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経営破綻のサロンが続々…一方でキッズ向け“セルフ脱毛”サロンが増加 小学生の施術に美容外科医が警鐘「安全性や実態に懸念」

 美容意識の高まりにより、一般化するとともに子どもにまで進んでいる脱毛ケア。競争激化から脱毛サロンの経営破綻が相次ぐ中、より手軽かつ安価な「セルフ脱毛サロン」が増えており、家電量販店では家庭でできる「セルフ脱毛器」がずらりと並ぶ。なかには、“キッズ向け”を歌うサービスも増えている。しかし“セルフ”で行う脱毛にリスクはないのか。またその効果のほどは? 医療脱毛を提供する共立美容外科の實藤健作医師に聞いた。

“永久脱毛”は医療機関のみ “医療”と“セルフ”脱毛のメリット・デメリットを十分理解を

──昨年、大手脱毛サロンの「銀座カラー」と「シースリー」が相次いで経営破綻し、倒産に追い込まれる脱毛サロンは少なくありません。施術が受けられなくなるばかりか、高額な契約金が返金されない、ローンを払い続けているといったトラブルも続出しており、共立美容外科では被害者救済の動きが行われました。その一方では、「セルフ脱毛」を謳った比較的安価なサロンや商品が増えています。これらは御社が提供している「医療脱毛」と、どのような違いがあるのでしょうか?

實藤健作さん まず医療脱毛とは「強力なレーザーを肌に照射し、毛根の細胞を破壊する医療行為」のことで、医師法第17条により専門の医療者のいる医療機関でしか行えません。エステサロン(対人、セルフともに)で使用している機器で、毛根を破壊するほど出力を上げるのは違反行為となります。家庭用脱毛器も同様で、出力はさほど高くできないはずです。いずれにしても“セルフ”は除毛効果はあるものの、時間が経てばまた毛は生えてきます。

──医療脱毛をすれば、永久に毛は生えてこないのでしょうか?

實藤健作さん 医療脱毛は景表法上では“永久脱毛”という表現は可能です。ただし人間の体はダメージを受けても再生する力があります。そのため毛根が再生されれば生えてきます。またレーザーは色の濃い毛に反応する性質がありますので、産毛や白髪は完全には脱毛できません。とはいえ破壊した毛根からは毛は生えてこないため、脱毛効果は高いと言えます。

──医療脱毛にはどのようなデメリットがありますか?

實藤健作さん レーザーの出力が高いということは、それだけ肌へ与えるダメージも高くなります。特に髭やVIOなど毛の濃い部位は痛いとされています。ちなみに毛根が減ってくると痛みも少なくなるので、最初の施術が一番つらいと思います。もちろんダメージが最低限に抑えられるよう慎重な施術はしますが、リスクを伴う行為だからこそ、もしもの際にも対応できる医療者がいる医療機関にのみ許可されているというわけです。

第二次性徴前の脱毛で“硬毛化”も…キッズ向けサロンや脱毛機器の購入は慎重に

──美容意識の高まりから、若い女性向けサービスのイメージが強かった脱毛ケアは、男性でも身だしなみのひとつとして意識が高まり、高齢層による介護脱毛から、さらには子どもへと広がっています。一方では、小学生への施術も増え、さまざまな声も上がっています。そうした中、近年は「子ども歓迎」「親子で来院できる」をアピールしているセルフ脱毛サロンが増えています。また、「子どもモード」のあるセルフ脱毛器もあると聞きます。子どもの脱毛にまつわる懸念はありますか?

實藤健作さん 1つには痛みに耐えられるかどうかが心配ですね。脱毛は少なからず痛みを伴いますので、「子どもが毛深いことに悩んだらかわいそう」と親御さんが先回りするのは、倫理的にも問題だと思います。一方でお子さん自身がコンプレックスを抱えているのであれば、検討してみても良いと思います。カミソリで剃るのを繰り返すと皮膚に細かい傷ができて色素沈着を起こしてしまうこともあります。それよりは脱毛器のほうが良いかと思います。いずれにしてもお子さんの皮膚は敏感ですから、大人よりも慎重になるべきだと思います。

──具体的には、どのようなことが懸念されるのでしょうか?

