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『スター・ウォーズ』や香港映画黎明期にも影響 日本のアクション100年の変遷と課題

  • アクションシーンにも自ら果敢に挑む主役俳優陣(C)ORICON NewS inc.

    アクションシーンにも自ら果敢に挑む主役俳優陣(C)ORICON NewS inc.

 日本の映画が世界に影響を与えたものは何か? 昨今のヒット邦画の印象だけで見ると意外かもしれないが、実は“アクション”である。とくに黒澤明・三船敏郎の功績は大きく、『七人の侍』はハリウッドで『荒野の七人』としてリメイク。『隠し砦の三悪人』が『スター・ウォーズ』に多大な影響を与えたのも、知る人ぞ知るところ。そんな中、昨今は日本でも、岡田准一や佐藤健、横浜流星、清野菜名など、スタントマンレベルの技量を備えたアクション俳優が増えた印象がある。CG技術も年々発展していく中、日本のアクションはどのような歴史をたどり、現在に至るのか。そして、その課題とは?

日本のアクション技術がなければブルース・リーも誕生していなかった?

 日本におけるアクションの歴史は20世紀初頭、サイレント映画が庶民の娯楽だった時代に遡る。サイレント映画はセリフがないため、視覚に訴えるものが人気に。主に体技、アクション、時代劇に注目が集まった。これは音声が収められたいわゆる“映画”が登場しても変わらず、時代劇は大人気に。しかし第二次世界大戦後、アメリカのGHQが、時代劇の奥底に流れる“忠義”の精神が日本の苛烈な戦闘スタイルのモチベーションにつながったとして、これを禁止。日本映画界は、刀を持たない「アクション映画」へ移行した。

 「様々な映画会社が工夫しましたが、当時人気があったのは、日活アクション」と話すのは、国内外で活躍するアクション監督や殺陣師・スタントコーディネーターたちによるジャパンアクションギルド(以下・JAG)の理事でスタントマンの多加野詩子氏(映画『ビー・バップ・ハイスクール』、ドラマ『あぶない刑事』『ランチの女王』など)。「当時は映画館の扉が閉まらないほどの盛況。程なくして石原裕次郎さん、小林旭さん、高橋英樹さんら大スターが登場。戦後の屈折感をアクション映画で払っていたのだと思われます」(多加野氏)

 戦後10年経った頃、再び時代劇・チャンバラ映画も復活を許可され、昭和30年代には、東宝では黒澤明、三船敏郎、東映は大川橋蔵や中村錦之助、大映は市川雷蔵や勝新太郎らが活躍。日本のアクション映画は隆盛を極める。

「そんな中、日本のアクションのスキルに目をつけた海外の会社が。それが香港のゴールデン・ハーベスト。同社は日活のスタッフをスカウトし、日本の技術を取り入れ、後のブルース・リー出演作などに続く、新しいテイストのアクション映画の誕生を支えました」(多加野氏)

時代劇の衰退後も、ヤンキー映画・刑事ドラマ・戦隊ヒーローで受け継がれてきた日本のアクション魂

 スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスが黒澤明の影響を受けたという話を知る人も多いだろう。それほど当時の日本のアクション映画は最先端だったわけだ。そんな中、危険なアクションをしたり、俳優の吹き替えで体技を魅せるスタントマン、一方で、三船敏郎、石原裕次郎や市川雷蔵、勝新太郎、松田優作のようなアクション俳優へと二分化していく。スタントマンの走りは、サイレント時代の大河内傳次郎ら大スターに絡んだ斬られ役のような、いわゆる大部屋俳優たち。現在では、スタントマンたちは「自分たちは俳優ではない。スタントマンなんだ」という強い意識を持ち、決して顔を見せることなく自らの体技を磨いていった。

 やがて80年代頃、時代劇の勢いが後退する時代が来るが、これを支えたのが不良映画『ビー・バップ・ハイスクール』、『あぶない刑事』『刑事貴族』などのアクション刑事ドラマ。もう一つは『仮面ライダー』や戦隊ヒーローといった特撮ものだった。「とくに特撮ものは、若手イケメン俳優を主役に据え、右肩上がりの大人気シリーズに。スーツアクターという職業もでき、過去は『ゴレンジャー』のモモレンジャーが合気道の小手返しをするような、ただ殴り合うだけじゃないアクションを色々工夫していましたが、ワイヤーアクションやCGの登場で、さらに進化。新たな難しい技術が必要な時代にもなりました」(多加野氏)

