映画人・斎藤工としての立ち位置 適材で関わることが大切「仕上がり至上主義でいたい」
『麻雀放浪記』を知ってもらいたいという思いで関わった企画
斎藤工『明日泣く』(2011年)で、阿佐田哲也さんの半生を演じさせていただく機会があり、そのときに阿佐田さんの奥様の色川孝子さんとの出会いがありました。色川さんといろいろな話をするなかで、阿佐田さんの傑作『麻雀放浪記』を知らない若者が増えているという事実をなんとかしたいという思いが湧いてきたんです。それが企画の始まり。ただ、僕自身が製作として動いたわけではなく、あくまで作品を知ってもらいたいという思いで関わっていたんです。
――阿佐田哲也さんとの出会いは、『明日泣く』だったのですか?
斎藤工父が阿佐田哲也さんフリークだったので、自宅の本棚には阿佐田さんの本がたくさんありました。その影響で幼少期から触れる機会があり、どんな方なのかは本を通して知っていました。でも決定的だったのは、和田誠さんの映画。傑作ですからね。
斎藤工暴れ馬のような題材を乗りこなすことができる人は限られています。映画人としての基礎体力を含め、いまの映画界では白石監督以外にいないと思いました。僕自身、白石監督作品のファンですが、色川夫人もとても気に入られていて、引き受けていただけたらすごい追い風になると感じていました。ただ、和田誠さんの傑作があるので、引き受けていただけるか不安もありました。当初、プロデューサーの谷島正之さんも、ゆっくり丁寧にアプローチしました。