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少女マンガの現在地 なぜ今“中世ヨーロッパ風”ファンタジーが人気? 昭和の名作『ベルばら』と電子コミックとの違いは
似ているようで逆? 令和の西洋風ロマンスファンタジーと昭和の少女マンガの違い
「西欧やロシア、アメリカを舞台とした70年代の作品は、海外への憧れを描いてきました。一方で今の西洋風ロマンスファンタジーは、BLと同じで“まったく違う世界”だから絵空事として楽しめるのではないかと。また、中世ヨーロッパ風を舞台としているからこそ、現代では時代錯誤な男性上位の男女関係、身分や差別などドラマティックな設定も描きやすい。読者にとっても、その世界に没入しやすい設定と言えるでしょう」
一見、ベルばら的な昭和の少女マンガと似ているようにも見えるが、現代の西洋風ロマンスファンタジーは、単なる原点回帰でも、読者のノスタルジーでもないということだ。
「似ているように見えて、実はベルばらとは逆。もちろんベルばらにはフランスへの憧れの要素もたくさんありましたが、それと同時に読者は“男社会で生きる女性”としてのオスカルに自らのアクチュアルな問題意識を投影していました。今日の西洋風ロマンスファンタジーにはそうした“重さ”はあまり感じません。純粋にエンタメとして楽しまれている。それはそれで別段悪いことでもなく、読者にとってよい息抜きになっているのではないかと思います」
電子コミックで生まれた西洋風ロマンスファンタジーの流行も、さらなる変化や細分化を見せている。特に“令嬢”モノは女性読者にも人気で、「それ以前にも人気作品はありましたが、特に『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』(一迅社)のアニメヒット以降、令嬢系と呼ばれる作品の認知力がさらに向上した印象」(コミックシーモア・杉山さん)とのこと。
そして最近では、逆境に立たされたヒロインが自分自身の力で這い上がり、理想の相手からも愛され幸せをつかんでいく…という展開に人気が出ているという。これはある意味、90年代に流行った強い女の子像をも彷彿とさせる。
「芯があり、生き抜く強さと知識があるヒロインが問題解決に向かう姿は共感を得ています。また、そうしたヒロインが、ある程度地位のあるヒーローとカップルになったり、周りのキャラクターがヒロインに惹かれて味方になったり…といった描写も多く、理想的なハッピーエンドを求められる傾向にあります。少女マンガにおける『思いあうが故のすれ違い』も、ロマンスファンタジーでも定番かつ人気な展開です」(コミックシーモア・杉山さん)
このような、“令和の少女マンガ”の代表とも言うべき西洋風ロマンスファンタジーについては、「作画の美しさ」を魅力として挙げる読者も多い。もちろん、昭和の作品の美麗なイラストも印象的だったが、電子コミックの作画技術や表現方法は、現代ならでは。時代は変われど、読者が惹かれる部分は変わらない。
「形を変えていこうと、理想的な異性に愛されるという展開は魅力的ですし、そこが煌びやかな世界であればさらに惹かれるのは、非日常を体感できるマンガ作品の醍醐味じゃないかと考えます」(コミックシーモア・杉山さん)
時代やデジタルカルチャーの影響を受けながら、長い時間をかけて変化してきた少女マンガ。現代の電子コミックにおける読者は、現実とかけ離れた“絵空事”に没入しながらも、やはりどこかに自分の願望や理想を見ているのではないだろうか。単純な原点回帰でもないが、共通点もある。そんなゆらぎや変化も、歴史ある日本の少女マンガの豊かさといえる。少女マンガの進化系は、実は電子コミックにこそあるのかもしれない。
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(文:衣輪晋一)