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「また孤立するのが怖かった…」レズビアン当事者明かす周囲の偏見とカミングアウトへの葛藤
女の子が好きなことに気がついた高校時代 いじめの過去がカミングアウトの足かせに
「そうです。高校生になって自分で美容院に行けるようになったので、母親に言わずに髪をバッサリ切りました。「これが自分なんだ!」ってすごくしっくりきたし、ちょうどその頃LGBTQという言葉も知って、自分はこれに当てはまるんだと思えたんですよね」
――当時、ご両親には自身の想いを伝えていましたか?
「小さい頃からスカートが嫌いで「履きたくない」とは伝えていて、高校2年の時には、「胸があるのが嫌だから、胸をおさえて隠せるアイテムが欲しい」と勇気を出して言ったんです。でも予想通り、「何言ってるの?」と。それでこっそり買って、母親がいない時間に届くようにして、部屋の隅に隠していた気がします(笑)」
「そうですね。長い髪とかスカート、胸などいわゆる“女性”を象徴するようなものが苦手でした。性別違和はないですが、男性的な容姿の方が自分らしいと思えるんです」
――恋愛対象が女の子だと気づいたのは?
「中学生の時は好きな男の子がいたので、気づいたのは高校生の時。仲の良い後輩がいたんですけど、高校生になって、その子に彼氏ができたって聞いた時に、ものすごくショックで。失恋したような感覚があったことで、自分が女の子も好きになることに気づきました」
――周囲へのカミングアウトはいつ頃ですか。
「何年も誰にも言えませんでした。大学生になって、同性カップルがいたんですが周りの女の子たちが「女の子を好きになるって、理解できない」などと噂話していた時も、何も言わずにただ聞いていました。「そんなことないよ」と言ったら、また友だちが離れて行ってしまうと思ったので…」
――「また」と言うのは…
「中学3年生の時に、急にクラスの女の子から無視されるようになりました。聞こえるぐらいの声で悪口を言われたり、SNSやLINEのタイムラインで悪口を言われたりして。幼稚園からの幼馴染や、学年の女の子みんなから避けられてしまう状態で、精神的にかなり追い詰められました。周囲と違う発言や目立つ事を話したら、また、あの時のようになるって怖さもあって、同性愛については長く言えずにいました」
無視され追い詰められた中学時代「仲良くなればなるほど、裏切られるのが怖かった」
「今でも分からないんです。当時はボーイッシュな容姿もしていないですし、同性愛でもなかった。母親にも言えずずっとひとりで悩んでいて、正直「死にたい」とも思いました。でも、心のどこかで「まだ死にたくない」とも思っていたから、カッターで自分の腕を深くなりすぎないように傷つけて。受験の始まる直前ぐらいにようやく母親に話せて、なんとか中学は卒業できました」
――その後、イメージチェンジする高校生に。
「心の底から笑えなくなっていましたし、誰も信用できなくて高1の時は教室にひとりでポツンとしていました。仲良くなればなるほど、裏切られた時に傷つくのを知っていたので。深く付き合うのが怖くて、自分はずっとこのままなんだろうなって思っていました」
「高校2年生のクラス替えで、話しかけてくれた子がいて、仲良くなりたいって思ったんです。担任もすごくおもしろい先生だったし、休み時間やお昼を一緒に食べる仲間ができたことで、自然と笑えるようになっていました」
――そこからボーイッシュ女子への変身を遂げるんですね。
「友人と先生に恵まれて自分らしさを取り戻したら、もっともっと自分らしく生きたいと思うようになって。それがヘアカットにつながり、その後のボーイッシュ人生の幕開けとなりました」
カミングアウトで傷ついた日々と、本当の自分を明かしたことで出会えた奇跡
「大学2年の時からTikTokで活動をしてたんですけど、フォロワーが増えるにつれて、「女の子も好きになりますか?」って質問をもらったんです。なんで自分に嘘をついてまで、自分を隠し続けてモヤモヤしないといけないんだろうと思って、インスタのストーリーに「女の子も好きになることあります」ってのせたのが最初です」
――反響は大きかったですか?
「かなり(笑)。友だちから、私のことは好きだけど「同性が好きとかないわー」って連絡がきたり、恋愛じゃなくて本当にこういう風になりたいって憧れていた大好きな先輩にフォローをはずされたり。自分が最初に女の子を好きなことに気が付いた後輩にもフォローをはずされた時は、本当にメンタルがやられました。「だよな」って思う気持ちと、仲良くして支えてくれていた子だからこそ、「もう連絡を取っちゃいけないんだな」って、すごくショックでした。でもすごく優しい子だったから、きっとわかってくれているとは思っています」
「仕方ないよなって思う気持ちと、本当のことを伝えた上で話しかけてくれたり、仲良くする人を大事にすればいいんだってシフトチェンジができたんですよね。LGBTQって言葉も広まってきていたし、離れていく人は離れていく人、それでも側にいてくれる人を大事にしようって思いました」
――傷ついたこともあったけど、本当のことを言ってよかった?
「よかったですね。残ってくれた人もいるし、そこから出会えた人たちは、ほぼ奇跡だと思うけど、偏見がない人しかいなくて。カミングアウトした日から、初対面の人にも「女の子が好きでさ」って話せるようになりました。そこで反応を見て、引いたなと思ったら、その子にも「私のこと好きなのかな」とか困惑させちゃうから、自分からは話しかけないようにしたり。でも、自分らしく生きられているから今すごく楽しいし、恋人もいて、心から笑える毎日です」
――ご家族へのカミングアウトは…
「実は両親や祖父母には言えてないんです。言いたい気持ちはあるけど、偏見の多い世代だと思うので。中学時代にいじめのことですごく心配してくれたり、仕事が大変だった時に支えてくれたので、裏切るような気がしちゃって。でも、インスタは見てくれているはずなので、気が付いてくれてはいるのかな。家族では、唯一双子の兄に本当のことを話していて、すごく理解してくれています」
LGBTQへの理解と同性婚への思い「みんなが楽しく自分らしく生きられる世の中に」
「今はTikTokを開いたらボーイッシュな女の子もいっぱいいるし、キレイでかわいい男性もたくさんいて。SNSを通して若い世代にも、理解は広まっているとは思います。ただ全員が全員理解してくれるわけではないし、完全に偏見がなくなることもないのかなと。でも、街を歩いていたら同性同士で手をつないでいる姿もよく見るので、生きやすくはなったと思います」
――法改正も議論されている「同性婚」についてはいかがでしょうか。
「認めて欲しいですね。パートナーシップ制度はあるけど、それだと法律上家族ではないのでモヤモヤしますよね。少子化と結び付けられることもありますけど、海外で同性婚を認めている国で、少子化が問題になってはいないので、そういうことではないのかなと個人的に思っています」
「自分が何者かって考えると底なし沼で、悩みだしたらキリがないと思うんです。性格や顔が全く同じ人がいないように、人の数だけ違いがあって、ひとりひとり別だと思うから。あまり深く考えすぎず、みんなが自分らしく、楽しく生きられたらいいなっていうのは、SNSを始めた時からずっと思っています」
――SNSや講演会で活動するのも、そういった思いがあるからでしょうか。
「そうですね。悩んでいる人たちの支えになりたいなって気持ちが大きいです。周りに理解してくれる人がいないって思っているかもしれないけど、カミングアウトしてみないと分からないこともあるので。自分でよければ話を聞きたいし、お声がけいただいたら積極的に参加して、少しでも力になれたらと思っています」
(取材・文/辻内史佳)
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