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「助けたい!」車にひかれた子猫を抱き上げた夫婦、交通事故に遭った“ちびまる子”がたどった幸せの道

 車を運転する人なら、突然道に飛び出してきた猫にヒヤリとさせられたことがあるかもしれない。また、車にひかれてしまった猫を見かけたこともあるだろう。その場合、胸は痛むものの、ほとんどの人が見て見ぬふりをして通り過ぎてしまうのではなかろうか? 今回は交通事故に遭いながら、優しい夫婦に保護された猫『ちびまる子』について、NPO法人『ねこけん』の代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

血まみれで脱糞状態…、瀕死の子猫を救った夫婦と怖い院長先生

 車にひかれた子猫を見つけたのは、車を運転していたある夫婦だった。ほかの車は、徐行して猫を避けて通っていく。夫婦も一度は通り過ぎたものの、妻の「助けたい」というひと言に夫も同意し、すぐに引き返して助けることを決意。だが、道の真ん中で吐血していたガリガリの子猫は、血まみれの脱糞状態。それでも猫を抱き上げた夫婦は、そのまま動物病院へ直行した。

 猫はどうやら頭部を車にひかれたようで、あごが半分なく、片目が痙攣し、鼻と口からの出血が止まらない状態。頭を強く打っていた場合、これから脳が腫れてくる可能性もあると診断された。そして、夫婦が猫を引き取れないのであれば、この状態でリリースするしかない。だが、再び野良猫としては生活すれば、ほぼ死んでしまうだろうとのことだった。このときメールで相談を受けた『ねこけん』はセカンドオピニオンが必要とし、「あらためて、医療費が安くて腕のいい先生のいる病院を紹介しました」という。

 アドバイスを聞き、夫婦が向かったのはボランティア仲間では有名な病院。「院長先生はとても怖いのですが(笑)、腕前はトップレベル。保護猫に理解があり、良心的な治療費で手術を請け負ってくれるんです」。噂にたがわず怖い院長先生から、夫婦は30分も怒られたという。以前も重症の猫を連れて行った『ねこけん』スタッフを、「治らなきゃ死ぬだろう! 治すしかないんだよ!」と怒鳴りつけた院長先生。だが、交通事故に遭った猫も、怒鳴りながらもしっかりと処置してくれた。

 「猫を保護したご夫婦に病院を紹介したとき、『治療したあと、どうしたら?』と相談を受けたので、うちで引き取ることを約束しました。ご夫婦はすでに3匹の保護猫を飼っており、もう1匹を家族として迎えるのは難しいと。でも、車にひかれた猫を保護し、病院に連れていくことだけでもとても勇気がいることで、なかなかできることではありません」。

 猫は検査した結果、あご以外は問題がなく、早速、手術を開始。その後、しばらくしてからあごのプレートも取り除かれ、自力でご飯を食べられるまでに回復した。退院後は『ねこけん』で預かり、“ちびまる子”と名付けられた。女の子だった。

交通事故に遭うのは雄猫が多い? 不妊・去勢の成果で最近は激減

 ちびまる子は不幸にして交通事故に遭ってしまったが、そのような猫は昔に比べて今は各段に減った。これは、実はTNR(野良猫を捕獲し、不妊・去勢手術を行い、元の場所に戻す)の成果だという。

 「猫の交通事故が減ったのは、まずTNRにより野良猫の絶対数が減ったから、という理由があります。そしてもう一つ。雄猫は発情期になると雌猫を探して広範囲を歩き回り、車にひかれることが多い。ひかれるのが雄猫ばかりなのは、そんな原因があるんですね。不妊・去勢手術をすることによって雄猫の移動範囲が狭くなるため、事故が減っていったのではないかと考えています」。

 減ったとはいえ、まだまだこのような事故はゼロではない。だが、道路でそんな血まみれの猫を見つけても、救おうと抱き上げることはなかなかできないだろう。病院に連れていくにしても、治療費の負担もあれば、治療した猫を引き取る環境が自分にあるか、考えることは山ほどある。だからこそ、ちびまる子を「まずは助けなければ」と行動した夫婦に、「本当にすばらしいこと」と溝上氏も賞賛を送る。

 『ねこけん』では、2月に葛飾区に動物病院を開業し、このような事故に遭った動物、高度な医療が必要な動物をもっと救いたいと、気持ちを新たにしている。「高度な医療が必要になると、必然的に医療機器も高額になるため、治療費が上がります。そうすると、保護して治療してあげたくても、できない人も出てきますよね。そんな問題を解決するため、野良猫や保護猫にも廉価で治療を請け負う病院が必要だと感じました」。怪我した猫を見つけたとき、助けようと行動する人にとって、とても心強い味方になりそうだ。

 今ではあごも完治し、すっかり元気になったちびまる子。とても人に慣れていて、片目は小さくなったままだが、膝の上が大好きな甘えん坊だ。不幸な事故に遭ってしまったが、優しく勇気ある夫婦に救われ、腕のいい医師に治療され、『ねこけん』で保護されている流れを考えれば、すでに幸運をつかんだといえるだろう。もう、危険な道路を渡ることもなく、迫りくる車を恐れる必要もない。きっとこれからのちびまる子に待っているのは、あたたかい家族の手と、安全な住処だろう。

(文:今 泉)

■NPO法人『ねこけん』(外部サイト)

■『ねこけん』オフィシャルブログ(外部サイト)

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