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『六本木クラス』“原作忠実再現”に賛否、「実写化」とは異なる「リメイク」ヒットの壁
『六本木クラス』、『パパとムスメの7日間』、『シコふんじゃった。』… 相次ぐリメイクドラマ
中でも、Netflixで大ヒットした韓国ドラマ『梨泰院クラス』の日本版リメイクとして、放送前から大きな話題を呼んでいた『六本木クラス』。竹内涼真演じる主人公の髪型をはじめ、設定やセリフに至るまで、原作にかなり忠実なストーリー展開に、1話から「本家の再現度が高い」「思いのほか忠実に再現されていてびっくりした」「ホントに完全再現していてすごいと思った」といった声が上がった一方で、「原作には劣る」「韓国版のリメイクすぎる」「日本ならではの良さがない」などの声も多数寄せられた。
そこを『マイ・ボス マイ・ヒーロー』などは『カバチタレ』の原作世界観を“女性主人公”にしてポップに描いた大森美香氏が脚本を務め、その腕を存分に発揮。『SUITS』では、登場人物たちのお芝居をアメリカ風な“ケレン味”を持たせることで、作品にファンタジー感を詰め込んだ。
『六本木クラス』では、平手友梨奈演じる19歳の麻宮葵が飲酒するシーンがあり、日本では違法となることから年齢設定を変え、重要なシーンで描かれるチゲ料理をから揚げに変更。4話では、トランスジェンダーのりく(さとうほなみ)のオリジナルエピソードが描かれるなど、日本風の“マイナーローカライズ”が見受けられるが、これだけ原作ファンが多い作品では、キャラクターやストーリーの大幅な変更は許されないだろう。しかし、忠実に再現すればするほど「リメイクならではの良さがない」「見る意味がない」などとも言われる難しさを孕んでいるのだ。
原作超えるハードル回避? リメイクでも「続編」や「別世界」描いてきた過去作多数
「『パパムス』ではやはり、15年前の新垣結衣×舘ひろしのイメージが強すぎ、『そのキャストでないと意味がない』『リメイクする意味は?』などの声がありました」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。
「一方で、SNSでの反応を見ると『面白い』『前作を見たことがないけど、笑えるし泣けるしいい』といった意見が“若者”中心に多い。『東京ラブストーリー』もリアルタイム世代には敬遠されていたが、実は“若者”にはウケていた。つまり、テレビボリューム層であるリアルタイム世代がそっぽを向いたからヒットしているように見えないというケースもあるのです」(同氏/以下同)
「さらに局側も“大作感”“お祭り感”を醸し出しており、キャストも正月SPドラマのような華やかさ。その特別感がウケていた時代だったという見方もでき、テレビの影響力が薄まった現在に通用するかといったら、かなり可能性は低い。同時に、国内ドラマにそれほどの予算がかけられない今、リメイクドラマのヒットの壁はかなり厚くなっている」
「続編」でも「別世界」でもない、“普遍性”描く庵野監督の『シン』シリーズの妙
「日本の人気コンテンツを自由な発想でリメイクしながらも、『シン』というワードにより、視聴者は“別作品”の暗示をかけられる。それでいて、庵野監督は『シン』の意味について、“『新』、『真』、『神』などの様々な意味を感じてもらいたいという意図を込めて付けた”と、その意味を断定していないがために、作品の位置づけや解釈を任せられた視聴者は何も言えなくなってしまう。つまり、人々は『シン』シリーズを1つの“テクスト”として捉えざるを得ず、賛否どちらの意見も、作品の“場外乱闘”に持ち込まざるを得ないのです」(衣輪氏)
もちろん、元作品に対する他に追従を許さないほどの造詣の深さは外せない。オマージュシーンを入れ込むことで、熱狂的な元作品ファンの溜飲を下げることも効果として絶大。その際に「庵野監督も視聴者と同じペースで歳を重ねて、リアルタイム世代向けに制作していることが面白さの理由に。また、基本ドラマや映画は消費されていくものであり、つまり“当時の世相”を反映していることから、“その時代だからウケた”部分は現在では通用しない。そこを省いた上で、“現代風”ではなく“普遍性”を持たせて描く手法が見事なのです」(同氏)
人気原作が出尽くし、オリジナル脚本でのヒットや話題作りが年々難しくなってきている中、キャストの都合で続編もできないとなれば、国内外のヒット作リメイクは有効だ。しかし、脚本の面白さはまず担保できても、原作をそのまま再現すれば「見る意味がない」と言われ、オリジナリティを入れすぎても原作ファンからの批判を受ける。実写化作品以上に原作と比較されやすいリメイク作品の成功の鍵は、視聴者に『単純な「リメイク」ではない』ことをいかに“納得”させるか、なのかもしれない。
(文/西島亨)