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“アリエル”になった男性会社員のその後は? 会社にもメイク&可愛いファッションで出社「男性のまま可愛くなるということに、偏見がなくなれば」
「“色のない世界”を生きているみたいだった」ひたすら“周りの目”を気にして生きてきた過去
七海にこ「もともとファンタジーが好きで、魔法とかにワクワクするような子だったんです。中でもアリエルは外の世界を夢見て自分なりに頑張っている姿にすごく感銘を受けて、『アリエルみたいに美しくも可愛くなりたい!』と4〜5歳くらいから思うようになりました」
――男の子である自分が、プリンセスになりたいと思うことについて、ギャップを感じませんでしたか?
七海にこ「それはもちろんありました。僕の周りは、男の子は男の子と、女の子は女の子と遊ぶみたいな区別がはっきりしていたし、男の子は男らしくしていなければならないという偏見もありましたから。小さい頃って周りの情報がすべてですから。『可愛いものが大好きで、可愛くなりたいと思うのは恥ずかしいことなんだ』とインプットされてしまって、その気持ちを隠して、必死に男らしくしなきゃ、バレないように振舞わなきゃって考えていました」
七海にこ「そうですね。可愛いものが好きなので、たぶん女の子といたほうが楽だったと思うんです。だけど、あえてそうしないようにしていました。男社会特有のノリも嫌でしたが、必死に合わせようと頑張っていました。人目を気にしがちで、どう見られているかということにすごく敏感だったので、周りに気づかれないように考えすぎて、常に気を張っているみたいなところがありました」
――「可愛くなりたいだけの平凡な男子」と公表しているように、にこさんは、体の性別と心の性別が一致しない性同一性障害ではなく、男性である自分は受け入れていらっしゃるんですよね。
七海にこ「はい。自分は女の子になりたいのかな?と考えた時期がありましたけど、結果、僕は自分の性別が男性であることは受け入れられているし、そのままの状態で自分らしく可愛くなりたいんだということに気づいたんです。もちろん、子どもの頃はそんな分析はできませんでした。今のようにメイクをして、女性の服を着て過ごせる日がくるなんて、夢にも思っていませんでしたから。諦めというか、ずっと『来世は女の子に生まれて可愛くなりたい』と思っていました。今振り返ると、“色のない世界”を生きているみたいでしたね」
一歩踏み出す勇気をくれたのは、今までの“経験”と“ディズニー”
七海にこ「いろいろな経験の蓄積だったと思います。そのひとつには留学がありました。大学時代にフィリピンとアメリカに長期滞在したのですが、その時に様々な人たちの文化や考え方に触れて、『周りに合わせるのではなく、自分らしくしていいんだ』と思うようになったんです。ただ頭ではわかっても、20年近く人目を気にして自分を隠してきた僕の心はそう簡単には変わりませんでした」
――自分を少しずつ許せるようになる後押しをしてくれたのが、ディズニーだったとか。
七海にこ「ディズニーパークって自分を思い切り出せる場所。人目を気にして生きてきた僕にとって、可愛いファッションにチャレンジできる場所でした。そんな僕に、キャストさんたちはとても温かい声をかけてくれました。また、もともとSNSにディズニーにまつわるネタを投稿していたんですけど、たまにディズニーコーデを載せていたら、応援してくれる人がすごく増えて。その声が本当に嬉しくて、勇気と指針につながって、少しずつ自己表現できるようになった気がします」
七海にこ「女の子たちが可愛くなりたいと思うときに、両方を気にするのと同じです。僕の中ではメイクとファッションは同列です。自分を解放できるようになったとき、どちらが先ということはなく、両方が同じくらいのハードルでした。例えば最初からスカート履くのは勇気がいるので、ちょっとスカートっぽく見えるパンツから入って、同時にメイクも薄めのナチュラルメイクから始めてという感じでした」
――変わり始めたにこさんを見て、周りの反応はいかがでしたか?
七海にこ「とにかく20歳まではまったく気づかれないようにしていたので、みんなビックリですよね。一方で、無反応も多かったです。理解を示してくれたのは、限られた人のみでした。その全員が女の子で、もともと理解がありそうな仲の良かった子たちでした」
――人目は気にならなかったですか?
七海にこ「最初の頃は、めっちゃ気にしていました。とにかく目立たないように、女の子に溶け込みたくて、マスクは外せないし、声を高めにしていたときもありました。あと身長が高くて、ちょっと浮いてしまうので、縮こまってたりもしていました」
七海にこ「今年のディズニー・ハロウィンでは、プリンスとプリンセスの両方をやってみようかなと考えています。両方のいいところ取りをしちゃうのも、僕にしか届けられないメッセージかなと思うし、そこを着眼点に興味を持ってくださる方もいらっしゃるかなと思うので。あと、僕の思いを若い子たちに届けるために、TikTokも頑張ろうかなと考えています。動画は苦手ですけど、若いうちの価値観の形成ってすごく大事だと自分自身の経験から強く思っています。人は違っていて当たり前で、そのうえでどう自分らしく生きるか、どう思いやりを持って生きていくべきか、そういう意識を若い子たちに広めていきたいです。そして僕自身は、自分の思う『可愛い』をいっぱい追求して試して楽しみたいと思っています」
(文:河上いつ子)