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クイズ知識から“教養とセンス”に回帰する芸能界 『プレバト!!』新たな需要で枠の争奪戦に?
“詰め込み型”知識ありきのクイズではなしえない教養とセンス
その夏井氏に、芸能人たちが作った俳句がボロクソに言われたり、絶賛されたりするのだが、他のクイズ番組と違うところは、俳句には「正解はない」ということ。東大生並みに知識を詰め込めば及第点を得られるというわけでもなく、付け焼刃的な攻略法はない。言い換えれば、誰にでも心に響く「いい俳句」を作ることが出来る可能性があり、これまでの人生で培ってきたセンスが試される場ともいえる。そうした場の中に、芸能人・著名人の挑戦者たち、さらには視聴者たちを夢中にさせる魅力がある。
アイドルや芸人たちの新たな才能の開花を再起をかけた挑戦の場に
また、村上同様、俳句コーナーの常連となっているのがKis‐My‐Ft2の3人であり、名人7段・横尾渉、名人4段・千賀健永、特待生3級・北山宏光とそれぞれ段位を持ち、そのほか立川志らく、堀未央奈、IKKO、森口瑤子等々、意外なほどバラエティにとんだ出演者が挑戦しているのである。
出演権の獲得にも意味あり? 「才能あり」は意外性とハク付けに
しかし、当コーナーのレギュラー以外の挑戦者の面々を見ると、番宣どころか「とりあえず旬の人気者を揃えてみました〜」的なこともない。そもそも番組開始当初からして、すでに芸能界の大御所・ご意見番的なポジションを獲得していた梅沢富美男に対し、普通なら「さすが梅沢さん!」と持ち上げられそうなところを、夏井氏はボロクソにこき下ろす。梅沢は梅沢で「このクソババア…」と憤慨するも、もはやそうした両者のバトルも恒例行事となっていくなど(ちなみに現在梅沢は「永世名人」に昇格)、初めから忖度なしのガチなのである。
そのうえで梅沢は、「毒舌でビシッと焦点を突く夏井のセンスは唯一無二のもの。自分自身の実力は俳句界全体でいったら中学生くらい」と正直に明かしており、俳句を詠むのは『プレバト!!』だけとも宣言し、他の俳句関連の仕事は断わるなど真摯な姿勢を貫いている。
こうしてみると、『プレバト!!』で俳句を詠むことができるタレントは、それなりの振るいにかけられて選別されており、さらに「才能あり」のお墨付きを授与できればタレントとして“箔”がつく一面さえありそうである。
お手本も正解もないバトル 本来の“タレント”の意味を体現する場へ
“タレント”とは「才能」を意味しており、芸能界では「市井の人には成し得ない、浮世離れした(芸能の)才能に富んだ人」の総称として活用されてきたが、本来は重みのある言葉。しかし時代が進むにつれて、“等身大”や“身近”といったキーワードとともに“会いに行ける”ことがウリとなり、タレントと一般人との距離はしだいに近づいていく。
そんな中、優れた創造性を秘めた文字通りの“タレントたち”が、さまざまな傑作を生み出したり、秀でたセンス・才能を表わす場として『プレバト!!』が登場し、視聴者たちに熱烈に支持されている。
そもそも『プレバト!!』は、当初の番組名『使える芸能人は誰だ!? プレッシャーバトル!!』の略称。しかし今では、タレントたちがガチで才能を競い合う希少な“プレミアムバトル”の場と化している感がある。それはタレントたちの失われつつある“原点回帰”の場といえるかもしれないし、近づきすぎた一般人との距離に対する、タレントたちの“逆襲”の場なのかもしれない。