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小説家デビューしたラランド・ニシダが三度目の正直で『源氏物語』読破「男子校の部室トーク感が好き」
近所の中華屋のおすすめメニューを見ると光源氏の死を思い出すニシダ 「まさに読書に残された特権」
渡辺僕も学者さんのお話を伺っていて、耳慣れない言葉や概念だらけでした(笑)。でも逆に理系の方には、こうしたアプローチから『源氏物語』に興味を持ってもらえるかもな、と。『源氏物語』って“日本文学の最高傑作”と言われてたり、そもそもが古典なのですごくハードルが高いイメージがあるじゃないですか。でも本当はすごく間口が広い作品だし、この本ではたくさんの入り口を提示したいなと考えたんです。
ニシダ僕もその面白さに気づくまでに冒頭の2帖でうろちょろしましたけど、そこを乗り越えて5帖に入ったあたり。光源氏と若紫が出会うパートから「おっ、来たぞ」とワクワクしてきました。
渡辺たしかにあの辺でメインキャラが一通り登場して、古文の授業とかでなんとなく知ってる物語が動き出す。漫画『ONE PIECE』も麦わらの一味が勢揃いしてから本格的に物語が動き始めますし、『源氏物語』の偉大なる航路への船出をしたわけですね。
ニシダかといって、スラスラ読めたわけじゃないです。めちゃ面白くて夜更かしした帖もあれば、イマイチ響かなくて飛ばし読みした帖もあって。でも54帖を読了したところでようやく「そうだったんだなあ」とわかったことも確実にあったし、半年くらいかかりましたけど、読み切って本当に良かったなという達成感でいっぱいです。
渡辺読み飛ばしもぜんぜんアリだし、なんならWikipediaのあらすじがすごく優秀なので、わかりにくい帖はそれでチートしてもいいと思うんです。それに関連して一つ伺ってみたいのですが、ニシダさんも読了に半年かかったって言いましたけど、その間、光源氏が常に自分のそばにいるような感覚ってなかったですか?
ニシダありましたね。光源氏が死んだあたりかな、近所の中華屋さんで読んだんですけど、今でもその店のおすすめメニューとか見ると「そういえば、あそこで(光源氏が)死んじゃったんだよな」とか思い出すんです。
──大河ドラマは全45話前後が多いです。『光る君へ』と共に1、2帖ずつ読み進めるという読み方はいかがでしょうか?
渡辺いいと思います。ただ、すべての帖が同じくらいのボリュームではないんですよね。それこそ冒頭の1〜2帖はだいぶ長いので、そこはちょっと根気が必要かもしれないです。
ニシダかと思えば、5ページくらいで終わるボーナスステージもあったり。
渡辺たしかに11帖の「花散里」とかはボーナスステージかもですね(笑)。ただ、楽しみ方は本当に自由でいいと思うんです。それこそめちゃくちゃ好きな1帖と出会えば、それだけで『源氏物語』に詳しいぞってドヤっていいと思いますね。
(取材・文/児玉澄子)
『みんなで読む源氏物語』
(ハヤカワ新書刊)