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「会社から期待されていなかった…」広告ゼロでもヒット続く『白湯』、異例のホット飲料“通年販売”が奏功
当初計画の3倍売上を記録、ユーザーの4割が男性 脱カフェインブームも追い風に?
「まず、コロナ禍を経て、人々の健康意識が非常に高まったことが背景にあります。また、複数のインフルエンサーやYouTuberの方々が『モーニングルーティンとして飲んでいる』と発信されたことも、白湯が新たな飲料文化として根付く上で、大きく後押ししてくれたと思います。薬を飲む時や体調悪い時など、私たちが想定していなかった飲料シーンもたくさん見られました。忘年会シーズンには新宿歌舞伎町のコンビニでの売上が好調で、SNSでは「二日酔いの時に飲むと最高」などのお声が寄せられました」
『白湯』のメインユーザーは、20〜30代の女性。朝、コンビニなどで買われるケースが多いが、日中や夜間も他のホット飲料に比べて販売が落ちにくく、安定して買われているという特徴があるという。
「外出シーンで、『寒くて体が冷えた』『ちょっと血の巡りが悪い』と感じて買われる方も 多いと思います。カフェインも入ってないですし、甘さもないので、『飲めば体を温められるし、体調が整う気がする』との理由で買われる方が多いのかと思います」
全体の約4割が男性ユーザーで、40代男性も意外と多い。
「昨今、女性よりも少し遅れて、白湯を飲む習慣が男性にも定着してきた印象です。健康診断の結果なども踏まえて、特に意識が強まる世代が40代なのかもしれません。最近カフェインを摂らない生活をしてみようという『脱カフェイン』もブームになっていて、『コーヒー1杯を白湯に変えてみよう』という取り組みをされている方もいらっしゃるようですね」
夏は売上落ちるホット飲料をなぜ“通年販売”に? 広告ゼロでも店頭陳列が最大の宣伝効果に
販促については、TVCMなど大々的な広告は特に行っていない。「そもそも期間限定品として発売し、おいしい水ブランドのメイン商品でもなかったため、『白湯』は社内的にはあまり期待されていなくて、他の部署から『何かやっているぞ』みたいな感じで見られていました(笑)」
その『白湯』が、発売時から想定をはるかに上回る販売数を記録。通常、ホット飲料は冬場限定の商品だが、習慣性の高い『白湯』に関しては「通年販売してほしい」という声も多数寄せられた。そこで通年販売に踏み切ったわけだが、これも売上拡大につながった大きな要因だった。
「弊社はこれまで数多くの商品を販売してきましたが、ホット飲料の通年販売は、異例の試みでした。やはり夏場は暑くなったらどうしても売れなくなるので、“作っても売れない”リスクが高く、『売れないものは置かない』というスタンスの店舗が多い。そこの調整が難しく、需給の観点では正直すごく大変でした」
実際、2023年夏の売上は、冬期に比べれば当然落ちたものの、一定の売上を担保できた。
「昨年は5月から暑かったですが、データを見ると、同年の11月よりも5月の方が売れていたので、驚きました。夏期のホット飲料枠は数少ないですが、お店の方もニーズがあることを感じてくれていたので、棚を確保することができました。結果、他のホット飲料のように、秋期に改めて採用に向けた商談をする必要がなかったですし、プロモーション費用がほぼゼロでも、通年でコンビニの棚に置かれたことで認知が広がりました。CMを打つより店頭に置き続けている方が断然効果が高いと言われますので、これはすごく大きかったと思います」
一度は終売した『天然水ホット』の失敗を糧に、時代とネーミングがマッチしたヒット
「当時は『ホット天然水』という商品名でしたが、社内では『白湯』と呼ばれていたんですね。だったら商品名にしちゃえばいいじゃないかと。実際『白湯がいい』と言ってくださるお客様が非常に多く、この言葉自体が持つイメージが定着してヒットにつながったと思います」
とはいえ、過去に一度失敗している商品を再販するのは、新商品を出すよりもハードルが高い。「社内で『同じようなものを出しても売れないだろう』と言われますからね。そこで、『白湯の飲用経験率が急増している』『男性にも多く飲まれるようになっている』『白湯は習慣性が高く、週何回以上飲んでいる人たちがいる』といったデータをいくつも積み重ね、それを元に社内を説得して発売にこぎつけました」
「中身は天然水なので、冷めてもおいしいというのも強みの商品ですが、やはり温かいうちに飲み切りたいというお客様がたくさんいらっしゃるので、なるべく温かさが長続きする不織布ラベルを採用しました。2022年に『十六茶』で採用したラベルがお客様から好評いただきましたので、それを『白湯』にも使用しています」
結果、冬場のピークを迎える22年12月と23年12月比較で、売上は173%アップ。販売本数は、先月1500万本を突破した。
「もっと手軽に手に取っていただける商品にしたいので、今後は自動販売機や道の駅など色々な所に置いていただけるような取り組みをしたいと思います。今後も、今回のような取材を受けるなど、地道にPR活動を頑張っていきたいと思います」
(取材・文=水野幸則)