賀来賢人を覚醒させた“アゲメン”福田雄一監督 『今日俺』で開放された演技派の魅力
シリアスから爽やか、三枚目まで何でもこなせる実力派
そんな賀来の三枚目の一面が世間的に注目を集め始めたのは、17年の『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)だ。演出は『今日から俺は!!』の福田雄一監督。左江内氏(堤真一)の部下・池杉役で、福田作品常連のムロツヨシや佐藤二朗とも共演。その妙なテンションや多彩な顔芸などウザさ全開のキャラクターで、SNSでは「笑いが止まらない」「賀来賢人好きすぎる」「賀来賢人の株が急上昇している」などの声が上がり、俳優評価が急上昇していた。
だがそうして脚光を浴びたコミカルなキャラクターに溺れることなく、『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)ではシリアスな演技、『わにとかげぎす』(TBS系)ではお茶目な役、『4号警備』(NHK総合)では殺人犯を熱演してみせた。舞台もこなしており、その後も『海月姫』(フジテレビ系)や、映画でも『斉木楠雄のΨ難』『ちはやふる -結び-』と話題作に続々と出演。12月24日放送予定の『犬神家の一族』(フジ系)では、あの名キャラクター・犬神佐清(スケキヨ)役に抜擢されており、顔や表情が分からないあの白ゴムマスクでどんな芝居を見せてくれるのか期待される。
人気コミック原作に評価は真っ二つ
だが、第1話を観た原作ファンのなかから「これは三橋じゃない」との声も上がった。悪ノリ部分の賀来賢人色が強過ぎるほか、三橋をイメージしたというお得意の変顔も、どこか滑ってるような印象を拭えなかったようだ。SNSでは「ギャグが寒い」「実写化しないでほしかった」など辛辣な声も散見された。ただ、一方では「死ぬほど笑った」「録画して小学生の娘と爆笑しながら観ている」など好評価も多く、否定派と肯定派が真っ二つにわかれた。
しかし、そんな状況が第3話あたりから一変した。すっかり賀来演じる三橋にハマる人が続出したのだ。原作の三橋とは違っていることは否めない。だが、実力派である賀来は、演技は申し分ない上に、アクションもキレキレ。『〜左江内氏』でもキレキレのダンスを見せていたが、今作の原作に沿ったストーリーのケンカ部分では、ドラマ版三橋も原作の三橋に負けず劣らず格好いい。これは賀来を取り巻く周囲の役者陣にもいえ、実力派、個性派などしっかり芝居ができる役者が揃うとドラマはこんなにもおもしろくなる、ということを改めて知らしめた。
今も同作は肯定派と否定派で意見が割れている。しかし、両極端の感想が起こるのはその作品が「看過できない」作品だからで、消費されゆくだけの連続ドラマではない証。厳しい意見にも“理”があり、擁護派にも“理”がある。キー局プロデューサーも口を揃えて言うが、最も寂しいのはそのどちらもが“薄い”コメントしかない、話題にならない作品なのだ。