ですが、『モンテ・クリスト伯』という原作に真摯に向き合うということは、そこをちゃんと描くということではないかと。実は、現場では牢獄内をもっと丁寧に描いたほうが良いのではという意見もあった程です。我々は、面白さや物語に“誠実”であれば、ついてきてくれる視聴者もいるはずと信じているのです」
「ネットの指摘はしっかり受け止める」、挑み続ける覚悟
「ネットユーザーを中心に厳しい声も頂き続けましたが、非常に参考になる意見も多い。実際、当たっているドラマはネットでの評判も良いし、皆様のご指摘はしっかり受け止めたい。また、例えばTBSの日曜9時枠も今ほど安定してない時期がありましたが、良質なドラマを積み重ねた結果、ブランドは確固たるものになっています。我々も、今考え得るベストな布陣で、品質の良い作品を地道に積み上げていこうと考えています」
「格好をつけずに、あらゆる可能性に挑戦していく…そんなチャレンジ精神で挑み続けたいと思います」
フジテレビがどんな華麗な復活劇を見せてくれるのか。今後が楽しみだ。
(文:衣輪晋一/メディア研究家)