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広がる『家電レンタル』 “お試し”利用の急増、「買う」より「借りる」時代に?

 この時期新生活を始めた人のみならず、幅広い層に今、「家電レンタル」や「家電サブスク」が広がっている。サービス自体は20年ほど前からあり、主にひとり暮らしや単身赴任層に利用されてきた。しかし昨今では、ロボット掃除機やプロジェクター、キッチン家電など、高額な最新アイテムを“お試し”で使うために利用する人が増加。コロナ禍での在宅も追い風となり、テレワークや美容フィットネス用品も需要を伸ばしているという。単身者や高齢者が増える中、家電は「買う」より「借りる」時代となっていくのだろうか。

家電トレンドは“必需品”から“嗜好品”に、最新モデルお試しや「セカンド冷凍庫」ニーズも

 これまでの「家電レンタル」は、単身赴任や社宅、家を建て替える際の仮住まい用などで、 “一時的に利用する物を安く借りる”という用途が主流だった。また、送料が無料でも返却は消費者負担であったり、返却方法が面倒だったりと様々な問題点が。“返しづらくしたほうが儲かる”というレンタルサービスの仕組みがネックとなり、利用層が限定される事業に収まっていた。
 そこで独自にルールを構築し、新規ユーザーを開拓したのが『Rentio(レンティオ)』だ。それまで電話やFAXでの受注が多かったレンタルサービスとは一線を画し、8年前にECサイトでのサービスを開始。また、実質的な「送料無料」を実現し、保険料などのオプション料金は追加不要、過失のない故障に対して賠償費用の請求なしという制度を整えた。

「最初はそもそもニーズがあるのか不安でしたが、サービス開始後思ったよりも反響をいただけて、2人で立ち上げた会社で月商50万〜100万ぐらいになりました。当初はチェキやゴープロ、360度カメラなど、9割がニッチなカメラのレンタルサービスで、20代の方に多く利用いただいていましたね」(レンティオ代表取締役社長・三輪謙二朗氏/以下同)
 コロナ禍を経てカメラなどの外出時に必要な物の需要がなくなる一方、在宅時間の増加により、家時間を充実させるアイテムの利用が増加。テレワークに必要なPCモニターやパソコンを始め、家で食事をする機会が多くなったことによる調理家電のニーズや、美容家電などが大きく数字を伸ばした。ジムに行けなくなったことで、フィットネス系用品の利用も増加した。

「一時的な利用のレンタルで人気なのは、冬の間だけ使うヒーターや、高圧洗浄機、ビデオカメラなど。一定期間試してから買うタイプではシャワーヘッド、サブスク型の購入ではルンバやホットクックが人気です。若い層に人気なアイテムは、スマホで玄関の鍵を施錠・開錠できるスマートロックや、プロジェクターですね」
 新生活を始める大学生など、テレビを設置せずプロジェクターで動画を観る層も増えているが、やはりこちらも買う前に自分の部屋での相性を確かめたいアイテムだ。全体的には35歳〜55歳の利用が多く、ファミリー層からの需要が高い。医療やベビー用品などその時期しか使わない物のほか、最近では家庭用の冷凍庫も人気を伸ばしているという。

「コロナ禍を受けて、冷凍麺から冷凍パン、冷凍弁当など、各社が冷凍食のラインナップを広げていますが、冷凍食品を買いだめすると、自宅の冷凍庫がパツパツになることも多いですよね。“セカンド冷凍庫”があればプラスでかなりの量保管ができるので、生活がかなり楽になるという声を頂いています」

毎年最新モデルが発売される家電業界…大量生産・大量消費から抜け出す「レンタル」という選択

 当初はニッチなニーズを狙っていたというが、徐々に取り扱い商品を増やすにつれ、利用目的が変化。カメラのように返す前提の一時利用だけでなく、高額なハイテク家電を「買う前に試す」という目的に。スポット的な利用から、購入前のお試しに変わったことで、メーカーにも大きなメリットが生まれ、様々な企業との協業ができるようになった。

 例えば、ロボット掃除機について、サービスを利用した人のうち、購入意欲がある人が7割を超える結果が出ている。同社では、こうしたデータもメーカーに提出して相互作用を生み出せる強みもある。また。サービスがさらに大きく伸びるきっかけになったのは、'20年に導入したサブスク型の購入制度だ。

「レンタルを繰り返すうちに、10万円の商品に20万円お支払いいただくことになってしまう方もいて。であれば、どこかで期間を区切って、それ以降は差し上げますという形にした方がいいのではと考えました」
 高額な家電は特に、一気に支払わなくてもいい手軽さと、途中で返してもいいという安心感が大きな魅力。試しにレンタルしても、使っていないと感じたらいつでも手放せるため、“やめられる分割払い”という感覚が人気の理由だろう。当然、ビジネスとしてはレンタル料を払い続けてもらう方が儲かる。しかしレンティオは、“多少損してもお客様にとって良い”という理念を念頭に置き、あくまで顧客に寄り添ったサービス展開で、着実に利用者数を伸ばしてきた。

 そして現在、同社が取り扱う家電の数は、掃除機や照明など生活に必要な家電はもちろん、コーヒーメーカー、ホットプレートなどのキッチン家電、医療やベビー用品など、3300種類以上、18万点に上り、月間の利用者数は11万人を突破。1人でも要望があった家電は、積極的に取り扱ってきたという。
 また、自動調理鍋や食洗機など、新しいモデルが毎年発売されるのも家電の特徴。実際には機能がほとんど変わらない場合も多いが、常に最新型を使いたいがために、レンタルを利用している人もいるそうだ。

「購入に迷いがなければ、もちろん買った方がいいと思いますが、シャワーヘッドやドライヤーなどの美容家電は、自分の肌や髪質に合うかを試してから選んだほうがいい物もあります。購入を悩んでいるかどうか、そして使う頻度や使用目的も、レンタルを利用する指標になると思います」
 一度レンタルされたものは“中古”という扱いになり、現在、取り扱う商品の新品に当たるのは2割ほど。三輪社長は、「ゆくゆくは新品との垣根をなくして、中古という概念をなくしたい。そのほうがサステナブルだと思うので」と、展望を語る。

 これまで家電のニーズやトレンドは、量販店によってコントロールされてきたところが大きい。しかしレンタルサービスが広がることで、間に介する業者がなくなり、メーカーと消費者の距離がより近くなるのも大きな変化だ。いつでもやめられるサブスク型の利用は、若者やファミリー層だけでなく、終活を考える高齢者にも処分の手間を省く便利なサービスになるに違いない。大きな可能性を秘めたレンタルサービスの今後に注目したい。


(取材・文=辻内史佳)

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