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土屋太鳳インタビュー『迷いを得ることができた… 充実して駆け抜けた、不思議な1年』
体育会系の私とはぜんぜん違うなあ
土屋すごくエネルギーの必要な役でした。キラキラした高校生のシーンとか、楽しいお芝居もたくさんありましたけど、だからこそ26歳の切ない部分はすごくつらかったです。撮影現場で(山崎賢人扮する成瀬)翔の遺影を見た瞬間、泣きそうになって……。楽しい思い出がさぁーっとなくなったときの、真っ暗になった感じが、本当につらかったです。
――菜穂を、どのような女の子として表現したいと考えましたか?
土屋柔らかくて、優しくて、はかなくて、マシュマロのような菜穂ちゃんは、体育会系の私とはぜんぜん違うなあと最初は感じていました。象徴的な女の子をどう表現したらいいかな? と考えていたとき、菜穂ちゃんには、大切な人を守りたい、でも守れないかもしれないという両方の思いがあるんですが、それって誰かを好きになったとき、大なり小なりだれでも感じることなのかなと思ったんです。そうやっていろいろ考えた末に、菜穂ちゃんのはかなさが『orange-オレンジ-』のはかなさにも通じていると思い、そこから埋めていこうとしました。
――“はかなさ”をひとつのキーワードに定めてから、役作りはスムースに進みましたか?
土屋リハーサルでやってみても何か違うと感じて、原作と台本を何回も読み返していたら、菜穂ちゃんと翔は一見違うように見えるけど、実際の性格はすごく似ているんだなって思いました。それに菜穂ちゃんって、翔のお母さんにも雰囲気が似ているんです。だから翔は、我慢している菜穂のことが気になってしまう。菜穂も、翔のことがよくわかるから気になっていく。最初はそういう状態だったんですけど、好きになっていくなかで、菜穂の持つまっすぐな危うさみたいなものが、はかなさに通じているのかなって思いました。
まったく戸惑いもなかった
土屋翔に対して「一緒に生きよう」という言葉があるんですけど、すごく難しい言葉じゃないですか。でも菜穂はそれをまっすぐに伝えてしまう。16歳だからこそのまっすぐさみたいなものが、はかなさにつながっているのかなと思って。その正体を探りながら、演じていった感じです。シーンを撮影するまで、その言葉がずっとしっくりこなくて、何回も監督とお話させていただきながら、どうやってその言葉にたどり着くか? をすごく考えました。
菜穂が強すぎてもいけないんです。なにか弱々しさを持っていないと、翔が救われすぎて、お母さんとの場面に繋がらなくなってしまうから。そのとき気づいたのは「一緒に生きよう」って言葉の熱量が「一緒に死のう」(という言葉の熱量)とよく似ていたことでした。陰と陽みたいな。菜穂ちゃんは全然そんなことを考えていないだろうし、まっすぐな思いで言っていると思うんですけど、でも一緒に生きていくってことは、最後、一緒に死んでもいいよってことだなって。菜穂は言葉の意味を知らないで言ってたから、翔はどんどん不安になっていくんですよね。その両方の気持ちを込めて「一緒に生きよう」って言いました。言ったあと少し怖くなりましたが、菜穂のなにかを知ったような“あ、これだ、菜穂ちゃんのはかなさは!”と思った瞬間でしたね。
――『まれ』に続いて、翔役の山崎賢人さんとの共演はいかがでしたか?
土屋本当に翔が賢人くんでよかったと思います。まったく戸惑いもなかったです。『まれ』のクランクアップから『orange-オレンジ-』の撮影が始まるまでに1週間しかなかったんですけど、その時間のなかでお互いが役についてしっかり考えて、また違う世界で出会うみたいな。いまと来世みたいな感覚でしたね(笑)。
――ファーストシーンは、転校生の翔が菜穂たちの教室に入ってくるシーンだったそうですね?
土屋“わぁ、翔だ!”って。目線の動きだったりとか、顔の影の感じとか、賢人くんはまとっている空気から変えられる、すてきな俳優さんだと思いましたし、やっぱり翔として何を表現したいのか、何を伝えたいのかをしっかり考えて、努力されていました。私は台本を読むのも理解するのも不器用で時間がかかるのですが、本番までギリギリ悩みながら“これで合ってるかな? こっちの方がいいかな?”って考えているときも、一緒に悩んで一緒に考えてくれて。賢人くんにはほんとうにたくさん助けてもらって感謝していますし、役者さんとしても尊敬しています。