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40周年の国生さゆり「自分のキャリアを傷つけた」経験が小説・マンガに昇華、「バレンタイン・キッス」秘話も
「最初は素人のようなアイドル」、自分を客観視する視点が生きた
――「人に見せるつもりではなく書いていた」という小説が、電子コミック化され、さらに多くの人に届いています。
国生さゆり 趣味の域で書いていたものが、まさか人目に触れるとは…。こうなってくると、変な言い方ですが「ちゃんとやらなければ!」という思いでした(笑)。ただ、私は熱量が高い方なので、しっかりバランスをとっていかないと、楽しくクリエイトできなくなってしまう危惧もあったので、物事を俯瞰的に捉えようという意識もありました。
――コミック化にどのように関わっているのでしょうか?
国生さゆり 基本的にはプロの方にお任せして、邪魔にならないようにしています。でも、いろいろ意見を聞いてくださるので、そのやり取りがすごく楽しくて。これまでは演者として前に出ることが多かったので、すが、みんなでワイワイしながら「どうやったら楽しくなるのか」を探すのが好きなんです。
――プロデューサー的に、物事を客観的に分析するのが好きなんですね。
国生さゆり 40年も芸能の仕事をしてきたから、いろいろな視点を意識するやり方は培ってこれたのかな。最初は素人のようなアイドルから始まり、「どうしたらダメな部分を克服できるんだろう」という視点は常に持っていた気がします。
小説を書いたのは“贖罪”…、「言わなくてもいいことを吐露」生きづらくなった30、40代
国生さゆり そうですね。小説を残しておきたいと思った理由は、自分が若い時に見なくてもいいこと、しなくてもいいこと、わからなくてもいいことに目を向けたことで、「自分のキャリアを傷つけてしまった」という自覚があり、そのことへの贖罪だったんです。経験したことをマイナスに捉えるのではなく生かすために…。その意味で、これまでの経験がなければ、小説にたどり着かなかったと思います。
――「キャリアを傷つけてしまった」とは?
国生さゆり 希望した仕事をいただけなかったり、番組で言わなくてもいいことを吐露してしまったり…。本当はきれいなところだけすくって、可愛らしく美しくしていればいいのに、自ら濁らせてしまったなと思うことがあって。自分でしたことですが、30代、40代が生きづらくなってしまいました。
――それを昇華させるために、執筆した?
国生さゆり 本作は私小説ではなく、フィクションのミリタリーアクションなのですが、実は自分が言われて傷ついたこと、自分の中で腐っているところも忍ばせています(笑)。心の中にある汚濁を出すことで、精神的にも穏やかになれて、書くことがデトックスになる、みたいな(笑)。
――でも、そんな過去を正直に明るく話せるのは、素敵なことだと思います。
国生さゆり いま58歳なのですが、この年齢になったからこそ「自分のキャリアを傷つけた」とか「もっと違う生き方ができたのかも」と言ってもいいのかなと(笑)。実際、恋愛した人たちの名前もネットにあがってきますし何も包み隠さず正直にいたい。そんな年齢なんでしょうね(笑)。30代、40代ではこうした考え方にはなれなくて、「大女優になりたい」「一流になりたい」という気持ちが強かったですから。
“昭和のアイドル”が見た“令和のアイドル”、「1個の間違いも許されない」
国生さゆり 私がアイドルの頃と大きく違うのが、SNSの普及じゃないですか。当時はプロデュースする側が見せたい部分だけを提示すればよかったけれど、いまは全方位にオープンになっているから、すごく大変だと思います。言葉や行動にしても、1個の間違いも許されない。理由も説明できないまま、1枚の写真、一言だけで判断されるのは怖いですね。
――いまの時代だったら、アイドルにはなりたくない?
国生さゆり いや、なります!(笑)。アイドルは楽しいし、応援していただけるし、ドラマにも出られて歌も歌える夢のあるお仕事。私も、いまだに当時のファンの方からメッセージをいただけたりするのは、本当に宝物です。ただ、アイドルという殻を脱ぐときはやっぱり大変なんですよね。
――というのは?
国生さゆり ずっとアイドルを続ける選択肢もありますが、どこかで変化しようと思うと、イメージを変えるのは大きなチャレンジですからね。
――国生さんはアイドルグループからソロへ、そして俳優、バラエティ出演、小説執筆と常に変化していますが、アイドルから変化するきっかけはあったのですか?
国生さゆり 不得意だと思ったことがきっかけですね。おニャン子クラブにいるときは、グループ活動が苦手だったので、ソロになりたいと思った。ソロになってからは、歌が不得意だから俳優さんになりたいと思ったんです。その後、役が狭まってきたからバラエティ番組へ。常に不得手だったので、ほかのことにチャレンジしようと思ったんだと思います。