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浜崎あゆみ × TeamAyu の絆 ─レジェンドアーティストが今なお進化を続ける理由と、ファンコミュニティが果たす役割─
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エイベックス・マネジメントの山田真吾さんと星川達さん、エンタメ社会学者の中山淳雄さん、そして最新のコミュニティプラットフォーム『ALLLY(アリー)』の開発・運用を率いるテック企業Sun Asteriskの大竹浩介さん (C)佐々木隆宣
その背景には、単なるライブチケット優先権を超えた、テクノロジーとアーティストの思想が三位一体となった新しいエンターテインメントの形がある。エイベックス・マネジメントの山田真吾さんと星川達さん、エンタメ社会学者の中山淳雄さん、そして最新のコミュニティプラットフォーム『ALLLY(アリー)』の開発・運用を率いるテック企業Sun Asteriskの大竹浩介さんの4名に、浜崎あゆみとTeamAyuが示す「次世代のエンタメモデル」の正体に迫った。
浜崎あゆみが歩みを止めない理由
「27年間も活動を続けていると、過去のヒット曲という大きな蓄積があるため、過去の実績だけで安定した活動を続けることもできてしまうはずです。しかし、彼女はそれを絶対に良しとしません。常にファンの皆さん、TeamAyuの皆さんの期待をいい意味で裏切りたい、驚かせたいという想いが非常に強いんです。横で見ていて感じるのは、自分が行っていることに対する信念のブレなさ、強さといったものが、年々増しているということ。彼女自身が今の自分に決して満足せず、常に100点満点以上を追いかけ続けているからこそ、そのエネルギーが進化の源になっているのだと、スタッフとしても圧倒されるばかりです」
現在の音楽業界では、スマートフォンの普及やストリーミングの定着により、新曲だけでなく、10年、20年以上前にリリースされた「旧譜」が長期間にわたって聴かれ続ける傾向が強まっている。特に日本市場は、世界的に見ても旧譜のシェアが高く、2000年代の楽曲がビルボードチャートにランクインし続けるなど、ベテランアーティストの存在感が再評価される土壌がある。エンタメ社会学者の中山淳雄さんは、マスメディア全盛期のアイコンが独自のコミュニティを構築することの意義を、市場環境の変化を踏まえて次のように説く。
「今のエンタメ界は、かつてのように何百万人に薄く届けるモデルから、10万人、20万人という特定のコアなファンと深く繋がるモデルへとシフトしています。特に日本は、ストリーミングにおいても旧譜が全体の売り上げの大部分を占めるという世界でも珍しいマーケットです。浜崎さんの場合、かつて中心的だったマスメディア向けの露出だけでなく、非常に濃密なファンと直接繋がるコミュニティを重要視していると聞きます。こうした『深い繋がり』は、流行に左右されない強固な基盤となります。心理的安全性が担保された状態ですと、ファンとの距離も縮められ、それが結果として30年、40年と続くアーティスト活動の持続性に直結する戦略転換だったともいえます」
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日本のエンターテインメントシーンの最前線を走り続ける、浜崎あゆみ (C)エイベックス・マネジメント
25年以上続くTeamAyuが見せた劇的な進化
「ファンクラブの移管を検討し始めたのは、約3年前のコロナ禍でライブが1年半ほどできなかった時期でした。これまでの『チケット優先サービス』を主軸とした、サービスを与える側と受ける側という関係を捨て、アーティストとファンが共に歩む“ファンダム”へと進化させる決意をしたのです。SNSのスピードが早すぎる現代において、ファンが求めているのは一方的な情報提供ではなく、浜崎あゆみの想いに触れ、日常的に同じ熱量を持つ仲間と繋がれる“居場所”でした。アーティストの投稿にファンがコメントし、それに対してファン同士が語り合う。スマホを開けばいつでも『浜崎あゆみの世界』に浸れるデジタル上の空間こそが、今のTeamAyuが提供している真の価値です」
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浜崎あゆみと歩みを共にしてきたファンクラブ「TeamAyu(通称:TA)」現在はアプリの中に多くの体験が集約されている (C)Sun Asterisk
「新しいアプリというプラットフォームがあることで、ファンの方々が感じた熱量を、即座に同じ仲間に共有できるようになりました。ライブの演出について『あの衣装が良かった』といった細かい感想がリアルタイムで飛び交うのは、一方的な通信であった従来の会報誌では不可能だったことです。ファン同士が絆を感じ、チームでayuを応援しているという実感が、よりアーティストを推すパワーを強固にしています。オンラインでの日常的な会話と、ライブというオフラインの体験がシームレスに繋がることで、TeamAyuは25年を経てもなお、これほど高い熱量を保ち続けているのだと感じています」
