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佐藤健インタビュー『いまの結果が未来になるーいつか転機が来るかもしれないけど』

“こんな人生、ステキだな”と思えた

――本作に参加して、どんなところに映像作品ならではのおもしろさを感じましたか?
佐藤今回、マンガを描くっていうすごく地味な作業を、映画でしかできない方法で表現しています。すごくいいアイディアだと思ったし、好きなシーンでもあります。マンガを描くって、身体的な動きは地味なんですけど、漫画家さんの脳内では、すごいアクションが繰り広げられている。その脳内を映像で表現したという、アイディアと技術。これは映画でしか表現できないなって。
――プロジェクションマッピングを用いた執筆シーンなど、作品が生み出される瞬間が立体的に感じられて、観ていて楽しかったです。撮影は大変でしたか?
佐藤初めてのことだったので、そういう意味では難しさはありましたけど、楽しかったですね。

――さきほど「王道」とおっしゃっていましたが、青春の1ページではなく、漫画家という、人生を賭ける仕事と出合えた希望にあふれたエンディングから、どんなことを考えましたか?
佐藤“こんな人生、ステキだな”と思っていました。なかなか“自分は、これだ!”ってものを見つけるのって難しいし。高校生のときに、こんなにはっきりとした目標や夢を見つけて、本気で打ち込めるってことが、僕にはすごくまぶしく見えました。僕の高校生活は、けっこう宙ぶらりんでしたから(笑)。
――原作は20巻まで続く本作や、ドラマ『天皇の料理番』(TBS系)で、息の長いキャラクターを演じた経験を通して、これからも続いていく仕事や人生についてのビジョンに変化はありましたか?
佐藤変わらないですね。そのときにやりたいことをやれていればいいと思っています。そのためには結局、いまベストを尽くすことしかできないと思っていて。10年後、こうなっていたいとかは考えないんですけど、(いまよりも)よくなっているためには、いま目の前のことに、自分のできるベストを尽くす。そして、その次はまた、それまで以上のことをやっていく。その結果が未来になるわけだから。目の前のことにベストで取り組んでいくなかで、いつか転機みたいなことが来るのかもしれないけど、それは予期できないこと。とりあえずいま僕は、もっともっと俳優としてやっていきたいし、もっともっと上を目指して、次やる作品は『バクマン。』も含めて、いままでよりいい芝居をしたいと思ってやる。まずそれを死ぬ気でやるってことの連続なんです。

自分のビジュアルに飽きた(笑)

――いい芝居とは、どういうものだと捉えていますか?
佐藤わかりません。でも、いちばんはやっぱり、観た人に何かを残すということだと思います。観た人の心を動かすこと。どういう形かは、役によって違うと思いますけど。

――自分の演技に、達成感を感じることはありますか?
佐藤ほぼないです。お芝居をするときは、いろいろ考えてしまうとよくないんです。でも、無(の状態)になれたからといって、いいわけでもなくて。今回の涙のシーンも、無にはなれていたのかもしれないけど、かといって手応えを感じたわけではない。撮り終わって、完成作を観ても、やっぱり反省点はあるし。あのシーンがよかったって言ってくれる人がいて嬉しいけど、自分がいいと思っているかというと、意外とそうじゃなかったりするんです。
――演技へのものすごいエネルギーを感じる、手厳しさですね。いま興味があるのは、どんな役ですか?
佐藤やってみたいことはたくさんあります。特殊メイクとかやりたいですね(笑)。全然違うふうになりたい。自分のビジュアルに飽きたので(笑)。ティム・バートン作品のジョニー・デップみたいな、全然違うことをやってみたいです。『ダークナイト』(2008年)のジョーカーみたいな役もいいですよね。

――今年は『トイレのピエタ』のカメオ出演にも、驚かされました。お仕事は、どのように選んでいるのですか?
佐藤単純におもしろいと思えるか、というところです。そのおもしろさは、作品によって違うけど。例えば『バクマン。』はクリエイター陣の新しいものを作りたいとか、革命的なことをしたいという感じがすごくおもしろそうだったし、大根さんや川村さんにもすごく魅力を感じたこともありました。『天皇の料理番』はとにかく(森下佳子さんの)台本がすばらしいから、というのがありました。そのつど違うけど、何かひっかかったり、魅力を感じるところがあるか、です。

――最後に、本作でサイコーの叔父にあたる、漫画家の川口たろう先生の名言に「連載するまでは『うぬぼれ』『努力』『運』、連載を勝ち獲ってからは……『体力』『精神力』、最後は『根性』」とありましたが、好きな仕事を全うするために、佐藤さんは何が必要だと思いますか?
佐藤それはいろいろありますよ。人との出合いも間違いなくそうだし、運的な要素もすごく大事だし。僕は男だから、男目線で言うと“男だったら、ひとつの分野でいちばんになれよ!”って思うんです。その感じ、その気持ち、その精神があればいいんじゃないですか(笑)。

――それって、まさに“ジャンプ三原則”じゃないですか!
佐藤そう(笑)。そういう精神とか、考え方って、マンガから教わったものだと思います。
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

バクマン。

 高校生の真城最高(佐藤健)は、高い画力がありながらも将来に夢を持たず、ただ流されて普通に生きていくだけの日々を送っていた。最高の叔父(宮藤官九郎)は、かつて週刊少年ジャンプに連載し、その作品がアニメ化もされた漫画家・川口たろうであった。だが結局は連載打ち切りとなり、その後叔父は過労により亡くなった。そのことが最高の心に暗い影を落としていた。
 ある日、些細な出来事をきっかけに、秀才のクラスメイト・高木秋人(神木隆之介)に、「俺と組んで漫画家にならないか」と誘われる。はじめは一緒に漫画を描くことを拒絶していたが、声優を目指している片想いのクラスメイト亜豆美保(あずきみほ 小松菜奈)と、「漫画家として、声優として、お互いの夢が実現したら結婚する」と約束したことから、漫画家への道を志すことになる。

脚本・監督:大根仁
出演:佐藤健 神木隆之介
染谷将太 小松菜奈 桐谷健太 新井浩文 皆川猿時
宮藤官九郎 山田孝之 リリー・フランキー
2015年10月3日 全国東宝系にてロードショー
【公式サイト】(外部サイト) (C)2015映画「バクマン。」製作委員会

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