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関西エリア「粉もんにはソース」の牙城を崩せるか? 使い道をあえて狭める“専用ぽん酢”という逆転の発想
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第1弾〜3弾までの「ご当地味ぽん」シリーズ(画像提供:ミツカン)
“さらさら”では絡まない たこ焼きに潜んでいた“未解決の不満”
2月18日に発売されたご当地味ぽん第3弾「大阪無限粉もんソースby味ぽん」(画像提供:ミツカン)
しかし、粉もんといえば、その美味しさを引き立てるのはソースが定番。大阪にはソウルフードの粉もん人気を表すように、地元のソースがなんと10種類以上も存在するという。そんな中で、味ぽんはなぜ、ぽん酢ベースという変化球で市場に乗り込んだのか。
生みの親である、ミツカンのマーケティング企画部・田中史恵さんは、「きっかけは生活者の使い方にあった」と話す。
「味ぽんでは60周年を機に、日本各地の食文化を地元の方々とともに盛り上げる『ご当地味ぽん』シリーズをスタートしました。各地域の食文化を調査する中で、大阪でたこ焼きについてインタビューを行ったところ、味ぽんの需要があることが分かったのです」(家庭用事業本部調味料事業部調味料企画2課主任・田中史恵さん/以下同)
大阪では自宅でたこ焼きを楽しむ家庭も多く、いわゆる“大阪あるある”として知られている。田中さんがインタビューで大阪人に話を聞いたところ、多くの人が「大好きなたこ焼きを飽きずに食べ続けたい」と語ったという。そのため、自宅でたこ焼きを作る際には、ソースやマヨネーズだけでなく、めんつゆやケチャップ、スパイスなど、冷蔵庫にある調味料をずらりとテーブルに並べ、“味変”を楽しみながら食べているそう。
中でも味ぽんは、「口の中をリセットしたい時に使う」という声が多く挙がった。しかし一方で、「たこ焼きを割って中に味ぽんを染み込ませて食べている」という声もあったという。従来の味ぽんはさらさらしているため、表面にかけても絡みにくい。結果として“ひと手間”が必要になり、この使いづらさが、粉もんとの相性における課題だった。
そこで、「もっと味ぽんでたこ焼きを美味しく楽しめる提案ができるのでないか」と考え、田中さんらチームは1日10軒のたこ焼き店を巡り、粉もんに合う美味しいソースの構造を徹底研究。目指したのは味ぽんの価値を活かしたおいしい粉もん専用ソースだった。
「甘さ→スパイス→酸味」という三段階で味が変化する設計で、玉ねぎやりんごによる甘さ、10種類以上の香辛料によるスパイスの奥行き、そしてぽん酢ならではの酸味で後味を締める。さっぱりと口をリセットできることで、また次のひと口が欲しくなる、大阪人が求めていた“無限に食べられる味わい”を実現した。
多くの人々にインタビューする中で「『たこ焼きがないと生きていけない』という人がいるくらい、関西人はたこ焼きに対して熱量を持っていると感じた」と語る田中さん。「粉もん×味ぽん」はご当地メニューに目をつけたゼロからの提案ではなく、生活者の使い方を起点にアップデートした商品だったのだ。
「何にでも使える」万能調味料が抱えた課題…あえて“専用”を打ち出したワケ
1964年発売時の「ミツカン ぽん酢<味つけ>」 その後、1967年に名称を変えて発売された「味ぽん酢」(画像提供:ミツカン)
しかし、関西では好調だった味ぽんだが、鍋といえばしょうゆ味やみそ味が主流だった関東ではなかなか売れず、苦戦をしいられることに。なんとかその美味しさを広めたいと考えた関東の営業担当者は、その年の冬、早朝からコンロと鍋と食材を積んだ屋台カーを引いて東京・築地の卸売市場に出向き、味ぽんとともに水炊きを小売業者に振る舞い、販路の拡大につなげていったという。
こうして、大阪から全国へと拡大していった味ぽんは、今や認知率95%のブランドへと成長。鍋だけでなく、焼肉、サラダ、餃子といったメニューの調味料として、また煮物や炒めものなど調理の味付けに使う調味料としても用途を広げているのはご存じの通りだ。
ちなみに、現在も「エリア別消費量では関西のほうが強い」と田中さん。とくに近畿地方はなんでもぽん酢をかける文化が根づいていて、全国平均の約1.4倍を記録しているのだとか。
「味ぽん」と「味ぽんMILD」(画像提供:ミツカン)
「調味料は1世帯に1本というのが通常かと思うのですが、国内の世帯数がピークアウトしていく中、今後、消費が伸びにくくなるのは目に見えています。“味ぽん=鍋、和風”といったイメージを脱却し、これまでとは違う軸で味ぽんブランドの魅力を伝え、生活者の方々に新しい楽しみ方を提案し、味ぽんの可能性を広げる必要があると考えました」
そこで“おいしさ、ぽんぽん広がる、味ぽん”をコミュニケーションコンセプトに、HP等でコロッケやカレーライス、アイスクリームなど幅広い使い方の提案を行うなど、味ぽんの領域の幅広さを訴える新たな施策に次々挑戦。「ご当地味ぽん」もその考えの中から生まれたひとつだった。
バニラアイスに「味ぽん」(画像提供:ミツカン)
3地域とコラボした「ご当地味ぽん」 鍵は“地域の魅力×味ぽんの親和性”
エリアを選定するにあたっては、「そのエリアとの関係性とともに、“ご当地ならではの魅力×味ぽんとの親和性”の掛け算がどこまで大きくできるかを重視してアイデアを出してきた」と田中さん。
例えば、第1弾の「宇都宮餃子」は餃子通りがあったり、マンホールに餃子が描かれていたり、街灯が餃子の形をしているなど、街をあげて餃子を盛り上げようとしている宇都宮の餃子愛に着目。30種類以上を試食し、複数の酢や醤油、ラー油を組み合わせて味を設計し、餃子との相性を徹底的に追求した。
水餃子に『味ぽんfor宇都宮餃子』(画像提供:ミツカン)
バタぽんを使用した「アスパラガスとほたてのバタぽんソテー」(画像提供:ミツカン)
「そのエリアに出向いて地元の方と会話をするのがすごく楽しいんです。そこで見つかるヒントがたくさんありますので、今後も地元の方々のお声をもとに、その地に根付いた食材やメニューをもっと美味しく楽しめるよう、新しい需要創造ができたらと思っています」
次はどこの地域のどんなメニューに合ったぽん酢が登場するのか。「ご当地味ぽん」のこれからがますます楽しみになってきた。
(取材・文/河上いつ子)