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(更新: ORICON NEWS

「SNS疲れ」にカウンター? TikTok日本上陸から5年、多世代支持の裏に“日常発信”からの解放

 今年、世界35億ダウンロードを突破したTikTok。日本では2017年にサービスを開始し、翌年から若年層を中心にヒット。瑛人やYOASOBI、山之内すず、景井ひななどのブレイクを呼んだ。いまや“TikTok売れ”として、若者だけでなく幅広い世代の間で圧倒的な経済的影響力も放つ同プラットフォームの急成長の秘訣とは。

フォロワー数が少なくても“バズ”を生める、独自のレコメンドシステムで空前のユーザー拡大

 TikTokは、数秒〜最大10分までのショート動画を投稿・共有・視聴して楽しむショートムービープラットフォーム。大多数のユーザーが、自身の関心をベースに「おすすめ」フィードに流れてくる様々な動画コンテンツを楽しんでおり、繋がりのある知り合いや特定の人の情報を消費する従来のSNSとは根本的に異なる仕組みだ。

 現在、世界の月間アクティブユーザー数は10億を超えている。これまでも数多くの動画プラットフォームが世界中にあった中で、急速にユーザー数を伸ばしていった理由は何だったのだろうか。TikTok Japan運営チーム責任者の佐藤友浩さんに聞いた。

「TikTokではユーザーが投稿する動画から様々なブームが自発的に生まれていますが、その背景にある当プラットフォームの特徴として“高い拡散力”が挙げられます。その強さの要因となる機能面の3つの特性には(1)TikTok独自のレコメンドシステム、(2)短尺動画の優位性、(3)拡散するための豊富な機能や施策が挙げられます」

 1つ目の「レコメンドシステム」とは、ユーザーが未知の商品や人を知る=送り手が新規のファンにリーチできる、TikTok最大のアドバンテージの1つだ。「おすすめ」フィードを見るユーザーが大半である同プラットフォームでは、フォロワー数が少ないユーザーや始めたばかりのユーザーがいきなり大きくバズる動画を生むことも珍しくはない。

 基本的には、全ての投稿は一定数のユーザーの「おすすめ」フィードに表示され、いいねやコメントなどの良いリアクションが得られれば、より多くのおすすめフィードに表示されるシステムとなっている。

 2つ目の「短尺動画の優位性」は、YouTubeとの差別化に成功した大きなポイントでもあるだろう。短い時間に楽しめるコンテンツが集約されているため、移動や待ち時間などの隙間時間に楽しめるという点は、時短・効率志向の高い現代人にヒット。YouTube も2年前にショート動画機能を追加し、来年から収益化が発表されたが、これはTikTokブームの影響がなかったとは言えないだろう。
 そして、何よりTikTokの影響力に繋がっているのが「拡散施策」だ。例えば、ハッシュタグ「#〇○」をタップするだけで、同じ系統の動画が見られる。TikTok Japanの運営側で毎日複数の“ハッシュタグチャレンジ”を企画したり、企業を巻き込んだハッシュタグチャレンジも積極的に実施したりしている。その他、エフェクトやスタンプ、編集機能など、機能面でも拡散をサポートするものが多数存在しているのだ。

“ミーム文化”で若者にヒット、“TikTok売れ”相次ぎ多世代へ…リバイバルヒット現象も

「当初TikTokでは主に数秒〜数十秒の短い動画が大半を占めたため、それをまねするハードルが高くありませんでした。そこで、元ネタのコンテンツと同じテーマで同じ楽曲などを使った動画を作成し、“みんなでまねをして遊ぶ”(ミーム)文化が一気に花開きました。大きなターニングポイントの1つは、2018年頃にこうしたミーム文化に著名人が相次いで参加し始めたタイミングです。ミームを生む側に留まらず、ミームに乗る側としても多くの著名人がTikTokを楽しみ始めました」(佐藤さん/以下同)

 こうしたエンタメ要素の強い“ミーム文化”が流行に敏感な若者の注目を集め、人気を確立。瞬く間にユーザー拡散力を手にし、次第にグルメ、コスメ、ファッション、小説、映画など、様々な商品や分野で“TikTok売れ”が起きた。
 2020年にはシンガーソングライター・瑛人の「香水」がTikTok発で大流行し、その年の紅白歌合戦に出場。また、今年2月には人気振付クリエイターの投稿をきっかけに、1993年にリリースされた広瀬香美「ロマンスの神様」のリバイバルヒット現象も生んだ。

 そうしたムーブメントを通して、ユーザー層は上の世代にも広がりつつある。博報堂の調査によると、2021年時点の日本のTikTokユーザーの平均年齢は34歳。2019年以降、毎年上昇している。

