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バラエティで重宝される“郷土愛” “愛のあるディスり”でさらなる多様化も

 広島カープが25年ぶりのリーグ優勝を決めたことにより、各テレビ局がカープファンを取り上げた企画やテレビ番組を放送している。トークバラエティ『アメトーーク!』(テレビ朝日系)では先月、第3回目となる「広島カープ芸人」を放送。地元広島では23・6%の高視聴率を記録、その熱狂が新聞でも報道された。このヒットや昨今のテレビ番組事情も合わせて鑑みると、過剰な“郷土愛”を感じさせる番組たちが今、単純に“愛”を紹介するだけの枠組を超え、様々な形で人気を集めている。

昔から重宝されてきた “県民性”や“郷土愛”

  • 埼玉いじりで人気を博した『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)に出演するマツコ・デラックス (C)ORICON NewS inc.

    埼玉いじりで人気を博した『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)に出演するマツコ・デラックス (C)ORICON NewS inc.

 “県民性”を題材に“郷土愛”を面白おかしく紹介する番組の代表格といえば、2007年からレギュラー放送されている『カミングアウトバラエティ!! 秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)。同番組はこの10月でついに10年目に突入。長く愛されているという意味でも象徴的な番組で、みのもんたら出演者も語るように、徹底した取材と情報力がその人気を支えている。

 老舗として忘れてはいけないのが1995年から放送されている『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)だ。“市”や“町”など、より小さなくくりで、地域密着なコアな情報を提供し続けており、視聴者が「#(ハッシュタグ)アド街ック天国」を使って、自身の町が同番組で紹介されることをSNSにアップする動きも定番化されている。前出の2番組に共通するのが、他の地域から見ると“不思議”かつ“驚き”が感じられる土地柄や風習、食や特産物が紹介されていること。また他地域の人が仰天するだけでなく、地元民にも“新たな発見”を見いだせることもポイントだ。

 こうした“郷土愛”を楽しむ風潮はここ昨今だけのものではない。以前より書籍や雑誌の1コーナーなどでは定期的に“県民性”が紹介されてきたほか、そもそも日本語のなかには“秋田美人”や“九州男児”といった言葉が多数存在している。最近に目を向けても、女性カープファンを“カープ女子”と名付けるなど、メディアはそれぞれの地方の現象に名称と価値を付与し、その都度紹介をしてきた。だがここ昨今、そこにある変化が訪れ始めているようだ。

愛を持って“ディスる”手法がバラエティ番組に新風

 「ここ数年の動きとして、単なる紹介にとどまることなく、それらを変化した形で日本各地の“郷土愛”を刺激&発掘する番組が増加しています。そのキーワードとして挙げられるのが“愛のあるディスり”です」(某バラエティ番組制作関係者)

 この代表格とも言えるのが、『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)の埼玉いじりである。同番組で紹介された“究極の埼玉ディス漫画”『このマンガがすごい! comics 翔んで埼玉』(宝島社)は約30年ぶりに復刊し異例のヒットを記録。ほかにも、鳥取県の人口問題や、聞き取りが困難な青森県津軽弁問題を取り上げるなど全国各地の問題を取り上げることで人気を博している。また『水曜日のダウンタウン』(TBS系)でも、その土地の人に関して噂される“説”を検証するコーナーが人気だ。

 「実はこの歴史も古い」と前出の関係者。1994年、EAST END×YURIのシングル曲『DA.YO.NE』のヒットを受け、そのローカル版である大阪バージョン『SO.YA.NA』、北海道バージョン『DA.BE.SA』などが次々と発売された。また、2003年にはピン芸人のはなわによるネタ曲『佐賀県』も発表。このように“自虐”や“愛のあるディスり”でヒットした例は枚挙にいとまがない。これらのヒットを受け、現在バラエティ番組では、その類似、派生企画が次々と発表されているのだ。

さまざまな番組が登場も、面白さの根底には“敬意”

 老舗『〜ケンミンSHOW』などの手法を巧みに活かして生まれた派生企画のひとつが、今年9月に放送された『踊る!さんま御殿』(日本テレビ系)の「ライバル都道府県SP」。『〜ケンミンSHOW』のスタジオトークのように、出演者同士が郷土愛を持って他県民とバトルをする様子が放送され、好評を博した。またこれらの亜流として、外国人から見た日本の特異性を掘り起こすことで“県”を超えて“国“にまで裾野を広げた『世界が驚いたニッポン!スゴ〜イデスネ!!視察団』(テレビ朝日系)や『YOUは何しに日本へ』(テレビ東京系)なども挙げられる。だが、これら“郷土愛”番組にもまったく欠点がないわけではない。

 「血液型問題に代表されるように、人々の多種多様の性格を、県民性などで単純にくくり過ぎることを嫌がる人が一定数いることも重要事項です。また、同じ県でも地域によってまるで文化が違う地方が存在することも避けては通れません。なので、徹底した取材とデータに基づいてしっかりと細分化し、そのうえであくまでも“娯楽”として楽しんでもらえることが大切。また、人はディスられても、自分が理解されたうえでの“ネタ化”なら“可愛がられている”とか“オイシい”と思えることも多いので、そういった“愛”や“敬意”には特に留意して、番組作りをしていきたいと考えています」(前出・関係者)

 “郷土愛”をテーマにした番組は、さまざまな地域を取り扱えるからこそ皆で楽しむことができ、そういった意味でも全国放送に向いているコンテンツといえる。前出の関係者ら制作側の気概がこもった“愛あるディスり”や楽しい“郷土愛”あふれる番組が、これからのエンタメシーンでも人々に愛される形で登場することを期待したい。

(文/衣輪晋一)

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