好調理由は概念に囚われない“配置換え”にあり? 『絶対零度』Pが語る第3シリーズの工夫
安全策をハメにいくことは考えず、自分たちが楽しんで作ることを優先
「企画の稲葉直人さんから『絶対零度』の続編をやらないかと話を振られた時、“『絶対零度』のエッセンスは引き継がなければいけないけれど、逆に新しいことをやってもいいよ”と言われました。そして、これは私自身が思い切り楽しんで作ったほうが良いだろう、という想いにたどり着いたのです」(永井麗子氏/以下同)
「企画の稲葉さんが“未来を予測する話をやりたいと思ったことがある”と発言されたことがきっかけでした。調べてみると、捜査にAIを活用しようとする流れが世界的にあるとか、ソチ五輪で採用された防犯監視システム『DEFENDER-X』がかなりの精度で予測を的中させているとか、いろいろわかってきて。ですが、新たな刑事ドラマゆえに産みの苦しみもありました」
沢村一樹を主演に迎えたことでF3、4層からの支持も
「ですから、刑事もののスタンダードを引用しようとすると、論理的にうまくいかないことが多々あるのです。私がこれまで手がけてきた作品のなかで、最も台本作りに時間をかけている作品かもしれません」
キャスティングや配役にもこだわった。例えば、沢村は掴みどころのない二面性のある役を。横山裕にはミハンシステムに対し「ここはおかしい」と疑問を持つ視聴者の目線を。本田翼は荒々しい格闘術を身につけた女性に。沢村や横山が陰のある役なため、その明るさで人間関係に変化をつけた。柄本時生はデータに詳しい、いじられキャラ。平田満はうだつが上がらないものの、なんでもできるベテラン。伊藤淳史はキャリアで、沢村との関係や過去について謎を残し、縦軸の物語に絡ませている。それらのこだわりが実を結び、視聴率は2桁発進。視聴者の反応にも満足している。
また、沢村を主演に据えたことでF3、4層からの支持も得られているという。
「視聴率不振の時代ですが、それに萎縮したり、安全策をハメにいったりということは考えず、まずは自分たちが楽しんで作ることを優先したい。現在はテレビ以外に動画配信など、さまざまな出し口がある。テレビ局同士で視聴率を競い合うのではなく、制作側が刺激を作り、熱量を持ってその刺激を届けることで、結果的に数字に結びつくのではないか、とも考えています」
文/衣輪晋一
(『コンフィデンス』7/30号より)
◆永井麗子(ながい れいこ)
1978 年、京都生まれ。01年に共同テレビジョン入社、ドラマ制作に配属。05年春に『世にも奇妙な物語』でプロデューサーデビュー。『暴れん坊ママ』(07年)で単独での連ドラプロデュースを経験し、以降『JOKER ジョーカー 許されざる捜査官』(10年)、『謎解きはディナーのあとで』(11 年)、『キャリア〜掟破りの警察署長〜』(16年)など、人気作のプロデュースを手がける。
1978 年、京都生まれ。01年に共同テレビジョン入社、ドラマ制作に配属。05年春に『世にも奇妙な物語』でプロデューサーデビュー。『暴れん坊ママ』(07年)で単独での連ドラプロデュースを経験し、以降『JOKER ジョーカー 許されざる捜査官』(10年)、『謎解きはディナーのあとで』(11 年)、『キャリア〜掟破りの警察署長〜』(16年)など、人気作のプロデュースを手がける。
フジテレビ系 毎週月曜 21:00〜
出演: 沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩(特別出演)ほか
(C)フジテレビ