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スポーツマンシップ協会設立 ネットでの過剰な誹謗中傷にも通じる「尊重」「勇気」「覚悟」の精神

 8月18日から、インドネシアのジャカルタとパレンバンで、第18回アジア競技大会が開催される。そこで日本スポーツマンシップ協会代表理事の中村聡宏氏とコラムニストの木村隆志氏に、「スポーツマンシップとは何か」について語り合ってもらった。

今年6月に「日本スポーツマンシップ協会」設立

  • 中村聡宏氏(千葉商科大学サービス創造学部専任講師、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会代表理事)

    中村聡宏氏(千葉商科大学サービス創造学部専任講師、一般社団法人日本スポーツマンシップ協会代表理事)

中村聡宏スポーツマンシップというと、多くの人が選手宣誓を思い浮かべると思います。「われわれは、スポーツマンシップに則り……」という、あれです。しかし、それだけ広く知られた言葉でありながら、改めて「スポーツマンシップを説明してください」と聞かれて、答えられる人は少ないのではないかと思います。

木村隆志確かにそうかもしれません。

中村聡宏でも、これは答えられなくて当然なんですよ。なぜなら、誰も「スポーツマンシップとは何か」を教えられて来なかったのですから。そんなスポーツマンシップを世に広めようと尽力されたのが、トヨタカップのプロデューサーを務め、日韓W杯開催にも尽力された、元電通の広瀬一郎さんという方。彼が2012年に設立したのが、「スポーツマンシップ指導者育成会」という組織。私はその活動に携わっていたのですが、昨年広瀬さんが急逝してしまったため、それを引き継ぐとともに、スポーツマンシップ指導者育成会を発展的に解消し、今年6月に「日本スポーツマンシップ協会」を立ち上げました。

木村隆志最近、日本のスポーツ業界は、各競技団体や組織からさまざまな問題が噴出していますよね。それを目の当たりにすると、中村さんのこの活動は、今最も必要とされているものにように思いますね。

中村聡宏スポーツマンシップは、何もトップアスリートを育てるためのものではなく、スポーツを通して、人の生き方を学ぶもの。上意下達ではなく、自分で判断できる人を育てるソフトだと思っているんです。

木村隆志でも、今の日本のスポーツ団体や組織に、それがあるのかと不安になります。日本はスポーツマンシップを発揮できない国なのではないか、と。

「尊重」「勇気」「覚悟」がスポーツマンシップの精神

  • 木村隆志氏(コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者。著書に『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など)

    木村隆志氏(コラムニスト、コンサルタント、テレビ解説者。著書に『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など)

中村聡宏スポーツマンシップの塊のようなアスリートはたくさんいます。例えば、平昌五輪のスピードスケート女子500mで、金メダルを取った小平奈緒選手。私はその試合を会場で観ていました。オリンピック新記録を出した瞬間、会場がドーンと大きく沸いたのですが、小平選手はリンクを回りながら口元に人差し指を添え、「静かに」と訴えていました。それを後から本人に聞くと、新記録を出したことに満足感はあったけれど、次は3連覇がかかっていた地元・韓国のイ・サンファ選手で、彼女がここに賭けてきた時間も知っているから、集中できる環境を作ってほしかったし、その他の選手にもベストな滑りをしてほしかった。「しかし、それでもし銀メダルだったら?」と聞いたら、「それは結果にすぎません。自分はベストの走りをしたいと思って準備をしてきて達成できたし、それを上回る人がいたというだけの話」と。彼女は自分でも「求道者」と言っていましたが、彼女のように道を究めた選手は違いますね。

木村隆志私も以前、スピードスケートの高木美帆さんにお話を聞いたことがありますが、彼女もまさに求道者でした。彼女たちのスポーツマンシップが、子どもたちにもいい影響を及ぼすようにしたいですよね。

中村聡宏これまで日本では、いわゆる体育会系の子たちが喜ばれてきました。純粋で従順、でも頑丈。さらに、多少のハラスメントにも心が折れないといった面が好まれてきた理由だと思います。しかし、スポーツの世界で大切なのは、従順さだけではなく、サッカーであればドリブルするのかパスなのか、はたまたシュートなのかを自分で判断し行動できる「勇気」と、勝利をめざして全力を尽くす「覚悟」なんです。

