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劇団ひとり監督×大泉洋×柳楽優弥が憧れる『浅草キッド』の愛し敬う師弟関係

 映画界では“世界のキタノ”と称され、不動の評価を得てその名が知れ渡っている北野武こと、ビートたけし。漫才ブームをけん引し、『オレたちひょうきん族』『風雲!たけし城』など、新たなお笑いの世界を切り開いてきた“唯一無二の芸人”だ。そんな彼の原点であり、師匠である深見千三郎と過ごした日々を描いたNetflix映画『浅草キッド』が12月9日よりNetflixで世界配信された。

 ビートたけしを敬愛してやまない劇団ひとりが監督、脚本も手がけ、初監督作品『青天の霹靂』(2014年)に続き昭和の浅草を舞台に、2度目のタッグとなる大泉洋、そして柳楽優弥を主演に迎え、笑いと涙にあふれる青春映画を完成させた。

劇団ひとり:ビートたけしに徹底取材

――ビートたけしさんの自伝的小説「浅草キッド」を映画化しようと思った経緯と、たけしさんとはどのようなお話をされてきたのでしょうか?

劇団ひとり原作の「浅草キッド」を初めて読んだのは中学生の頃だったかな、そこに描かれていた世界に魅了されて、それからずっと好きで、長編映画の1本目『青天の霹靂』を浅草で撮ったことにもつながっていたと思うんですよね。次の作品について考えた時に、やっぱり『浅草キッド』を自分の手で映画化してみたいな、と思って、そこから脚本を書き始めました。

 当然、映画化するにあたってたけしさん本人の許可が必要ですし、許可をいただいてからもちょこちょこ仕事でご一緒するたびに話題にしていましたし、CMの現場で長い待ち時間があった時には、ずっとたけしさんに取材していました(笑)。クランクインする直前にも、細かいことなんですけど、やっぱりいろいろ聞きたいな、と思うことが出てきたのでお願いしたら、ある番組の本番前に30分だけ時間を作ってくださって。たけしさんと2人きり、いろいろ聞かせていただきました。

 たけしさんに聞いたのは、当時の浅草の雰囲気とか、当時の芸人のこととか、あとは深見師匠の人となりについてですね。深見師匠はテレビに出ない方だったから、映像資料が残ってないんです。たけしさんにどういう人だったんですか?と聞いたら、「とにかくあの人は照れ屋だったよ」とたけしさんは言っていました。「ほめてもらったことはまずない」って。たけしさんが久々に深見師匠に会いに行ったら、「バカヤロー、何しにきたんだ。何か飯食おうっていうのか、コノヤロー。ラーメンでいいか?」って、ラーメンをおごってくれたというんですね。そういう深見師匠の話をたけしさんから聞くというのが、また僕にとってはたまらなかったです。たけしさんから話を聞いて、僕が映画の中で描きたい深見師匠像ができ上がっていきました。

 僕はもちろんお笑いが好きですけど、それ以上にお笑い芸人が好きなんですよね。とくに深見師匠とたけしさんのような師弟関係に憧れて、自分もその世界に入ったと言っていい。これは自己満足かもしれないんですけど、やっぱりこの作品でこだわったのは、師匠が弟子に向ける不器用だけど深い愛情、弟子が師匠の芸だけでなく生き方を尊敬してやまない姿というのをかっこよく撮りたいということでした。

大泉洋:ハラスメントに厳しい世の中でも、思いはちゃんと伝わると信じたい

――劇団ひとり監督の思い入れも強い深見師匠を演じていかがでしたか?

大泉洋『青天の霹靂』がすばらしい映画だったので、劇団ひとり監督から数年ぶりにオファーいただいたことがまずうれしかったですし、私にとっても昭和の芸人さんたちの世界というのは、すごく好きな世界なんです。子どもの頃、周りが“ガンダム”や“キン消し”で盛り上がっている中で、芸人さんが出ているテレビ番組ばっかり観ていましたから。

 深見師匠はテレビに本当にお出にならない方だったので、動く姿は想像するしかなかったんですけど、声を少しだけ聞くことができました。コントをしている音源が残っていて、それを聞いたら、たけしさんに似ているんですよね。深見師匠のことを知っている方にお話を聞いても、「たけちゃんは師匠の生き写しだ」とおっしゃるので、弟子は師匠に似てくるといいますか、僕の役作りはどちらかというと、僕らが知っているたけしさんをイメージしました。深見さんが北海道出身だったというのも偶然ですけど、勝手に不思議な縁を感じていました。

――“昭和の芸人”さんたちの世界が好きというのは?

