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(更新: ORICON NEWS

タレントか?社員か? 問われるアナウンサーの立ち位置

 今年話題の“ゲス不倫”をはじめ、芸能人や政治家のスキャンダルを盛大に報道し続けてきたテレビ局だが、いざ自社のこととなると、その情報に関して取り上げないことが多い。ここのところ立て続けに話題にのぼっているアナウンサーのスキャンダルに関しても同様だ。おめでたい事案に関しては番組内でしっかりとコメントするも、ネガティブな報道に関してはアナウンサー(社員)=一般人として、何事もなかったかのようにスルーしてしまう。境界線を曖昧にしたままの現状に、想うところのある視聴者も多いことだろう。

自社の不祥事について見解を述べることが極めて少ないテレビ局

 つい先日、週刊誌で朝の情報番組に出演しているアナウンサー同士の不倫報道が持ち上がった。世間やネットはいつものように騒ぎ立てたが、局側は「プライベートなことなので、コメントは控えさせていただきます」とコメントするに留められた。その後、ふたりの番組出演は見合わせをされたが、印象的には同問題を「局がプロテクトしている」と感じる人は多く、実際にSNSは炎上状態。

 これに対して、不倫騒動で大バッシングを受け、芸能活動を自粛していた乙武洋匡氏は「他人のプライベートはさんざんいじくり回しておいて、今さら何を言っているのか」とツイート。プライベートをいじくり回された当事者からの怒りがにじみ出た発言には説得力はあるものの、そもそもが自身の不道徳な行為が発端だけに、賛否の声が巻き起こる騒動になっていた。

 過去を振り返っても、タクシーの運転手に暴言を吐いたキャスター、プライベートの海外旅行で得た高額の領収書を実業家に渡し、謝礼を受け取っていた女子アナ、スポーツ番組の仕事で知り合った野球選手とスキャンダルを起こしてしまった女子アナなど、数え上げるときりがない。こういった場合、局が独自に調査をしてそれが事実だった場合、懲罰人事的なものが行われる。

 普通の企業であればこれで「懲罰により償いをした」となるところだが、この問題の難しいところは、テレビ局というものが企業として公共性が高く、報道という社会的責任を負う職務だということだ。よって、世の数々の不祥事を報じるアナやタレントやコメンテーター的な色の濃いアナが番組内で自社社員の不祥事について見解を述べていないと違和感が生まれてしまう。「自社に都合の悪いときだけ、皆が揃って “会社員”の顔に戻ってしまう」と考える視聴者は決して少なくない。

テレビ局の姿勢に対する矛盾や不満を誰もが発信出来てしまう時代

「アナウンサーがタレントのような存在としてもてはやされる、その流れの定着は、先日亡くなられたワイドショーの巨人・小川宏さんの存在が大きい」と話すのは某週刊誌の芸能ライター。「元NHKアナの小川さんが担当した朝のワイドショー『小川宏ショー』(1965年〜1982年)は、全4451回、通算17年という大変人気の番組となりました。穏やかかつ筋の通った素晴らしい方で、その人気も納得だったのですが、その後、1980年に入ってこのアナウンサー人気の形が多少変化。当時のおニャン子クラブなどアイドルブームに乗って、フジテレビを中心に女子アナのタレント化、アイドル化が加速していきます」

「すると当然、そのスキャンダルも注目され始める。企業がそこに務める社員を守ろうとするのは当然ですし、基本的に“マスコミ”という業種は、権力や法では裁けない悪を監視するという役割を担っています。その目的のためにも弱みを見せづらい部分はあるのですが、それよりもやはりテレビ局も利益が重要な“一般企業”であることが大きい。スキャンダルが大きくなると番組のイメージがそこなわれるばかりか、テレビ局のいち企業としてのイメージにも影響を及ぼす。そうなると株主が黙っていない。テレビ局に秋波を送るわけではないのですが、そこは局も資本主義内で運営されるいち企業なので、不祥事を騒がれたくないという他の会社と変わらない部分も多く、事情は推して知るべしといったこともあるのです」(同ライター)

 とはいえ、今はインターネット社会。テレビ局にとってこれまでは“大衆”に過ぎなかった視聴者たちが発言する場所を得たことによって、個人としての顔を持ち始めた。結果そうした“不公平感”や「職務としての崇高な理想と現実の会社運営」で起こる“矛盾”について、人々は社会へ向けて発信ができるようになっており、ときにはひとつの発言が報道機関のあり方をも左右しかねない大きな力を持つこともある。

番組で自らコメントする例も…一方的な都合がまかり通らない時代に求められる真摯な姿勢

 一方で、番組で堂々とコメントしている例もある。フジテレビの朝の情報番組『とくダネ!!』では、小倉智昭アナが所属事務所の後輩の薬物騒動に関して自身の見解を自分の言葉で語った。同局の秋元優里アナと生田竜聖アナの別居報道が持ち上がった際には、秋元アナがMCを務める『ワイドナショー』(同局)で、東野幸治や松本人志らの質問に答える形で現状をコメント。これはテレビ以外の報道機関も取り上げてネットでも拡散され、大きな話題となった。

「1970〜80年代前半は『テレビを見るとバカになる』といった言葉もよく聞かれ、テレビは報道機関としては新聞などに比べサブ的な色合いが強かった。だが1980年代半ばぐらいから急激に状況が変わり、世の流行を牽引する権力的な表情も見せ始めたように思います。現代社会では、ルサンチマンと言いましょうか、権力者を引きずりおろそうとする妙な正義感と言いましょうか、ネット社会によってこれら反動が目に見える形で盛り上がっているように思えます。ですが、そういった視聴者の声の出し方や叩き方は、ワイドショーをはじめ、もともとは報道機関の影響が大きい。それだけに、ひとたび不祥事が起これば、その尖った矛先が自らに激しく突き立てられることになります」(同ライター)

 先に挙げたように、視聴者に対して誠意のある対応をみせている局やアナはすでに存在している。これは、必ずしも今の局としての姿勢を良しと思っているスタッフばかりではないことを物語っている。テレビ局という公共性の高い企業、報道という社会的責任を負う職務に携わるスタッフには、より厳しい世間の目が向けられていることは間違いない。

 アナウンサーはタレントなのか、社員なのか、これは局のスタンスにもよるのだろうが、評判を落とすケースが増えている昨今、とくにテレビ局、またアナウンサーの立ち位置に関しては、今まで以上に真摯に向き合う姿勢が求められる時代にあるように感じられる。
(文:衣輪晋一)

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