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「SNS疲れ」にカウンター? TikTok日本上陸から5年、多世代支持の裏に“日常発信”からの解放
フォロワー数が少なくても“バズ”を生める、独自のレコメンドシステムで空前のユーザー拡大
現在、世界の月間アクティブユーザー数は10億を超えている。これまでも数多くの動画プラットフォームが世界中にあった中で、急速にユーザー数を伸ばしていった理由は何だったのだろうか。TikTok Japan運営チーム責任者の佐藤友浩さんに聞いた。
「TikTokではユーザーが投稿する動画から様々なブームが自発的に生まれていますが、その背景にある当プラットフォームの特徴として“高い拡散力”が挙げられます。その強さの要因となる機能面の3つの特性には(1)TikTok独自のレコメンドシステム、(2)短尺動画の優位性、(3)拡散するための豊富な機能や施策が挙げられます」
1つ目の「レコメンドシステム」とは、ユーザーが未知の商品や人を知る=送り手が新規のファンにリーチできる、TikTok最大のアドバンテージの1つだ。「おすすめ」フィードを見るユーザーが大半である同プラットフォームでは、フォロワー数が少ないユーザーや始めたばかりのユーザーがいきなり大きくバズる動画を生むことも珍しくはない。
基本的には、全ての投稿は一定数のユーザーの「おすすめ」フィードに表示され、いいねやコメントなどの良いリアクションが得られれば、より多くのおすすめフィードに表示されるシステムとなっている。
2つ目の「短尺動画の優位性」は、YouTubeとの差別化に成功した大きなポイントでもあるだろう。短い時間に楽しめるコンテンツが集約されているため、移動や待ち時間などの隙間時間に楽しめるという点は、時短・効率志向の高い現代人にヒット。YouTube も2年前にショート動画機能を追加し、来年から収益化が発表されたが、これはTikTokブームの影響がなかったとは言えないだろう。
“ミーム文化”で若者にヒット、“TikTok売れ”相次ぎ多世代へ…リバイバルヒット現象も
こうしたエンタメ要素の強い“ミーム文化”が流行に敏感な若者の注目を集め、人気を確立。瞬く間にユーザー拡散力を手にし、次第にグルメ、コスメ、ファッション、小説、映画など、様々な商品や分野で“TikTok売れ”が起きた。
そうしたムーブメントを通して、ユーザー層は上の世代にも広がりつつある。博報堂の調査によると、2021年時点の日本のTikTokユーザーの平均年齢は34歳。2019年以降、毎年上昇している。
「日々膨大な数のショートムービーが集い、新しいトレンドやムーブメントが誕生し続けており、コンテンツの多様化が急速に広がっています。ダンスやネタ系は今でも人気のジャンルの一つですが、それ以外で代表的なものとしてはVlog、グルメ、レシピ、ペット、カップル、スポーツ、ファミリー、教育コンテンツなどがあります。また、今年はゲームやアニメ、そしてショートフィルムなども増えており、注目されています」
「“映画感想TikTokクリエイター”や“小説紹介TikTokクリエイター”という単語が生まれるほど、多様なジャンルの『レビューコンテンツ』が増えてきました。背景の一つには、『テキスト読み上げ機能』の導入により、顔出しせずに『レビューコンテンツ』を上げるハードルが下がったことがあるのだと思います。書籍や映画、コスメだけでなく、飲食店や旅行先など、何か行動を起こす際に、まずはTikTokで好きなもの・興味があるものを探してみようという方も増えています」
コンテンツの多様化に加え、運営側では、TikTok動画をカスタマイズするために使用される「エフェクト」も、月に100種以上のペースで新規追加。そうした常にユーザーを飽きさせない工夫により、平均視聴時間も伸長している。
郷ひろみ・和田アキ子も開設、若者・シニアが横並びでムーブメント生む貴重なツールに
「TikTokのミッションがInspire Creativity and Bring Joy (創造性を刺激し、喜びをもたらす)であるように、特定の年齢層やジャンルにだけでなく、幅広い年齢層とジャンルのクリエイター、コンテンツホルダーのサポートとコミュニティ活性化施策をさらに推し進めて、彼らの創造性を刺激し続けたいです。そして、彼らによって生み出されるコンテンツによって、更に多くの人にTikTokならではのエンターテインメントを届けていきたいです」
先日、ハライチ・岩井勇気がTwitterにて「TikTokのような動画撮らされるの嫌いなんだよなー。世に出回ってる同じフォーマットの動画を創作ゼロで撮らされる所が。」とつぶやき話題になった。芸人の矜持を持った彼の意見としては納得できるが、まさにアイデアや才能に委ねられるだけでなく、同じフォーマットで、誰しもが自己発信もできることにこそ、TikTokの人気の秘訣があるのではないだろうか。
ショートムービーという初心者でも手の出しやすいフォーマット、フォロワーの数に左右されることのない独自のシステムにより、いまや若者だけでなく、多世代が一丸となって新たなムーブメントやリバイバルを生み出しているTikTok。まさに「おすすめ」フィードのごとく、目まぐるしくトレンドが移り変わっていく現代で、TikTokは“スワイプ”されることなく、三世代に渡り楽しめる貴重なエンタメツールになっていくのだろうか――。