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(更新: ORICON NEWS

“ご飯のお供”から”料理のお供”に 「桃屋」商品の付加価値を高め、売上増加を牽引

 『ごはんですよ!』と水を合わせると、めんつゆになる…「そばには、海苔が薬味として入るから、一石二鳥です」と話す桃屋の担当者に、記者は驚きを隠せなかった。実際に作ってみると、磯の香り豊かな海苔入りのつゆに、そばが絡んで美味しく食べられるーー。これは同社が開発している『桃屋のかんたんレシピ』によるもので、“ご飯のお供”だった同社の製品が“料理のお供”となり、いかに簡単であるか考え抜かれたレシピだ。意外なところで言えば、『キムチの素』でミートソーススパゲッティやバターチキンカレーも出来てしまう。このレシピ訴求で商品の既存イメージを変えたことが、同社が8年連続増収益を達成した所以だという。

漬物類や基礎調味料が苦戦のなか、8期連続の増収益

 桃屋が設立されたのは1920年。社名の由来は、古来より縁起が良い食べ物だとされる「桃」と、事業が成功するように『吉兆を射る』『お客様の心を射る』という意味を込めて、「矢」を転じて桃屋と名付けた。

 桃屋といえば、『ごはんですよ!』や『キムチの素』が有名だが、実はその販売以前から『味付メンマ』や『味付?菜』を発売(1968年)。『ごはんですよ!』が登場したのは1973年となる。

 そして現在。同社は8期連続の増収増益を重ねている。2019年の出荷金額数を100とした場合、『辛そうで辛くない少し辛いラー油』などの食べる調味料が151%、『キムチの素』関連が114%。どのカテゴリーも伸びており、『ごはんですよ!』は売上的にも同社の大黒柱として堅調に伸びている。和風漬物類や味噌などの基礎調味料が苦戦しているといわれているが、なぜ同社は好調なのか。同社営業企画室の栗山歩美さんはこう分析する。

 「食べる調味料や『キムチの素』などにんにくを使った商品が特に好調でして、コロナ禍で皆さまがマスクをするようになり、匂いを気にせず普段から食べられるようになったことが挙げられます。また健康志向により、キムチ漬けの売上が伸びているとの報道がありましたが、健康意識の面で伸びているところもあるようです」

 さらにここで追い風が吹いた。『桃屋のかんたんレシピ』の開発、それがもたらす新たな商品イメージである。

 「基本的に弊社の商品は“ご飯のお供”のイメージがあり、それだけにとどまらない打開策を考える必要がありました。現在の3代目の社長が就任当時のこと、社長夫妻で試食販売を行っていた時のことです。その時社長夫人が『ごはんですよ!』をチャーハンの調味料として使用する『黒チャーハン』をお客様に提案したところ『そんな食べ方があるなんて知らなかった』と驚き、次々と購入されていったそうなんです。当社の商品が、具材や調味料として料理に活用できることはお客様にとっては新たな発見であるとともに毎日の献立にお役立ちできるのではないか、ということに気づかされ、弊社が発信する新たな商品価値としてレシピ開発に力を入れたのがきっかけとなります」

ネームブランドが先行していた過去、「なぜ美味しい?」社員の商品理解が課題に

 元々、会社としても商品を使ったレシピを保有していたが、美味しい反面、簡単には手に入らない食材や調味料が必要だったり、調理方法が難しいなどハードルが高かった。そこで、料理初心者の方でも簡単に作れるようなレシピ『桃屋のかんたんレシピ』を全社一丸となって考え始めた。

 『桃屋のかんたんレシピ』は、『どこでも手に入る身近な食材だけで作れる』『失敗なくかんたんに作れる』『驚くほどおいしい』という3つを約束している。例えば『黒チャーハン」は、ほぼ通常のチャーハンの作り方に『ごはんですよ!』を調味料として使用。他の調味料は一切使用しない。『黒納豆」も納豆に同商品を入れるだけ。そもそも『ごはんですよ!』にはカツオやホタテの旨味が入っており、調味料としても機能する。意外な食べ方で言えば、先述した通り『ごはんですよ!』を水でとくだけで、蕎麦つゆにもなるのだという。

