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サーティワン、日本上陸50周年 貫く「アイスクリーム専門店」としての姿勢、“半世紀一強”の勝因とは
「ハードアイス」「チョコミント」を定着させた功績、現在に至るアイス市場拡大に大きく貢献
「当時の日本にソフトクリームはあったものの、ハードアイスクリームはまだ珍しかった時代でした。市場に出回っているフレーバーと言えば、バニラ、チョコ、ストロベリーくらいしかなく、店頭に色とりどりのアイスクリームが32種並ぶ光景は、当初から驚きを持って迎えられたようです」(マーケティング部 ・御園生久美さん)
サーティワンの上陸によってハードアイスクリームが普及し、『チョコレートミント』に代表されるように、新たな味覚が日本人の舌にも浸透した。さらに、コーン、ワッフル、シングル、ダブル、アイスクリームケーキなど、多様な食べ方が定着。ソフトクリームと違い、テイクアウトができる点も、アイスクリームの消費機会を増やし、市場を大きく広げることとなった。
「ハーゲンダッツ」に「コールド・ストーン」も… 消えゆくアイス専門店の壁
しかし、1994年に全国95店舗を展開していた「ハーゲンダッツ」の路面店は2013年に全滅。それと入れ替わるように一世を風靡した「コールド・ストーン」も、2014年に34店舗まで広げていたが、昨年残るは2店舗にまで縮小していた。
街中には、クレープやタピオカ、パンケーキ、パフェ、ドーナツなど甘い誘惑に溢れ、当然これらは全て客を奪い合うライバルとなる。中でも、“夏”のイメージが強いアイスクリームを、年間通して提供する専門店のハードルは高いのだ。激戦を勝ち抜くために、流行りのメニューを随時取り入れ、“何でも屋さん”になっているスイーツ店も多いが、あくまでサーティワンは“アイスクリーム専門店”としてのスタンスを50年間守り続けている。
当初はトレンドに敏感な若者をメインターゲットに据え、2000年までに400店舗にまで拡大。以降はスーパーやショッピングモールなどの商業施設へ出店し、ファミリー層へも訴求。毎年100店舗ずつの驚異的ハイペースで増大し、2010年に1000店舗を達成。現在もその規模を維持している。
「春はいちごなどの季節物、夏はシャーベットやフルーツ系を多くラインナップし、冬はキャラメル系や濃厚な味わいのアイスクリームを提供するなど、季節ごとに10〜12種類を入れ替えています。また、抹茶や大納言あずきのような日本オリジナルのフレーバーも取り入れながら、これまで全世界で1300種類以上のフレーバーを発売してきました」(マーケティング本部長・若林翌さん)
3ヵ月限定の予定が、凄まじい勢いで売れたために2週間で品が足りなくなる状態に。テレビCMも放映しておらず、SNSもなかった時代に、口コミで広がった。味への飽くなき追求が実を結んだ一例と言えるだろう。
過去最高売上の背景に男性シェア拡大? テイクアウト強化で“店に入りにくい層”も囲い込み
コンビニやスーパーでもプレミアム感のあるアイスクリームが立ち並ぶようになった一方で、小売市場は長年伸び悩んでいた。さらにコロナ禍で多くの企業が打撃を受けたが、サーティワンはこの窮地を逆手に取り、果敢に攻めの経営を見せた。
加えて、昨年度は新店舗デザインへの全面改装を243店舗実施。これらリニューアル店舗の売上増大やマーケティング施策などが後押しをして、昨年度は過去最高売上を記録。今年の上半期も売上高を昨年比12%伸ばしており、さらなる記録更新に向け邁進している。
(取材・文=辻内史佳)