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ふるさと納税の普及で寄付額が12年で1万倍になった地域も 地元の“普通”を“価値”に変えた歩み
コロナ禍で大きく効果があった「ふるさと納税」緩和後が“体験型返礼品”に注目
人気の返礼品は魚介類や肉、フルーツだが、「ここ数年で変化が起きている」と、同社担当者の大場さくらさんは語る。
「コロナ禍以前は普段購入する機会が少ない高級なお肉やお魚が多かったのですが、近年では食用油やお米、トイレットペーパーやティッシュペーパーなどの日用品、物価高で象徴的な卵への寄付も上昇しているなど、世相とリンクした変化があります」
さらにはコロナ禍自体も大きく関与した。それにより提携自治体の約半数が昨年度比150%以上の寄付額増加を得たという。
そしてコロナ禍により行動規制などが緩和された現在増えているのは、地域体験型の返礼品。食事券や温泉郷宿泊利用券のほか、旅行をしつつ現地でさまざまなことが体験できるアクティビティ型のものが人気となりつつあるという。
「ふるさと納税」うまく活用できない…悩む自治体をいかにアシストするか?
「2014年頃は、寄付金をいただくと自治体職員さんが商店へ行って商品を購入し、それを自分たちで梱包、配送業者を呼んで送るという流れがあったのですが、それらを本来の業務と並行して対応されていたのです。素晴らしい制度ながら時間も手間もかかるというところで、我々がそれらの作業をすべて引き受けることで、地域サービスや魅力の向上、集まった寄付金の使いみちなど本来の業務に時間を割いていただけるのではないか、と考えました。そのような背景から、ふるさと納税サイトの運営にとどまらず、返礼品の選定や在庫管理、配送手配、問い合わせの対応、それらをすべて一括で請け負うサービスを業界で初めて開始しました。」
2014年当時、『ふるさと納税』が始まって6年経っていても同制度についてあまりよく知らない自治体や事業者が多かった。そこで、同社は地道に現地へ足を運んでコミュニケーションを取り関係性を深めていくことで、徐々に対応自治体を増やしていった。
それに伴い、西日本営業所、九州営業所、北海道営業所と営業所を全国に拡大。to Bだった事業所がto Cに挑戦するための手助けなど、自治体、事業者に寄り添った施策を重ねていくことで、自治体や事業者と共に二人三脚で大きくなっていこうという思いでここまできた。
ふるさと納税制度のターニングポイントとなったのが、2015年からはじまったワンストップ特例制度だ。条件を満たしていれば確定申告をする手間が省ける制度で、この年度から「ふるさと納税」全体の受入額、受入件数は4倍ほどになった。さらにさとふるでは、2016年の熊本地震のタイミングで「ふるさと納税」を通じた災害支援寄付を実施し、同社および「ふるさと納税」の認知度や利用者増加にもつながった。
「地元の方にとっては“普通”でも、外部の我々から見れば価値あるお礼品がある」
同社含め業界全体でそういった課題解決への地道な施策を実施し、自治体自身の取り組みの効果も表れた結果、有田みかんで有名な人口約3万人の和歌山県有田市にいたっては、12年で寄付額が1万倍以上に。2019年度で約35億円の寄付金が全国から寄せられるなど、「ふるさと納税」は徐々にその認知と効果を上げ始めている。
さらに2016年からは、テレビCM、また現在はWebでのキャンペーンも行い、さらなる認知を目指す。しかしながら、「ふるさと納税」の本懐はあくまで地域活性。同社は地域に寄り添い二人三脚でサポートすることで、地域を応援する人が増えていくことを目指している。
そんななか、同社の調査では、自治体が寄付者に期待することとして62.9%が「地域への訪問」と回答したという結果も出た。
「自治体によっては、特産品がないと悩まれていることもございます。ですが自然体験のアクティビティであったり工場見学であったりと、場合によっては私たちが一緒に開拓するところからお手伝いをさせていただいています。地元の方にとっては“普通”のことでも、外部の我々から見れば価値のあるお礼品がある。昨年から提供を開始した電子商品券型のお礼品「PayPay商品券」も現地で体験を楽しめるお礼品の一つで、寄付した地域に実際に訪れ、現地でPayPay商品券を利用することで、グルメ、ショッピング、アクティビティなどを楽しめます」
それでも今後の課題は、やはり「制度を利用するハードルの高さ、認知度にある」という。
「まだ『ふるさと納税』を始められてない方にはじめていただくことは地域を応援する人を増やすことにつながります。弊社としてはより制度自体を気軽に参加できるよう、都市地方関係なく経済が活発になるよう、努めていきたいと考えております」
(取材・文/衣輪晋一)
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