實藤健作さん 脱毛器ならば当然ですが取扱説明書に沿って正しく使うこと。年齢にもよりますが、お子さん1人ではなく親御さんのサポートのもと使用した方が良いでしょう。「子ども歓迎」のセルフ脱毛サロンも、おそらく親御さんの同伴が前提になっていると思います。ただ、いずれにしてもセルフの施術は自己責任。良心的なサロンであれば機器の正しい使い方やリスクなどを事前に説明しているとは思いますが、本当に安全に使用できているか実態までは把握しかねます。

──セルフ脱毛で特に注意してほしいことはありますか。

實藤健作さん 日焼けしている時や皮膚トラブルがある時は、絶対に照射を避けてください。肌に異常を感じられたら、医療機関を受診することをお勧めします。本来であれば、そうした肌の状態などを医師がカウンセリングした上で脱毛に進んだ方がリスクは少ないのですが、セルフの場合はそこも自己判断に任されています。

──脱毛を始める適齢期はありますか?

實藤健作さん おおむね第二次性徴が終わった頃が目安ではないかと思います。子どもはホルモンの関係で一時的に産毛が濃くなる時期がありますが、それも徐々に落ち着いてくるものです。また先ほど言ったように産毛の脱毛は難しく、レーザー照射することで逆に産毛が濃くなる“硬毛化”が起きることも稀にあります。そもそも毛根は成長とともに増えていくものですから、成長期に脱毛をしても、また生えてくることは往々にしてあります。

消費者側の見極めが大事 “脱毛”を一括りにされることで、サービスとニーズのミスマッチも

──脱毛サロンの広告で「これは過剰なのでは?」など気になることはありますか?

實藤健作さん 近年は広告のガイドラインが厳しくなっていますので、そこまで違法性を感じるものは減っているように思います。一方では、“永久保証”といった、消費者のミスリードを誘うような広告は増えている印象にあります。どちらにせよ消費者側の見極めは必要です。医療脱毛、エステ脱毛、セルフ脱毛とそれぞれの効果や施術方法は異なりますが、一括りに“脱毛”と謳っているが故に提供されるサービスとニーズのミスマッチが多々起きているのも感じます。

──消費者はどのように選択すればいいのでしょうか。

實藤健作さん 毛が“ほぼ”生えてこない状態を望むのであれば、選択肢は医療脱毛一択です。ところがエステ脱毛でも同様の効果が得られると認識している方も少なからずいます。エステでできるのは脱毛というより“除毛”だと理解しておいたほうが良いかと思います。

──医療脱毛の価格もかつてと比べて安価になった印象があります。とはいえ、やはり不安なのは痛みです。

實藤健作さん もちろん痛みを軽減する処置はしますが、痛みの耐性は人それぞれです。医療脱毛の痛みに耐えられなくてエステやセルフにシフトされる方もいます。「薄着の季節だけムダ毛が気にならない状態でいたい」というのであれば、エステ脱毛を選択されるのも良いでしょう。加えて「人に施術されるのは恥ずかしい」「時間を気にせず脱毛したい」という方はセルフ向きかもしれません。セルフでは不安だったり、照射が難しい部位を脱毛したかったら対面サービスを選択されると良いのではと思います。それぞれの特性を把握し、ご自身のニーズと照らし合わせた上でベストな選択をしていただければと思います。

(文/児玉澄子)

共立美容外科 大阪・梅田院院長 實藤健作(さねふじ けんさく)先生 プロフィール

  • 共立美容外科 大阪・梅田院院長 實藤健作先生

    共立美容外科 大阪・梅田院院長 實藤健作先生

2003年、長崎大学医学部医学科を卒業。同年、九州大学医学部消化器総合外科に入局後、九州大学付属病院に勤務。
2004年、国立病院機構別府医療センターに勤務。
2005年、西有田共立病院に勤務。
2006年、九州大学大学院に入学。
2009年、医学博士号を取得(甲号)。同年、九州大学大学院を早期卒業し、新中間病院に勤務。
2010年、大分赤十字病院に勤務。
2014年、宗像医師会病院に勤務。
2017年、広島赤十字原爆病院に勤務。
2018年、大分赤十字病院に勤務し、第一外科副部長就任。
2021年、某大手美容クリニックに入職。
2022年、共立美容外科に入職し、翌年に大阪・梅田院の院長就任。

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