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“時代錯誤”から再評価の兆し 芸人における“付き人”制度の変貌

  • ここ最近、テレビ露出が増えているイワイガワ・岩井ジョニ男

    ここ最近、テレビ露出が増えているイワイガワ・岩井ジョニ男

 『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)や『ダウンタウンDX』、『浜ちゃんが!』(共に日本テレビ系)など最近、浅井企画のお笑いコンビ・イワイガワの岩井ジョニ男をテレビでよく見かけるようになった。メガネにチョビ髭、スーツ姿という昭和のお笑い芸人を彷彿とさせる古風なルックスと独特なキャラで存在感を際立たせている岩井だが、“タモリの元付き人”という経歴も重宝される理由のひとつ。

 「自分のミスでタモリをヨットから冬の海に落とした」、「(岩井の)嫁が泥酔したタモリにブチ切れて鼻フックした」など、タモリとの貴重なエピソードを語りプチブレークを果たしている。今となっては時代錯誤の感もある“付き人”制度だが、現在引っ張りだこの芸人の中には、バナナマン・設楽統(コント赤信号・渡辺正行の元付き人)や、くりぃむしちゅー(コント山口君と竹田君の元付き人)、有吉弘行(オール巨人の元付き人)など付き人を経て大成した者が多く、あながち付き人制度を軽視することもできないようなのだ。

たけしもさんまも、みんな最初は“弟子=付き人”だった

  • 軍団率いるビートたけしも、付き人を経て人気芸人へと成長した(写真:逢坂聡)

    軍団率いるビートたけしも、付き人を経て人気芸人へと成長した(写真:逢坂聡)

 そもそも、お笑い芸人の付き人制度は、江戸時代からの伝統芸能である落語や漫才、手品師など、寄席芸人の流れをくんでいる。まずは師匠の元に“弟子入り=付き人”をするところからはじまり、住み込み(=内弟子)として師匠の仕事の補助や身の回りの世話など、文字通り“寝食を共にしながら”芸を教わっていくというものだ。

 「(ビート)たけしさんの師匠はコメディアンの深見千三郎氏、(明石家)さんまさんは笑福亭松之助師匠、志村けんさんはもちろんザ・ドリフターズなど、超大御所芸人さんもかつては付き人だったことは有名です。お笑い芸人の場合は、落語の世界とは違って芸を教わるというより、雑用の見返りとして小遣いをもらうなど、“食べさせてもらう”のが中心。付き人といえど、芸を磨くことは本人の実力・努力しだいというのが基本ですね」(エンタメ誌編集者)

付き人から一本立ちという既成概念を崩した、ダウンタウンの誕生

  • “芸人史”に大きな影響与える存在となったダウンタウン

    “芸人史”に大きな影響与える存在となったダウンタウン

 昔は誰かの“弟子=付き人”にならない限り、お笑い芸人の道を目指すことはできなかった。しかし、時代の変化により、現在ではその制度が希薄になっている。その始まりは漫才ブームが起きた1980年代、1982年に吉本興業がお笑いスクール「吉本総合芸能学院(NSC)」を正式にスタートさせたことがきっかけといわれる。

 そこで大阪校の1期生だったダウンタウンが、唯一無二の笑いのセンスと実力を発揮してスター街道を突き進み、師弟制度がいなくても実力があれば“売れっ子芸人”になれるということを身をもって証明。その後、今田耕司や東野幸治、130R、雨上がり決死隊、ナインティナインなど、数多くの芸人たちがそれに続いていった。そういった成功例から、他の大手事務所も養成所を設けるようになり(松竹芸能やワタナベエンターテインメント、人力舎など)、芸人は付き人からスタートするという“常識”が覆されたかのようになった。
  • 今や番組出演本数でNo.1を誇る大物となった、バナナマン・設楽統

    今や番組出演本数でNo.1を誇る大物となった、バナナマン・設楽統

 「確かに付き人期間中は、一人前になるまでにある程度の時間を要することや、師匠によってはプロテクトされたり、師匠と比べられるなどして結果的に大成できなかったりする弊害もあるようです。でも一方で、バナナマン・設楽統さんやくりぃむしちゅーさん、有吉弘行さんの大ブレイクを見てもわかるように、師匠と密着してきたぶん、芸能界のしきたりや立ち居振る舞い、人脈作り、芸能界を生き抜く術など、付き人ならではの実践的な“財産”があるのも事実です」(前出・編集者)

時代と共に変化、現在は“新たな師弟制度”が浸透?

  • ダチョウ倶楽部・上島竜兵(中央)率いる、“竜兵会”のメンバー

    ダチョウ倶楽部・上島竜兵(中央)率いる、“竜兵会”のメンバー

 今ではSNSの普及やメディアの多様化、生活スタイル自体の変化から、かつてのような密着型の付き人制度は時流に合わなくなってきたものの、ダチョウ倶楽部・上島竜兵の“竜兵会”や“千原ジュニア軍団”など、かつての“たけし軍団”ほどの強度はないながらも、先輩芸人と師事する若手芸人たちが、共に酒を酌み交わしたり旅行に出かけたりという形として、新たな徒弟制度が形成されているとも言える。

 実際、そうしたエピソードトークをテレビで披露したり、旅行自体をネタにしたりして番組化することも多くなっているし、人気の頂点から大転落した後、上島に飲み食いさせてもらっていたというエピソードが、現在の有吉人気を支えるひとつとなっているのも間違いないだろう。

 こうしてみると、やはりお笑い芸人たちには先輩・後輩の血の通った交流、いわばある種の“互助会制度”が必要なのであって、かつての“付き人”制度は“芸人グループ(軍団)”制度として今でも脈々と生き残っているともいえ、今後もスタイルを変えながら継承されるべき“しきたり”なのかもしれない。

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