木村隆志「尊重」「勇気」「覚悟」が、スポーツマンシップにおける、3つの柱ということですね。体育の授業に、スポーツマンシップの項目があってもいいですよね。

中村聡宏そっちのほうが大事だと思います。運動が苦手な人のなかには、体育が嫌いという人も多いと思います。足が速いとか遠くに飛べるとか、身体能力の高さの比較で成績評価がつけられがちですが、自分の身体能力をどう伸ばすかが大事なわけですから、もっとその人自身が上達したかどうか、など個別性で評価してあげたほうがいいと思うんです。人事制度と同じですよね。

ネットで他人を叩く人にはスポーツマンシップがない

――「尊重」「勇気」「覚悟」のなかでも、最も大切なのは「相手を尊重する」ということなんですよね。

中村聡宏スポーツが複雑で魅力的なのは、“自分を倒そうとしている相手が、本気で攻めてくれないと楽しくない”ということです。「なぜ相手をリスペクトするのか?」の答えは、お互いに相手に本気で戦ってもらうため。敵ではなく、あくまでも対戦相手。その存在こそが、試合を楽しむことにつながるのです。

木村隆志その、「相手を尊重する」というスポーツマンシップの精神を、一般社会に置き換えるとしたら、どうなるんでしょう。

中村聡宏一般社会での対戦相手を、“自分から最も遠い人”とした場合、「自分とは反対の意見を持っている人」ということになるかもしれませんね。その人たちと意見を闘わせることで、自分の意見もよくなっていくし、考え方が変わったりもする。そういうことだろうと思います。

木村隆志多様性を認めるというのも、つまりそういうことですよね。

中村聡宏でも今は多様性を認めることに対して、寛容じゃないですよね。自分の意見が通らないとすぐにキレたり、世間の風を読んで多数派に回り少数意見をつぶしたり。SNSはそういう風潮を作りやすいツールだと思いますが、ネットメディアもそれを気にして、日和っているように感じることもあります。

木村隆志多数派でいたいのと、ネットがストレス発散装置になってしまっていて、それをまたメディアが利用している、というのが悪いほうに向いてしまう原因だと思います。自分の意にそぐわないだけの理由で誰かを批判しても、匿名のSNSなら責任取らなくてもいいですし。ストレス発散のためなら、人を貶めてもいいという風潮を作っていますよね。

本年8月以降の主なスポーツ競技日程

日本にはスポーツマンシップ教育が必要

中村聡宏日本人は正解を教わって、それをテストという場で吐き出す、という教育を受けてくるじゃないですか。ある程度教育レベルは高いのかもしれないですが、論理的に思考するとか意見するとか、議論するという学びの機会が少なかった。詰め込んだものを吐き出すだけ。自分の発言によって、どういうふうに人が傷つくのか、という想像力が足りてないのかもしれません。スポーツマンシップはバランスの問題でもあると思うんです。勝利をめざさなければいけないんだけれど、負けたときは相手を讃える。そうしたバランス同様、相手を慮る気持ちを大切にしてほしいです。

木村隆志スポーツマンシップの3つの柱、「尊重」「勇気」「覚悟」を持つと、生きるのが楽しくなるということを教えてほしいですね。実際にそうじゃない人が、(ネットで人を)叩いてしまっていると思うので。

中村聡宏木村さんは記名で執筆活動しているんですよね。

木村隆志はい、めちゃくちゃ批判がありますよ。愛ある批判と呼んでいるんですけれど(笑)。私は人間関係コンサルタントという仕事もしているんですが、リスペクトがない人に悩みが深い人が多いと感じています。電車が遅延したときに怒る人とか。誰に怒っているのかと思うんですが、遅延の解消に力を尽くしている人がいることも忘れてしまう。そういうタイプは自分主語の人が多い。今は自分の時間を数多く作れるじゃないですか。好きなものを見て、好きなものを買って。その結果として、自分が好きなもの以外は敵、みたいな考えになってしまいがち。そういう意味でも、スポーツマンシップ教育が必要なんだろうなと思います。

提供元: コンフィデンス

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