「日々膨大な数のショートムービーが集い、新しいトレンドやムーブメントが誕生し続けており、コンテンツの多様化が急速に広がっています。ダンスやネタ系は今でも人気のジャンルの一つですが、それ以外で代表的なものとしてはVlog、グルメ、レシピ、ペット、カップル、スポーツ、ファミリー、教育コンテンツなどがあります。また、今年はゲームやアニメ、そしてショートフィルムなども増えており、注目されています」
 2020年以降、「ペッパーランチ」「ナチョステーブル」「肉巻きおにぎり」「麻薬卵」など、TikTok発のトレンドレシピも数多く生まれた。また、最近では生活に寄り添う情報として「レビューコンテンツ」の人気が高まっているという。

「“映画感想TikTokクリエイター”や“小説紹介TikTokクリエイター”という単語が生まれるほど、多様なジャンルの『レビューコンテンツ』が増えてきました。背景の一つには、『テキスト読み上げ機能』の導入により、顔出しせずに『レビューコンテンツ』を上げるハードルが下がったことがあるのだと思います。書籍や映画、コスメだけでなく、飲食店や旅行先など、何か行動を起こす際に、まずはTikTokで好きなもの・興味があるものを探してみようという方も増えています」

 コンテンツの多様化に加え、運営側では、TikTok動画をカスタマイズするために使用される「エフェクト」も、月に100種以上のペースで新規追加。そうした常にユーザーを飽きさせない工夫により、平均視聴時間も伸長している。

郷ひろみ・和田アキ子も開設、若者・シニアが横並びでムーブメント生む貴重なツールに

「最近では80代のおばあちゃんと30代の孫で動画投稿を楽しむ『南の島のおばーと孫』や、80代のおばあちゃんが畑仕事をしたり料理をしたりする動画を投稿する『栃木のマサ婆ちゃん』など、何気ない日常や世代間交流がコンテンツとなっているシニアクリエイターも人気です。郷ひろみさんや和田アキ子さんなどのスターも続々とTikTokを始め、ますます幅広い世代にお楽しみいただいています」
 シティポップが再注目されるなど、上の世代が愛してきたトレンドが若い世代の再解釈によって改めて注目される場にもなっている。若者だけでなく中高年層への認知度が年々高まり、シニアクリエイターも増えつつある中、プラットフォームの健全性・永続性を保つには、「クリエイターの育成」「クリエイターコミュティの活性化」が急務だ。TikTokは昨年、クリエイター支援プログラム『TikTok creator academy』を立ち上げ、今年はフェス型イベント『TikTok Creative Festival』を全国5都市で開催した。

「TikTokのミッションがInspire Creativity and Bring Joy (創造性を刺激し、喜びをもたらす)であるように、特定の年齢層やジャンルにだけでなく、幅広い年齢層とジャンルのクリエイター、コンテンツホルダーのサポートとコミュニティ活性化施策をさらに推し進めて、彼らの創造性を刺激し続けたいです。そして、彼らによって生み出されるコンテンツによって、更に多くの人にTikTokならではのエンターテインメントを届けていきたいです」
 イメージ調査によれば、TikTokは他プラットフォームやSNSに比べてネガティブな印象が少なく、「面白い」「楽しい」といったポジティブワードが多い。「インスタ映え」という言葉が定着して久しいが、それと同時にキラキラした日常をSNSに投稿することが義務化し、今度は「SNS疲れ」が叫ばれるように。そんな中、知り合いやフォロワーに向けた“日常発信”ではなく、気軽に誰でも“エンタメ発信”ができることも大きいのかもしれない。

 先日、ハライチ・岩井勇気がTwitterにて「TikTokのような動画撮らされるの嫌いなんだよなー。世に出回ってる同じフォーマットの動画を創作ゼロで撮らされる所が。」とつぶやき話題になった。芸人の矜持を持った彼の意見としては納得できるが、まさにアイデアや才能に委ねられるだけでなく、同じフォーマットで、誰しもが自己発信もできることにこそ、TikTokの人気の秘訣があるのではないだろうか。

 ショートムービーという初心者でも手の出しやすいフォーマット、フォロワーの数に左右されることのない独自のシステムにより、いまや若者だけでなく、多世代が一丸となって新たなムーブメントやリバイバルを生み出しているTikTok。まさに「おすすめ」フィードのごとく、目まぐるしくトレンドが移り変わっていく現代で、TikTokは“スワイプ”されることなく、三世代に渡り楽しめる貴重なエンタメツールになっていくのだろうか――。

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