• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
  • ホーム
  • ライフ
  • <僕を可愛がってくださった皆様へ>…「猫からの手紙」が生んだ、住民との心の交流にほっこり
ORICON NEWS

<僕を可愛がってくださった皆様へ>…「猫からの手紙」が生んだ、住民との心の交流にほっこり

  • 保護された猫・パン君から住民への手紙(写真:ねこけんブログより)

    保護された猫・パン君から住民への手紙(写真:ねこけんブログより)

 練馬区のある施設の木に、“猫からの手紙”が貼り出された。タイトルは<僕を可愛がってくださった皆様へ>。もともと地域猫として見守られてきたこの猫が、ケガをして保護され、新たな家族を得るまでこの手紙は続き、住人たちからも返事が届いた。地域猫をめぐる住人との温かい交流について、NPO法人『ねこけん』代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

「ケガした猫を助けて!」住民たちから通報、地域猫を心配する声が相次ぐ

  • 保護されたときのパン君

    保護されたときのパン君

  • 保護後、ねこけんで手紙を貼り出した(写真:ねこけんブログより)

    保護後、ねこけんで手紙を貼り出した(写真:ねこけんブログより)

 パン君は、『ねこけん』の地元、東京都練馬区のある地域施設の周りで暮らしていた猫。白黒のちょっぴり地味な出で立ちの猫だが、周辺の人々から愛され、ゴハンをもらって生活していた。かつて、『ねこけん』はこのあたりで大規模なTNR(飼い主のいない猫を捕獲し、不妊去勢手術を施し、元の場所に戻す)を実施しており、パン君もその際に去勢手術を受け、同じ場所に戻された猫なのだという。

 そんなパン君が、あるとき首に大ケガをし、血をにじませてうずくまっていた。2017年のことだ。

 「当時、『猫がケガをしている』『なんとか保護してほしい』といった通報が、何件も何件も寄せられました。それだけ、周囲の方々から心配された猫なんでしょう」

 地域猫といえば、管理がずさんだと他の住民とのトラブルにもなりかねない存在ではある。だが、その周辺は餌やりさんによってしっかりお世話・管理が行き届いていたおかげか、近隣の人からの苦情はほとんどなかったという。飢えた猫がゴミを荒らすようなこともなく、TNRを実施したため繁殖して頭数が増えることもない。そんな環境だったからこそ、多くの人がパン君ら地域猫を可愛がり、心配してくれたのだろう。

 通報を受けた『ねこけん』は、無事にパンくんを保護することになった。

 「パン君はひどいアレルギー性の皮膚炎でした。獣医さんによると『家の中に入れたら治るかもしれない』ということだったので、保護して室内でケアをすることになりました」

 さらにパン君が元いた場所に、心配する近隣住民に向けた“パン君からの手紙”を貼ることにした。

 <僕は今、入院して傷の治療をしています。心配かけてごめんなさい。命に別状はありませんので、安心してね。いつも可愛がってくださり、ありがとうございます。
白黒の猫より 代筆 NPO法人ねこけん>

 「手紙を貼ったのは、パン君への温かい気遣いへのお礼の意味も込めて。また、ゴハンをあげて世話している猫が急にいなくなったら、とても不安になりますよね。車にひかれたんじゃないか、病気で苦しんでいるんじゃないかって。その気持ちはすごくわかるので、保護されて治療していることを伝え、安心していただきたかったんです」

「ありがとう、感謝!」住民からの温かい返事、最後の“手紙”は――

現在は家族の元で幸せに暮らすパン君(写真:ねこけんブログより)

現在は家族の元で幸せに暮らすパン君(写真:ねこけんブログより)

  • 住民からの感謝の返事と、パン君の最後の手紙(写真:ねこけんブログより)

    住民からの感謝の返事と、パン君の最後の手紙(写真:ねこけんブログより)

 そして、その“手紙”は一方通行では終わらなかった。ふたたび経過報告の手紙を貼りだすと、ある日、住民からの返事が記されていた。

 <姿が見えなくなり心配していましたが、治療うけさせてもらっていたと知り安心しました。ありがとうございます。 近所のおばさん>

 さらに、パン君が正式に『ねこけん』の保護猫となったことを報告すると、<ありがとう、感謝>の文字が。時間が経っても、変わらずパン君を想う住民たちの温かい気持ちが伝わってくるようだった。

 「このような交流があることは、本当にありがたいですね。この地域の餌やりさんがしっかりお世話と管理をしてくれていたから、猫たちを見守ってくださる方が増えたのではないかと思います。しかも、手紙はパン君が元いた地域施設付近に貼っていたのですが、区の職員さんも温かい目で見てくださり、はがさずにそのままにしてくださったようです」

 そして今年。『ねこけん』の代筆で<僕を可愛がってくださっていた皆さまへ>という新たな手紙が貼り出された。そこに書かれていたのは、パン君が保護猫生活を終え、<本当の家族>を得て平和に暮らしていること。楽しく、元気で、健康であること、幸せに過ごしていること。最後には、<皆さんも、お元気でお過ごしくださいね>という住民たちへの温かい思いが綴られていた。

 なかなか家族が見つからず、長い間シェルターで暮らしていたパン君。面倒見が良く、ほかの猫たちから兄のように慕われる優しい猫だった。現在は、新たな家族となったボランティアメンバーの家で、仲間に囲まれ幸せに暮らしている。遠くから見守っていた住民たちも、手紙を通じてパン君の状況を知り、ホッと胸をなでおろしていることだろう。


■NPO法人『ねこけん』(外部サイト)

■『ねこけん』オフィシャルブログ(外部サイト)

あなたにおすすめの記事

 を検索