ALLLYが目指す「アーティストとファンの調整装置
「ちょうどK-POPのファンダムが注目されていた時期、当時の『チケット優先』の仕組みのままではアーティストにとって良くない、もっと進化させたいという想いが社内の役員や現場の間で強まっていました。そのタイミングで『ALLLY』に出会い、最先端のテクノロジー企業ならではのスピード感を持って開発を進められたことが、チャンスを逃さずに今の形を作り上げられた大きな要因です。Sun Asteriskさんはテクノロジーのスペシャリストですし、エンタメとテックでそれぞれ強みを持った2社でチームを組んで、アーティストの最も近くにいるマネージャーの意見をダイレクトに反映できる『マネジメント主導』の開発ができたことが、一つの成功の理由だと感じています」
特筆すべきは、その設計思想にある。『ALLLY』は、いわゆるプラットフォーム型の「システム貸し(すでに完成した機能を貸し出すサービス)」ではない。決まった機能を提供し、その利用料をいただく仕組みではなく、アーティストやマネジメントと一体となり、個別のニーズを丁寧に汲み取りながら、システムそのものを一緒に育てていくスタイルを徹底している。Sun Asteriskの大竹浩介さんは、『ALLLY』について“オートクチュール型”であるとして、システム設計への思想次のように語る。
「私たちは、一律の正解を押し付けるのではなく、そのアーティストにとっての『最適解』を形にすることを目指しています。そのため、マネジメントの皆さんと密に連携し、ツアーやイベントの現場に身を置いて、ファンの熱気や課題を肌で理解することを徹底しています。現場でしか得られないリアルな刺激を吸収しなければ、本当に地に足のついた、意味のある機能は設計できません。さらに、マネジメントと密に連携する“オートクチュール型”だからこそ、裏側の管理画面もマネジメントの皆さんが扱いやすいように設計しています。例えば、アプリ内に蓄積されたファンの行動データや熱量を正確に可視化・分析することが可能です。定性的な盛り上がりをデータという定量的な根拠に変換し、次のライブ演出やグッズ開発といったマーケティング戦略にダイレクトに活かせるんです。こういう点も、われわれならではの強みだと思います。システム開発を単なる『ツールの提供』として捉えるのではなく、アーティストごと、コミュニティごとに異なる想いや課題を起点に、継続的にアップデートしていく伴走者でありたいと考えています」
こうした思想のもとに設計されたテクノロジーは、SNSのような一時的な拡散ではなく、長期的な関係性の維持に特化した「調整装置」としての役割を担っている。かつてのファンクラブがチケット先行などの特典を目的に、特定のタイミングで入会する「入口」であったのに対し、『ALLLY』は日常的にファンが関わり続けられるエンゲージメントの高い体験を設計しているのだ。
「SNSのように誰からでも見られ、時に心ない言葉が飛び交う場所とは違い、ファンコミュニティは同じ想いを持つ仲間が集まるクローズドな空間です。私たちは、この場所を『自分をさらけ出せる居場所』、すなわちアーティストにとってもファンにとっても誹謗中傷から守られた、心理的安全性の高い場所として設計しています。テクノロジーは前面に出るのではなく、コミュニティが健全に育ち続けるための『黒子としての道具』でありたい。年末のライブで、ファンの方々が心から喜んでいる姿をスタッフの皆さんと一緒に客席から見守る時、この居場所を守り続けてきて良かったと、人生の価値を感じることができます」
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(左から)エイベックス・マネジメントの山田真吾さんと星川達さん (C)佐々木隆宣
会費は居場所を健全に守り続けるための投資
「正直なところ、単なる情報提供やチケット抽選の優先権だけを売る従来型のモデルであれば、月額1,000円という価格は割高だと感じられるでしょう。かつてのファンクラブは、チケットが取れるかどうかわからない不確実な権利にお金を払っていただくという側面もありました。しかし、私たちはその仕組みを捨て、ファンが日常的に参加できる『場』を作ることに全ての投資を集中させました。もし提供する価値が対価に見合わなければ、お客様は去っていきます。でも実際、TeamAyuの会員数は維持され、熱心に活用してくださっている。現時点でのサービス内容が完璧ではないですし、まだまだ改善の余地はあります。また全てのファンが、この「コミュニティ重視」のアプリの方向性に賛同しているわけでもないことは理解しています。ただ、現状は多くのファンの方々が『ここに居続ける価値』を認めてくださっているのだと思っています」
この価格設定の背景には、ファンを単なる「消費者」ではなく、コミュニティを共に維持・発展させる「関係者」として位置づける思想がある。大竹浩介さんによれば、『ALLLY』において運用で絶対に外さない基準は「ファンが“参加している実感”を持ち続けられているかどうか」であるという。