大泉僕ぐらいの歳になると、これは向こうが嫌だと思ったらパワハラになるのかな? セクハラになるのかな?と気をつけなければならないことが増えてくる。『浅草キッド』の時代は、めちゃくちゃですよ。師匠が弟子に厳しく指導するのが当たり前だったし、「バカヤロー!」と言うばかりで、褒めることなんてなかった。照れ隠しなのか、それが美徳とされていた時代で、劇団ひとり監督や僕が子どもの頃はそういうのがまだ色濃く残っていたので、表面的にはめちゃくちゃで、不器用なんだけれど、ちゃんと深いところで通じ合っているのがわかるし、それがすごくいいなと思ってしまう。深見師匠とたけしさんのような、師は弟子をこよなく愛し、弟子は師を敬うという師弟関係にはやっぱり憧れますね。時代が変わっても、人に対して愛情を持って接するとか、敬意を払うとか大切なことですし、それは相手にもちゃんと伝わると、信じたいですよね。

柳楽優弥: お手本になるようなかっこいい大人に出会えたら幸せ

――劇団ひとり監督と大泉さんが憧れてやまない、深見師匠とたけしさんの師弟愛を、平成生まれの柳楽さんはどう思いましたか?

柳楽優弥「あんなふうになりたい」と憧れる、お手本になるようなかっこいい大人に出会ったらついていくと思うし、そういう人に出会って自分を高めることができた人は幸運だと思いました。そこに時代は関係ないと感じました。師弟関係でなくても、相手のことを思うとか、敬うとか、そういう気持ちが大切だと改めて感じました。

――本作で印象に残っていることは?

柳楽子どもの頃からテレビでずっとたけしさんを見てきたつもりでしたが、実はツービートの漫才はしっかり見たことがなかったな、と気づいたんです。今回の作品の中で、土屋伸之さん(ナイツ)とツービートのネタをやる時、なんて難しいんだ!と思いました。テンポの速さ、独特な間のとり方など、監督に指導していただいて、土屋さんにも練習を付き合っていただいて、一生懸命やりました、としか言いようがないのですが、今までやったことのないようなお芝居をさせていただいて、とても楽しかったです。

 その漫才シーンやタップダンスをするシーンなど、印象に残っているシーンはたくさんあるのですが、一番印象に残っているのは、撮影初日に監督から言われたひと言ですね。クランクイン前に、たけしさんのモノマネが得意な松村邦洋さんから、仕草や『バカヤロー』の言い方など、長時間にわたって教えていただいたんです。でも初日に監督から「あれ、しないでいいよ」って言われたのが衝撃的でした(笑)。「モノマネではなく、魂だけ感じて自然にやってください」って。監督が、誰もが知る人のモノマネコメディーではなくて、夢や目標のために頑張る全ての人に届くような作品を目指している中で、自然に演じることを意識していました。

Netflix映画『浅草キッド』Netflixにて全世界独占配信中

原作:ビートたけし「浅草キッド」
監督・脚本:劇団ひとり
主題歌:桑田佳祐「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
出演:
大泉洋、柳楽優弥
門脇麦、土屋伸之、中島歩、古澤裕介、小牧那凪、大島蓉子
尾上寛之、風間杜夫、鈴木保奈美
音楽:大間々昂
エグゼクティブ・プロデューサー:高橋信一(Netflix コンテンツ・アクイジション部門マネージャー)
プロデューサー:有重陽一(日活株式会社 シニア・プロデューサー)、深津智男(ジャンゴフィルム)
企画・製作:Netflix
制作プロダクション:日活・ジャンゴフィルム
配信:Netflixにて全世界独占配信中
Netflix作品ページ⇒(外部サイト)

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