コンプレックスに大人も共感、『すみっコぐらし』大ヒットから見えた“可愛さ”と“悲哀”の絶妙バランス
“すみっこ”好きな日本人ならではの習性を反映 大人向けグッズも
どんなに有名で人気のあるキャラクターだったとしても、それを大人が身につけるという行為に至るまでには、なかなか高いハードルがあるはずだ。すみっコぐらしが、そのハードルを容易に飛び越えていったのは、ただ単に存在が可愛いからだけではなく、“共感できる”という部分が大きいからだろう。
コンプレップスに悩みながらも、肯定してあげる
たとえば、「しろくま」は、北から逃げてきた寒がりで人見知りのくまで、温かいお茶をすみっこで飲んでいる時が一番幸せという性格。「ねこ」は恥ずかしがり屋で気が弱く、自分もすみっこが好きなのに他のキャラクターにその場を譲ってしまうことが多い。「とかげ」は実は恐竜の生き残りだが、周囲には真実を隠し“とかげのふり”をして生きている。「たぴおか」は、ミルクティーだけ先に飲まれて残されてしまったことから捻くれ者で、「ぺんぎん?」は果たして自分は本当にぺんぎんなのか、自信がなくて……。現在、ヒット中の『映画 すみっコぐらし〜』は、そんなすみっコたちが、行きつけの喫茶店の地下室で見つけた不思議な絵本に吸い込まれてしまったことからはじまる物語。絵本の世界で出会った“迷子のひよこ”のお家を見つけ出すため、すみっコたちが絵本の世界で大冒険を繰り広げる。
田中みな実や宇垣美里…“内なる闇”をいかに明るく解放するかで、芸能界でも好感度に影響
また、女優の本田翼はキュートな笑顔とは裏腹に、バラエティ番組にゲスト出演などをした際は「休みの日は部屋に引きこもってゲームばかりしている」などと告白。意外な一面を明かし、昨年9月に開設したYouTubeチャンネル「ほんだのばいく」は1ヶ月も経たないうちに登録100万人を突破するなど、幅広い層から人気を集める。今年の『第42回日本アカデミー賞』で最優秀助演男優賞を受賞するなど、国民的俳優の階段を駆け上がる松坂桃李も、カードゲームアプリ『遊戯王デュエルリンクス』の“ガチ勢”であることなど、少々残念な私生活を明かしてからは、よりファン層が豊かになっている印象を受ける。
必ずしも「センターに立つ」必要はない 時代と共に人気者の条件に変化
アニメや漫画の主人公となる人気キャラクターには、どこかに秀でた才能やスター性があり、中心人物として物語をけん引していく力が求められてきた。いわばセンターに立つこと、目立つことが当たり前だった。しかし、すみっコぐらしは、そもそもが“チーム”で1つのキャラクター郡であり、持っているものも才能と呼べるものではなくネガティブな一面だ。そういったキャラクターが人気者になったということは、多様化する社会のなかで「オンリー1」を肯定する風潮が高まっていると言え、人気キャラクターに求められる要素も自然と“スター性”から人々に“寄り添うもの”へとシフトしてきているのではないだろうか。
情報化社会により、世の中のスピードは以前にも増して目まぐるしく変化している。そういった時代のなかで、「すみっコ」たちは小さな子どもたちのみならず、大人たちにも安らぎを与えている。