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(更新: ORICON NEWS

22歳で統合失調症患った女性、「関わりたくない」周囲の声…当事者が明かす偏見への想い「皆さんと一緒に生きたい」

 「周囲に監視されている」「隣の人の貧乏ゆすりは私への暗号」など、統合失調症の症状を赤裸々に説明するHimacoさん。22歳で発症し、28歳の今も病と戦いながら、社会復帰への道のりを模索している。100人に1人は発症するとの病気だが、症状は人によって様々。突然大声で叫んだり、妄想が聴こえたりする症状もあり、「何をするか分からない」「関わりたくない」という世間の偏見から守るために、病気を公にしない家族もいるという。Himacoさんは、自身の経験をSNSや著書で広く情報発信しながら、「治療を受けながら暮らしているので、みなさんと一緒に地域で生きていきたい」とメッセージを伝えている。

「ニュースで自分のことを話している」妄想で広がる色鮮やかな世界

 統合失調症の症状は、人によって様々だ。22歳の頃に統合失調症を患ったHimacoさんは、病気が進行した当時の様子を次のように語る。

「栄養士の仕事をしていたんですけど、日々を過ごす中で“過敏”な心を整理するために日記を始めたんです。日記を綴りながら人生を振り返っていたら、だんだん夢中になっていって、食事や眠ることも惜しむようになっていきました。その作業がすごく楽しくて、眠らず食べず…というのを数ヵ月。それなのに、いつも以上に頭が冴えている感覚で、家族に『大丈夫?』と聞かれても『え? 何で? 元気やでー』と答えていました」

 不調に気付かず“充実”した日々を感じながら、思考はどんどん飛躍していき、次第に不思議な感覚に陥っていったという。テレビのニュースでアナウンサーが自分のことを話していると思ったり、外出先で周囲から監視されていると思い込んだり、電車で座っている隣の人の貧乏ゆすりが自分への暗号だと受け止めたりした。周囲のすべてが敵に思えて不安に感じる一方、自身の思考と外の出来事がリンクする感覚は「奇跡の連続だった」という。のちにこの症状が、「統合失調症」という病気であると診断された。

「診断後にわかったことですが、脳が勝手に小さな情報を拾って、意味を発見して、ストーリーを作ってしまうという状態でした。自分が病気だと認識して、まず感じたのは喪失感。というのも、監視されたり悪意の目で見られたりしているときは怖いし不安なんですけど、みんなが私に注目している状態は、自分が特別な存在に思えて、気分が高揚していくことも多かったんです。それらが全部、病気のせいだったんだと思った途端、鮮やかな世界が一気に色褪せてしまったような、寂しい気持ちになったことを覚えています」

症状に加え異様な疲れやすさも…同世代と同じように働けない負い目

 Himacoさんはもともと、精神疾患に対して偏見を持っていたという。遠い世界にいるおかしな人がなる病気だと思い込んでいたこともあり、診断に驚きを隠せなかった。

「『統合失調症にはなりたくない!』なんて思ったこともあったので、『まさか自分が?』と驚きました。でも自分がこの病気を患って、その考えが間違いだと気づいたんです。一方で、診断されて奇異な症状に病名が付いたことで、ホッとした気持ちもありました。ただ、中には病名を受け入れられなくて、治療を拒んでいる人もいらっしゃるようです。ネットなどでは、キツイ言葉で揶揄されたりすることもありますから…」

 症状のため栄養士の仕事は退職。その後、社会復帰を試みるも、なかなか難しかった。

「薬を飲んで症状が安定してからも、体調を崩すことが続いて、異様な疲れやすさもありました。同級生や同世代の人と同じように働けないことが一番つらかったです。家族は『ゆっくり休めよ』と言ってくれますが、申し訳ない気持ちのほうが強くて…。働けない自分への負い目で本当に苦しかったです」

 それでも前に進むために、自治体の相談員と話し合いながら、ステップを踏んで社会復帰への指導を受けた。現在は、自立訓練のための福祉施設に通いながら、少しずつ将来を考えられるようになってきた。

「家族や病院の方、福祉の支援員さん、いろいろな方に支えてもらったから、今、こうして穏やかに暮らせていると感謝しています。ただ、症状を持つ方の中には、家族に理解がないとか、病院の先生との相性がよくないなどという方もいます。もともと私は、自分からいろいろな人に聞いたり、飛び込んだりするタイプなのですが、他者に相談しづらくて困っている方もいると思います。私自身は恵まれている方で、そのような方たちもいることを知ってもらいたいです」

「別」に扱うのではなく、「脳の調子を崩して、大変だな」という視点を持ってほしい

 Himacoさんの願いは、統合失調症への理解が進むこと。病気が正しく伝われば、診断を受け入れる患者も増えるのではないかと希望を抱く。そのために、自身の症状やそのときの心境、社会復帰へ進む道のりなどを、Twitterや絵本などで、イラストとともに発信している。4月には、コミックエッセイとして綴った『今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる〜統合失調症の私から世界はこう見えた〜』(KADOKAWA)を発売した。水彩画タッチの優しい絵柄と、登場人物の表情が柔らかく、読者から反響が続いている。

「昨年の6月にも調子を崩して入院したのですが、そのときに同じ病気の方々とお話する中で、『地域で暮らしている私たちを、多くの人に身近に感じてもらいたい』という情熱が湧いたんです。それで、退院した直後から描き始めました。伝わりやすく、かつ読者が苦しくならないような表現を心がけたのと、統合失調症の症状は人それぞれなので、私が統合失調症の代表みたいな位置づけにならないように心掛けました。困っている心の動きを描くことに重きを置いて、病気を身近に感じてもらえたらと思っています」

 統合失調症は、症状が気分や言動に左右されることから、人間関係に直結する病気とも言える。5月24日は「世界統合失調症デー」ということで、世界中で「統合失調症」についての情報が飛び交う日。Himacoさんは社会に、どんなことを望んでいるのか。

「大声を出して近所を歩き回って、周囲の方々に恐ろしい思いをさせてしまったこともありました。また、統合失調症には様々な症状があって、意欲が湧かなくて身体が動かしづらいという陰性症状の方もいます。 私は、怖がらないで受け入れてほしい、と伝えたいわけではありません。それよりも、私たちを『別』に扱うのではなく、『人間が脳の調子を崩したんだな、大変だな』という視点を持っていただけたらありがたいです。何をするかわからない、関わりたくないと思っている方もいらっしゃると思いますが、薬を飲んで治療を受けながら暮らしているので、みなさんと一緒に地域で生きていきたいです」

【作品紹介】
『今日もテレビは私の噂話ばかりだし、空には不気味な赤い星が浮かんでる〜統合失調症の私から世界はこう見えた〜』(KADOKAWA)(外部サイト)
発売日/配信日:4月20日
定価:1320円(本体1200円+税)

【Amazon予約】(外部サイト)
【紙書誌版】(外部サイト)
【電子版】(外部サイト)

100人に1人が罹患すると言われる 「統合失調症」。決して珍しくはない病気だが、幻覚や極端な妄想など、症状が通常の精神状態からはかけ離れているため、その理解は必ずしも進んでいるとは言えない。発症した時、本人の脳内はどんな混乱状態になっているのか? この本は、まさか自分が統合失調症になるとは思っていなかったという著者のHimacoさんが、自らの闘病から社会復帰の過程までを、繊細かつ優しいタッチで描いたコミックエッセイ。

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