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「俳句は特別な人のものではない」を体現…若者にも浸透させた夏井いつきの功績
瞬間的に劇的添削…あの梅沢富美男すらも黙らせる“愛ある毒舌”
そんな夏井氏の最大のウリは、“愛のある毒舌”。芸能界のご意見番であり、他者を罵倒するイメージさえある梅沢富美男がドヤ顔で作った俳句を、平気で「採点不可!」と切り捨てる。梅沢が「このクソババア…」と不満を隠さず反発すると、「俳句の内容を確認してから文句言え!」とやり込める。偉そうな梅沢がシュンとする姿も痛快で、この夏井vs梅沢が『プレバト!!』人気に火をつけたといっても過言ではないだろう。
アイドルや芸人の新たな才能開花 本気のぶつかり合いで“ウィンウィン”の関係を構築
今や「永世名人」となった梅沢富美男に対しても天敵関係にあるように見えながら、夏井氏は梅沢の本が出版された際、「『義理と人情、そして愛』が、このオッちゃんの心身をつくっている成分なんや」と賛辞を送っている。
実際、タレントたちの多くは“ただのお遊び”“番組内の企画”といった枠を越え、本気で取り組んでいるように見えるのである。立川志らく(名人3段)は『プレバト!!』優先でスケジュールを組んでいることを明かしているし、Kis‐My‐Ft2も楽屋ではずっと俳句の話をしていると公言。出演者たちは、夏井氏に「いい加減にしろ!」「どいつがつくった作品なんだ?」と罵倒されても、ムッとしながら“おいしい”として必死に俳句に取り組む。結果、数字(視聴率)は取れるし、自分の知名度も上がる。夏井氏の毒舌と芸能人の本気の作品は、お互いにウインウインの関係として成り立っているようなのだ。
夏井氏の前ではみな“生徒” 暴言排除される世の中でも炎上皆無
実際、夏井氏に褒められれば出演者たちは本気で喜び、最下位になれば本気で落胆する。タイトル戦の「冬麗戦」を獲った千賀健永などは特待生ながらも号泣し、7月9日放送ではラグビー選手の田中史朗氏が「才能アリ」を獲得し、得意の(!?)男泣きを披露した。さらに梅沢が永世名人を獲得したときは、夏井氏までが涙を見せている。厳しく指導している(されている)からこそ、達成したときは生徒も先生も互いに喜び合う。これこそまさに師弟の関係ではないだろうか。
今では、俳句の楽しさをもっともっと気軽に伝えたいという思いから、公式YouTubeチャンネル「夏井いつき俳句チャンネル」を今年4月に開設し、ご子息とともに登場している夏井いつき氏。初回から「俳句始めてすぐの人が質問を投げてくるけど、くだらないことが多くて。そんなことに私の脳みそと口を使わすなって腹が立つときが結構ある。だから私が楽をするために(YouTube始めた)」と、相変わらずの毒舌を見せつけていた。
しかしそこには、“ジジババがやる高尚な趣味”だと思っていた若年層にも俳句がエンタメになることをしっかりと示し、俳句を楽しむことで誰かの役に立ってほしいという“夏井先生”の愛が見え隠れしているのである。