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“都落ち”イメージ払しょく ドラマ不況の中で安定の2時間ドラマ

 かつては、『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日、以下土曜ワイド)と『火曜サスペンス劇場』(日本テレビ、以下火サス)が2大巨頭として、1970年代後半からそのブームを牽引してきたいわゆる“2時間ドラマ”。「安定した視聴率がとれる」として、各テレビ局がこぞって制作・放映していたが、バブル期に入ってトレンディドラマが人気となると、「古臭い」「中高年が見るもの」「パターンが決まりきっている」などと若者が敬遠。2005年にはついに火サスが終了し、2時間ドラマの冬の時代が訪れる。しかしドラマ全体の視聴率が低迷する現在にあって、人気シリーズともなると視聴率2ケタ台を記録するなど安定した数字。最近ではネットでは若者たちも“推理”に加わるなどして、盛り上がっている姿が見られる。2時間ドラマに対するマイナスイメージは払しょくされつつあるようだ。

いまや映画や連ドラより豪華なキャストが集結することも

 特筆すべきは、最近の2時間ドラマのキャスト陣が意外なほど豪華になっていることだ。先日、土曜ワイドで放映された山村美紗原作『名探偵キャサリン』は、主人公をNHK連続テレビ小説『マッサン』主演のシャーロット・ケイト・フォックスが演じたことで話題になったが、相棒役に谷原章介、歌舞伎役者・尾上松也など、どちらかと言えば2時間ドラマには似つかわしくない俳優や、同枠には“大御所すぎる”感もある里見浩太朗、竜雷太などが出演。さらに、2時間ドラマの常連ともいえる高岡早紀、榎木孝明、宇梶剛士、山村作品必須の山村紅葉まで、“有名どころ”が大挙出演していたのだ。ちなみに、今や2時間ドラマに欠かせない存在となりつつある河相我聞までが出演していたことも、マニアにはたまらないところだ。

 一時期は、かつての売れっ子俳優が2時間ドラマに出ると、微妙な“都落ち感”があったものだが、今では人気俳優が堂々と出演している。先の『名探偵キャサリン』にしても、90年代に『月曜ゴールデン』(TBS系)で、かたせ梨乃主演で放送されたシリーズだが、今回は主人公の人気がまだ未知数であるところに、これだけのキャストを配役するあたり、テレビ朝日の2時間ドラマに対する力の入れようが見て取れるとも言える。また、特別企画枠などでは、草なぎ剛などのジャニーズ勢が出演することもあるし、先日の『水曜ミステリー9』(テレビ東京系)では、中村獅童と石田ひかりが出演して視聴者を驚かせている。

演技派キャストが繰り広げる水戸黄門ばりの心地良い“お約束感”

 一方で、2時間ドラマの大きな特徴として、“安定した人気シリーズ”があるということがあげられる。現在、『月曜ゴールデン』(TBS系)、『金曜プレミアム』(フジテレビ系、ドラマ以外も放映)、『土曜ワイド劇場』(テレビ朝日系)、『水曜ミステリー9』(テレビ東京、9月終了予定)と、日本テレビ以外各局が曜日をかぶることなく放映している状況だが、それぞれに人気シリーズを抱えている。TBSは「十津川警部シリーズ」と「浅見光彦シリーズ」、テレビ東京は「監察医・篠宮葉月 死体は語る」、フジは「赤い霊柩車シリーズ」と「浅見光彦シリーズ」などと、誰もが一回は観たことがあるであろう人気作品が目白押しなのだ(土曜ワイドのシリーズは多すぎるので割愛)。主演の俳優陣にしても、もはや主人公のキャラと同一化していると言っても過言ではなく、なおかつ物語の内容的にもハズすことがない。そうした安定感・安心感こそが、制作側からも、視聴者からも、今一番テレビに求められていることなのかもしれない。

 そして2時間ドラマ最大の特徴といえば、やはり“お約束”だ。船越英一郎、片平なぎさ、山村紅葉といった常連キャストは、完全に“お約束”である。もちろんストーリー展開にも多くの“お約束”が仕込まれており、代表例の“最後は断崖絶壁で犯人が告白”という定番パターンは、かねてよりバカにされていたが、今でもこのシーンは健在なのである。また過去には新聞で「石野真子がまた犯人役で出ており、結末のわかる配役に不満」といった内容の投書が取り上げられたほどだが、これはこれで“お約束・お決まりの心地よさ”があるものなのだ。ちなみに「火災調査官・紅蓮次郎」では、船越英一郎が最後に犯人をぶん殴るというのが“お約束”だったのだが、ここ2作ではなぜか殴らず、逆に消化不良を感じた人も多かったのではないか。

 古今の人気スターを起用した豪華なキャストや、人気の定番シリーズ、“お約束”による安心感・安定感、集中するにはちょうどよいともいえる長さ。こうした要素が2時間ドラマの魅力であり、面白さであろう。かつての“古くさい”イメージも払拭され、もはや老若男女が楽しむコンテンツとなり、全体的にドラマの視聴率が振るわない中、人気シリーズともなると安定した視聴率をはじき出す。先の『水曜ミステリー9』などいくつかの枠が終了するという話に対しては、「寂しい」といった声も多く聞かれる。それだけ安定したファン層を持つ2時間ドラマだけに、今後も模様替えしながらでも、まだまだ継続させていただきいものである。

(文/五目舎 )
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