「私たちは価格を単なる収益源としてではなく、コミュニティを持続させるための循環の起点として捉えています。収益によって得られた価値は、運用体制の強化や体験の質の向上へと再投資され、その結果として、ファンの参加体験がさらに深まる。この循環が成立してはじめて、価格は意味を持ちます。自分の存在が認識され、反応が返ってくるという『参加実感』が守られることで、ファンは“消費者”ではなく“関係者”となります。月額1,000円はサービスを利用するための入場料ではなく、コミュニティをより良い状態で維持し続けるための『共同投資』の意思表示なのです。この信頼に応え続けることこそが、私たちの最大の責務だと考えています」
世界中のファンがリアルタイムで繋がる新時代
「かつては画面の向こう側の存在だった彼女が、今はファンコミュニティやSNSを通じて向こう側からも言葉を投げかけてくれる。この双方向性が、ファンの『また会いに行こう』という想いを加速させました。さらにAI翻訳テクノロジーの進化により、かつては莫大なコストがかかっていたローカライズ(現地語対応)のハードルも劇的に下がっています。テクノロジーが国境という物理的な壁を溶かし、世界中のファンが一つの熱狂の中に集まれるようになったのです」
こうした「長く保存され、熟成されるファン文化」は、世界的に見ても日本独自の非常に稀有なビジネスモデルであると、中山淳雄さんは展望する。
「韓国のエンターテインメントサイクルは非常に早く、多くのアーティストが話題になってから数年で消えてしまうことも少なくありません。それに対し日本は、浜崎さんのように30年近く、ファンが『絶滅危惧種』になることなく熟成し続けるマーケットを持っています。これは、国民性としての『古いものへのリスペクト』や『信頼の厚さ』が土壌にあるからです。マスメディアの象徴だったアイコンが、今やコミュニティマネジメントの先駆者となり、ファンと共に人生を歩み続ける。この姿は、これからを生きる多くのアーティストにとって、活動の持続性を示す希望の光になるはずです」
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エンタメ社会学者の中山淳雄さんと、Sun Asteriskの大竹浩介さん (C)佐々木隆宣
浜崎あゆみが提示する次世代エンタメとファンダムの形
Sun Asteriskの大竹浩介さんは、「システムを開発する側として、私たちの仕事は単に便利な機能を作ることではありません。アーティストとファンの間にある目に見えない関係性を、テクノロジーという調整装置で健全に循環させ続けることです。ライブ会場でファンの方々が心から安心し、喜んでいる姿を目にするたび、この居場所を黒子として守り続けてきたことが、私たち自身の人生の価値になると確信しています」と、システム開発のみではなく、アーティストやファンと熱量を共にする伴走者としての覚悟をにじませる。
加えて、エイベックスの山田真吾さんは、「IT企業に開発を丸投げするのではなく、アーティストの最も近くにいるマネジメントの視点をダイレクトに反映させたことが、TeamAyuの成功に繋がりました。ファンが何を求めているのか、その時々の最適解を現場の人間がテクノロジーと共に作り上げていく。これからも、この熱量を絶やすことなく届けられる装置として、ファンクラブを進化させていきたいです」と、現場主導の開発がもたらした成果を振り返った。
そして、エンタメ社会学者の中山淳雄さんは、「アーティストとファンが共に熟成し、何十年も続けられるのは、世界に誇れる日本独自の健全な文化です。マスメディアの歌姫だけでなくコミュニティの象徴でもある浜崎さんの姿は、持続可能なアーティスト活動を考える上での、一つの成功モデルと言えるでしょう」と、日本発のビジネスモデルが持つ可能性を提言した。
最後に、浜崎あゆみのチーフマネージャーであり、エイベックス・マネジメントのゼネラルマネージャーでもある星川達さんは、「業界全体で『ファンダムが大事だ』という言葉は飛び交っていますが、それをどう形にし、ナレッジとして落とし込むかは誰もが模索していました。Sun Asteriskさんと共にTeamAyuを作り上げてきたこの数年で、少しずつその正体を言語化できてきていると感じています。これからも、浜崎あゆみが描くビジョンを、TeamAyuという最高のチームと共に形にし続けていきます」と、ファンへの感謝と今後のさらなる進化に向けた覚悟を口にした。
ファンクラブは単なるチケット獲得の為の機能や、運営側のマネタイズポイントではなく、アーティストが走り続けるための「心臓部」である。その鼓動を止めず、熱量を滑らかに循環させる裏側には、『ALLLY』という確かなシステム基盤が存在している。
浜崎あゆみとTeamAyu。その27年の歩みは、人と人が音楽とテクノロジーという翼を借りて、いかに誠実に、そして深く繋がり合えるかという、新しいエンターテインメントの地平を示している。これからの時代の持続可能なファンダムには、こうした「見えない調整装置」の伴走が不可欠となっていくのだろう。
Sponsered by 株式会社Sun Asterisk
(取材・文/阿部裕華 撮影/佐々木隆宣)