 「コロナ禍での在宅勤務や内食需要が高まった中で、料理番組にも弊社商品を使ったメニューを取り上げて頂けるようになりました。同時に『赤江珠緒のたまむすび』内コーナー『桃屋のかんたんレシピ』(TBSラジオ)を通してレシピの紹介を行ったり、『スカイロケットカンパニー』(Tokyo FM)では、お客様が考えた秒でできる『秒メシ』レシピを紹介したり。その効果で放送後は弊社ホームページの『桃屋のかんたんレシピ』のページにつながりにくくなるほどの反響を頂いております」

 しかしこの過程で、桃屋にある課題が生まれた。

 店頭でお客様にレシピを提案するには小売業の店頭での訴求が不可欠である。そこで流通各社の賛同を得る営業活動が必要となった。そのためには社員自身が商品の価値や、「桃屋のかんたんレシピ」を自分自身で料理しその美味しさを自覚する必要があった。

「弊社商品をご飯に乗せると美味しい。では、何故美味しいのか、という部分ですね。そのためにも社員自身が改めて原料や製造のこだわりを理解する必要性がありました。そこで全社員向けに商品の製造工程や原料のこだわりが詰まった冊子を作り商品理解を深めることを行いました。

 営業現場はそれを活かしご販売店様向けに弊社商品の様々な価値をお伝えする勉強会を実施しています。その場で『桃屋のかんたんレシピ』の試食を行い、ホームページ上でも公開している、手間と時間をかけて作られる『商品ができるまで』の動画を視聴していただくことで、ご販売店様にも今まで以上に『積極的に売っていきたい』と思って頂けるよう活動しています。おかげさまで大変ご好評いただいており、現在も継続して行っております」

『キムチの素』を“うま辛万能調味料”と表現、商品の付加価値をいかに高めるか

 もし、『桃屋のかんたんレシピ」がなかったら、社員の商品への理解=原点に立ち返ることをしなかったら、「高止まりもあったかもしれない。当時びん詰め商品は競合他社が少なく、そのために危機感も薄れていた側面もある。お客様に価値をお伝えする以前に、自分たちが知っていなければならない」と栗山さんは唇を引き結ぶ。

 こうして社内で商品についての理解が深まり、社員自身も商品の価値を再認識できた。同時に『桃屋のかんたんレシピ」が営業ツールの一つとなり、レシピカードやポスターなどを作成し売り場に設置、店頭で同社商品が今まで以上に売れるように戦略を立てた。

 その一つが『キムチの素』だ。同社は『キムチの素』を“うま辛万能調味料”と明記して販売しており、「桃屋のかんたんレシピ」にも主力商品として登場している。驚きなのが、韓国料理だけではなく、中華、イタリアン、インド料理の調味料としても使用できること。キムチを漬ける、キムチ鍋に使うという基本イメージに加え、さまざまな料理に使える万能な調味料という付加価値をつけられたことが、同社の売上増加を牽引した。

 時代や嗜好の変化に合わせて味や製法を変化させている商品も多いが、同社ではファンの方を裏切らないため、味付けや製法は発売以降一切変えないという。「弊社が重視しているのは創業以来の企業理念である「良品質主義」に基づく“美味しさ“。そこに揺らぎはありません。またもう一つの企業理念である「広告宣伝主義」は、手間と時間をかけて作った価値ある自信作であることを皆様にお伝えしていく、これは初代社長の頃から一貫しています」と栗山さんは語る。

 会社のマークにもある桃と“矢”。「桃屋のかんたんレシピ」は、会社新興の第二の“矢”となるのか。歴史にあぐらをかくことなく新たな取り組みを進め、商品の付加価値を深く広げていく同社の取り組みにこれからも注目したい。

(文/衣輪晋一)
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