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“女子アナ育成請負人”としてのタモリ、愛され女子アナを育てる「頑張らない」働き方とは?

  • 「頑張らない」働き方で、多くの“愛され女子アナ”を育てるタモリ (C)ORICON NewS inc.

    「頑張らない」働き方で、多くの“愛され女子アナ”を育てるタモリ (C)ORICON NewS inc.

 『ブラタモリ』(NHK総合)の4代目アシスタントにして同局看板アナにまで成長した近江友里恵アナが、3月24日の放送をもって同番組を卒業。その後、NHKの象徴・有働由美子アナを継いで、『あさイチ』(同)の司会を務めることになった。振り返れば、初代アシの久保田祐佳アナはじめ、3代目の桑子真帆アナら、『ブラタモリ』を担当するアシスタントは卒業後に躍進する流れが形成されている。なぜ、『ブラタモリ』は“お堅い”と言われるNHK女子アナの素や新たな一面を引き出すのか? そこにはタモリという絶対的な存在に触れることで、自ずと魅力が開花していくというシステムが構築されているかのようだ。

“予定調和”を無視したタモリ流の進行が視聴者に“ドキドキワクワク感”を提供

 『ブラタモリ』はNHKで2008年より放送されているバラエティ番組で、タモリとアシスタントがひとつの土地をブラブラし、その地域の魅力を再発見していくという紀行番組。当初は試験的に行なわれていた番組だったが、2009年よりレギュラー化。過度な演出をしない地味な番組ではあるが、35年以上続く『タモリ倶楽部』(テレビ朝日系)に勝るとも劣らぬ好事家ぶりを披露しジワジワと人気が過熱。

 タモリの地質学や地形、坂道の知識は解説役の専門家もうなるほどで、クイズや解答フリップを先に言い当ててしまうのが番組の“様式美”として定着。ネットでも、「タモリって博識だし知らないものに対しても想像力働かせて答えにたどり着くのすごいなーと思うわ」、「タモリさんが色々詳しすぎて答え言っちゃいそうになるの本当に好き」といった具合に、番組の流れを“あえて無視”したタモリ流の答え合わせが番組の風物詩に。予定調和を無視したタモリの番組進行に、視聴者はドキドキワクワクさせられているのだ。

 そんな同番組は『笑っていいとも!』(フジテレビ系)の終了をきっかけに、2015年4月から毎週土曜日の19:30〜20:15という“超ゴールデンタイム”のレギュラー放送に移動。『いいとも』終了により“タモリロス”を感じていたファンはもちろん、タモリが心から楽しんでいる姿が見られるという貴重さも手伝ってか、今や幅広い層から支持される人気番組となったのである。

「アナウンサーであることを忘れなさい」女子アナを成長させるタモリの放任主義

 同番組で注目されているのはタモリだけではない。コンビを組んだ歴代のアシスタントたちが一様にアナウンサーとして飛躍すると話題になっている。実際、初代アシの久保田祐佳アナは、NHK入局後は地方局(静岡局)に勤務していたが、東京アナウンス室に異動し『ブラタモリ』に抜擢。すると、その後はニュース番組の『クローズアップ現代+』(同)をはじめ、『所さん!大変ですよ』(同)の司会や、BSプレミアム『コズミックフロント★NEXT』など、多くの番組で活躍。タモリとの共演を経て大きく飛躍したひとりと言えるだろう。

 3代目の桑子真帆アナも広島放送局勤務だったが、『ブラタモリ』のアシスタントになるや、タモリとの軽妙な掛け合いや、気負らないマイペースな佇まいが人気を博し、2015年の『好きな女性アナウンサーランキング』(ORICON)では『ブラタモリ』効果で圏外から5位へと大躍進。さらに昨年末の『第68回NHK紅白歌合戦』では、総合司会を務めるまでに上り詰めた。そして4代目の近江ナアもまた、卒業後に『あさイチ』に抜擢されるなど、“ブラタモルート”に乗って看板アナへの道を快走中だ。

 まさにNHK女子アナにとっては、局の看板アナへと成長する“登竜門”的な番組となった『ブラタモリ』だが、別にタモリが女子アナたちを厳しく指導しているわけではない。むしろその逆で、タモリらしい“軽妙洒脱”なユルいノリのまま番組が進行していくのが特長であり、そこが視聴者に支持される理由ともなっている。

 現場をフォローする女子アナにしても、“タモリさんだから”と、力入りまくりで積極的にレポートするということはない。逆にタモリは、『ブラタモリ』のレギュラー放送が復活する際、桑子アナに対して「アナウンサーであることを忘れなさい」などと心得を説いている。さらに、「どんどん横道に逸れていい。番組の流れなんて無視してください。NHKのアナは自分で流れを作るという意識が強すぎます」と金言を披露している。

リサーチ禁止、打ち合わせナシ、台本は渡さず…厳しい規制(?)で多くの愛されアナを育成

 そのため、『ブラタモリ』に参加する女子アナたちは、「事前のリサーチ禁止」、「打ち合わせなし」、「アナウンサーには台本を渡さない」と言われる“厳しい規制(?)”の中で、非常にリラックスした雰囲気のまま参加しているように見える。こうした経緯により、“NHKアナとしての自分“から解放された女子アナたちは、番組内で “素”の部分や、“おっちょこいちょい”な一面を披露することとなった。これにより、普段のお堅いNHKアナとのギャップが視聴者にウケ、多くの愛されアナが誕生してきたのだ。

 ただ、台本や打ち合わせがないからと言って、アシスタントとして楽かと言えばそうではない。なぜなら、歴代アシスタント達は、あえて“自由気まま”に番組を進行するタモリと視聴者を繋ぐ役割を担わなければならないからだ。事実、ラジオ番組で近江アナは、「タモリさんがマニアックな情報を届けるぶん、自分は素人の視聴者に寄り添う必要がある」とコメント。さらに、「視聴者が置いてけぼりにならないよう、あえてタモリさんや専門家に質問したり、『わからない』と率直に言うようにしている」と明かしている。過度な演出をしない『ブラタモリ』の場合、アシスタントのこうした気配りが必須なのだ。

『ブラタモリ』だけじゃない、各局アナがタモリの背中を見て躍進

 考えてみればタモリとの共演した女子アナが躍進するのは、『ブラタモリ』に限ったことではない。国民的なお昼の番組『笑っていいとも!』の日替わりアナや、特に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)では、下平さやか、堂真理子、竹内由恵、そして現在の弘中綾香などもまた、自然体で番組を進めるタモリのアシスタントを務めることにより、生放送に対応できる実践型アナたちが育ってきた歴史がある。

 つまり、自然体で振る舞うことを要求するタモリの姿勢は、アシスタントにプレッシャーを与えることなく伸び伸びと仕事をさせる一方で、「自分で考え」、「番組をどう成立させるか」を意識させることになり、結果的にアシスタントを鍛え上げていることになる。

 そして今回、近江アナの後を継ぐ5代目『ブラタモリ』アシスタントとなった林田理沙アナは、「タモリさんからはひと言、『仕事をするな』と。普段どおり、肩の力を抜いてやればいい、と。近江アナからも、がんばるのではなく楽しみながら、分からないことは素直に聞いて良いんだよとアドバイスをいただきました」と、前述してきたタモリ流の“働き方”を指南されたことを明かした。

 こうしたタモリの“頑張らない力”、そして女子アナへの“放任愛”がある限り、今後も“女子アナ育成請負人”としての需要はますます高まるばかりだろう。

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