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目指すは“国産webtoon”の大ヒット、日本のマンガが再び国境を超える日「過去作に新たな価値」生まれる可能性も?

世界的にも高い日本のアマチュア作家のレベル、経済的な不安を解消するために

  • 日本初、世界に発信された『先輩はおとこのこ』

    日本初、世界に発信された『先輩はおとこのこ』

 デジタル環境でマンガを読む流れは、今後も加速するだろう。しかし高橋氏と金氏は「webtoonが既存の日本のマンガ文化とバッティングすることは確実にない」と口を揃える。

「webtoonに積極的に取り組む大手出版社も増えましたが、決して従来のマンガのフォーマットを否定しているわけではありません。出版マンガ市場を維持しつつ、webtoonの可能性をしっかり見据えることが、作家とユーザー双方の最大のメリットであると出版サイドも理解しているからです。その上で、現在は日本でも韓国の翻訳版webtoonが人気を博していますが、日本のマンガ文化を未来に推し進めるには“国産webtoon”の確立、それを担う若手クリエイターの支援が何より重要です」(高橋氏)

 LINEマンガではアマチュアが気軽に投稿できるプラットフォーム『LINEマンガ インディーズ』を運営しており、ここからAnimeJapanの「第5回アニメ化してほしいマンガランキング」1位にも選ばれた『先輩はおとこのこ』(作者:ぽむ)などのヒット作が誕生。現在は、年末に発表される『LINEマンガ インディーズ大賞’22』の応募受付が行われている。

「webtoonが推進された背景には、出版マンガ市場が崩壊した中で、作家に経済的な不安なく創作活動をしてもらいたいという思いがありました。『LINEマンガ インディーズ』も、アマチュア作家に多少なりとも経済面でのフィードバックができるように設計したプラットフォームです。日本のアマチュア作家のレベルは世界的にも高く、日本独自スタイルのwebtoonを確立する上で彼らへの支援は欠かせません」(金氏)

『静かなるドン』『サラリーマン金太郎』がアプリでヒット、変化するマンガ環境

 日本独自スタイルのwebtoonを確立する必要性について、高橋氏はアメコミを例にこのように語る。

「アメコミは日本のマンガのように精緻なコマ割りでストーリーを読ませるのではなく、迫力あるイラストと長めのセリフや解説文で展開するものが多い。こうした特徴から、webtoonにも移行しやすかったのでしょう。ただしアメコミwebtoonは日本の読者にはウケないだろうというのが私の実感です。マンガの未来のためには、やはり日本の成熟したマンガ文化に慣れ親しんだ日本の読者が満足できる、“国産webtoon”を生み出すことが必要です」(高橋氏)

 国産webtoonがどういった姿になるか。それは未知数だが、現行でもフルカラーであるwebtoonだけに、音声やアニメーション入りになるなど「リッチ化」していくことが見込まれる。一方で、過去の出版マンガ作品がwebtoonとして生まれ変わることも、あり得ることだという。

 「最近でも、『静かなるドン』や『サラリーマン金太郎』など、出版されてからかなり時間の経った作品が、今になってアプリでヒットするという現象が見られました。デジタルでは物量の制限がないため、本屋さんに置ききれない過去作も新作同様に読むことができる。ユーザーが求めるのであれば、そうした動きも今後出てくるかもしれません」(高橋氏)

 日本のマンガ文化には、数々の開拓者によって新たな表現が生み出されてきた歴史がある。そして今、webtoonというグローバルに適用するフォーマットが用意された。意欲的な若手クリエイターと彼らを支援するプラットフォームの取り組みで、今なお進化の途上である日本のマンガ文化が明るい未来に進んでいくことを期待してやまない。

(文:児玉澄子)

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