 90年代のハリウッド界では、大ヒット作『マトリックス』(’99)が誕生。複数のカメラを使ってスピード感を表現する“バレットタイム手法”を用いて弾丸を避けるシーンを撮影するなど、アクション界の常識を覆した本作も、日本のアニメ『AKIRA』や武道映画の影響を受けていることは周知の通り。20世紀に入ると、『マトリックス』を追従するようなアクション作品が相次いだが、低予算ながら新たな世界的ムーブメントを起こしたのが米映画『リベリオン』(’03)だ。

 当作も『マトリックス』を強烈に意識していたが、多額の撮影費がかかる“パレットタイム手法”を用いることは難しかった。そこで、予算を抑えるために発明したのが、架空のSF戦闘術“ガン=カタ(Gun Kata)”だ。その名の通り、ガン(銃)と日本技術のカタ(型)を組み合わせ、主に二挺拳銃を使用し、超近接戦闘に持ち込む事で、多数の敵を短時間で倒す戦闘技法だ。

 それまでの銃撃戦は遠距離で、弾を詰める際には物陰に隠れる必要性があったが、敵の目の前に姿をさらしつつ、体術と銃撃で戦う“ガン=カタ”の発明により、単純な撃ち合いで終わっていた従来のガンアクションに新たな表現を開拓したのだ。

 このように、“世界的革命”となる作品の随所で多大なる影響を与えてきた日本のアクション。昨今では、“演技”的なアクションではなく、映画『燃えよ剣』の岡田准一のように、より“リアル”に魅せるアクションも増えてきた。「プロレスだけでなく、数多くの格闘技が観られる時代に入り、視聴者の目も肥えてきた。そういった人たちへの需要もますます高まってきているようです」(多加野氏)

変わる俳優陣のアクションへの意識、変わらない日本のアクション界の課題

 実は、現在でも日本の技術は高い。ワイヤーアクションも含めそのニーズは高く、カナダや中国、ヨーロッパに多くの日本人スタントマンがいる。現在はそのほとんどがフリーランスで、人口は100人ほど。ただ、国内では熟練者の高齢化問題もある。「理由の一つに、スタントマンの地位、ギャラの低さがあります。日本では、とても若者に『こっちへおいで』とは言えない。特に、昔は交通費と怪我は自分持ち。命がけのシーンでもアルバイトに劣るギャラでした」(多加野氏)

 これらを改善しようとしたのが、JAGだ。アクション業界の地位向上、社会的信用の獲得のほか、スタントマンの安全面の配慮、適正な就労関係などを結ぶために、今年1月に発足。理事には谷垣健治(『るろうに剣心』)、辻井啓伺(『十三人の刺客』)、横山誠(『ザ・ファブル』)、下村勇二(『キングダム』)、大内貴仁(『HiGH&LOW』)らアクション監督のレジェンドクラスが集まり、代表理事を元ジャパンアクションクラブの矢部大が務めている。

 “縁の下の力持ち”への理解が、現代の日本のエンタメ界にはやや足りないという。アクションも、しっかり作るための期間が確保されていない。安全を守りつつクオリティを高めるためには、しっかりと時間とお金をかける必要があるが、邦画はマーケットが国内に限られるので、制作費が確保できないのも理由の一つ。しかし、「ハリウッド映画と比べられるが、もし、業界が時間とお金をかけられれば、俳優陣のポテンシャルは日本にもある。海外のメイキング動画を観ても、技術的に海外に劣っているとは思えない」と多加野氏は断言する。

 だが、良い変化もある。「真田広之さん、山田洋次監督の映画『たそがれ清兵衛』のヒットあたりから、時代劇や殺陣が再注目され、必然、制作側に作品のクオリティの高さを求める意識から、俳優の事前練習に時間と予算をかける体制が整い、演じる俳優の想いも高まってきた流れができ始めています。例えば映画公式の練習は1ヵ月ぐらいですが、演じる俳優たちが、半年ぐらい前から自腹で道場に来て自主練習をする流れになってきました。視聴者にしっかりしたアクションを魅せようという俳優陣の想いが強まっているように思います」(多加野氏)

 昨今は武田梨奈、清野菜名、土屋太鳳、綾瀬はるかのように、志穂美悦子よろしく、生身の肉体でしか表せないアクションをする女性も復活してきた。しかし「俳優の怪我は撮影全体に大きな影響を与える為、そこはスタントマンとのバランスが大事」と多加野氏は警鐘を鳴らす。

 かつて世界に誇るレベルだった日本のアクション映画。しかし、ポテンシャルそのものは失われたわけではない。千葉真一さんは亡くなられたが、日本のアクション魂は人知れず熱を放ち続けている。世界を席巻するような日本発のアクション映画が再び登場することを期待したい。


(取材・文=衣輪晋一)

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