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個性重視時代で消えゆく“個性派”、令和に光るのは遅咲き「引き型」タレント?

 ちょっとエッチな美新人娘(ミルキーっこ)・中森明菜、会いに行けるアイドル・AKB48、1000年に1人の美少女・橋本環奈――。かつてアイドルや芸人につけられていたキャッチコピーや目を引くお決まりの衣装は、昨今見られなくなった。むしろ無理なキャラ付けは敬遠され、ありのまま=“自分らしさ”を尊重する時代に。現代は“多様性”の時代であり、いわゆる“個性”を重視しようとする動きが。だがその結果、皮肉にも芸能界では、逆に“個性派”というジャンルが消えつつある。

昭和アイドルに平成歌姫… 世代を超えた“絶対的スター”は令和に入り壊滅?

 かつて芸能人には“キャッチフレーズ”が当たり前の時代があった。「これはある種、“文化”でした」と語るのは、雑誌『メンズナックル』などでキャッチコピーライターを務め、メディア研究家でもある衣輪晋一氏。

「その特徴はおおまかに、早見優『少しだけオトナなんだ…』、本田美奈子『美奈子、あなたと初めて(ハート)』、井森美幸『井森美幸16歳、まだ誰のものでもありません』というちょっとエッチなもの、石野真子『100万ドルの微笑』、菊池桃子『REAL100%』の数字系。また西城秀樹『ワイルドな17歳』など年齢アピール、大場久美子『一億人の妹』などの“妹”系。林寛子『そよ風みたいな女の子』などの青春・少女系。最後に、浅香唯『フェニックスから来た少女』、舘ひろし『太ったブタが勝つか、しなやかな狼が勝つか』など、“ちょっと何言ってるか分からない”系に分類することができます」(同氏)

 まだ「スター」という言葉に真実味があった時代だ。その後も美空ひばり、松任谷由実、松田聖子、山口百恵、宇多田ヒカル、安室奈美恵、浜崎あゆみといったその時代を象徴するような“歌姫”文化は長らく続いたが、令和になった今、彼女らほどの社会的ムーブメントを起こすディーバ系新人が出てくる気配はない。

 芸人界においても、一発芸や派手な見た目を持つ芸人が極端に減少。波田陽区やはなわ、小島よしおやコウメ太夫、ジョイマンなど、個性的衣装とお決まりのギャグが記憶に残る“エンタ芸人”らが活躍していた時代があったが、最近の第七世代で言えば、霜降り明星、ハナコ、ミキ、四千頭身らは揃って“お決まり”の衣装は持たず、あくまでそれぞれが自然体で勝負している印象がある。

 俳優やモデル界でも、木村拓哉や蛯原友里のように、ずば抜けたカリスマ性を見せる大スター的存在はしばらく出ていない。とはいえ、かつてのニコニコ動画であれば米津玄師(ハチ)、YouTubeであればHIKAKIN、テレビ界でもマツコ・デラックスや有吉弘行、サンドウィッチマンなどと、それぞれの界隈でのスターは確かに存在しているというのが現状だ。

“引き”型個性が芸能界を席巻、背景にメディアパワーの変化

 「この背景にあるのは、ユーザー側の選択肢の多様化。テレビ一強だったメディアパワーの変化と無関係ではない」と前出の衣輪氏。事務所やレーベルのごり押しやプロデュースに頼らない個々の意思が尊重されるようになったがゆえに、見た目や強引なキャラ付けによる“押し付け”の個性は消失。これまでは周囲のプロデュースやバックアップ、キャラ付けによって、生まれ持ってのスター性・カリスマ性がなくとも光ることができたが、昨今では“個性重視”時代が故、元ある個性をいかに自然に打ち出すかという難しさが立ちはだかっている。

 そんな中、脚光を浴びるようになったのが“引き”型個性だ。特に「前に出ること」が求められてきたバラエティ界においても、サンドウィッチマンを筆頭に、博多大吉や麒麟・川島、若林正恭など、むしろ「一歩引く」タレントが重宝されている印象。かつては場の空気をかき乱す破天荒枠のようなギャルタレントにしても、めるるやみちょぱのような、空気を読み、自分の個性や意見を押し付けないスタンスが求められている。モデルタレントの中で抜きんでた活躍を見せる滝沢カレンも“引き”型と言えるだろう。

 アイドル界で言えば、バラエティでの積極的に前に出るメンバーが目立っていたAKB48に対し、グループ全体のバランスを考えつつ控えめに個性を打ち出す坂道グループが台頭。NiziUにしても、オーディション段階からメンバー同士のぶつかり合いは見られず、デビュー後も積極的に前に出るメンバーがいたりそれぞれの個性が光るというよりは、グループ全体の仲の良さや一体感が共感を呼んでいる。

 これで思い出されるのが嵐だ。個の主張よりも場の空気を優先させる“引き”のスタンスで、メンバーの仲の良さも多くの人々の心を癒やした。かつては「ジャニーズなのに売れない」葛藤を抱え、ブレイクまでに苦節があったことも知られている。アーティストでも星野源、俳優では高橋一生や綾野剛、斎藤工、中村倫也、北村匠海らも揃って“引き”型個性を持ち、ブレイクまでに10年以上の下積み時代があった。

“引き”型ユーザーが見出す“引き”型スター、その裏で消えない「キムタク的カリスマ待望論」

 “引き”型個性は最初からガツガツと目立ちにいくことがないために、周囲に魅力が伝わるまでに時間がかかるが、無理に自分のキャラを作ったりすることがないため、スタミナ切れもしづらく、息が長い活躍ができるのかもしれない。かつては大勢の中で強引に目立とうとする「一発屋」や「キャラ付け」でテレビに消費されていく構図から、それぞれが無理せず好きな場所で、ありのまま輝けるようになったとも言える。

「また視聴者の傾向として、メディアから一方的に“押し付けられる”文化へのアレルギーが強まっているのも無関係ではない。前へ前へ出ようとするエネルギーにも嫌悪感が。雨上がり決死隊で、宮迫さんが叩かれ、蛍原さんの好感度が上がるという現象が見られましたが、これは宮迫さんが“前へ前へ”であり、蛍原さんが“引き”型であるため。インタビュー経験から、宮迫さんの才能の凄さは目の前で感じていますが、現代において“タイプ”が災いしたのでしょう」

「また、炎上して戻ってこられる芸能人、戻ってこられない芸能人がいますが、戻ってこられないタイプは“押し付け”的な部分や“前へ前へ”と目立とうとする印象があったようにも思います。“引き”型は現代に欠かせない炎上対策にもつながるのではないか」と、衣輪氏は分析する。

 過去、映画やテレビが国民的娯楽だった時代は、数多くのタレントが並ぶひな壇やスクリーンの中で積極的に前へ出て誰よりも目立つ力が求められ、それが視聴者の嗜好とマッチすると“絶対的カリスマ”として君臨できていた。その背景にはメディアの「ブームを起こそう」という意図があり、いつしかそれを、ユーザー側が「押し付け」と感じるようになった。その結果、みんながテレビを観ていた時代のように“絶対的カリスマ”は生まれなくとも、ユーザー側も押し付けられたスターではなく、それぞれがメディアを選び、そこでの“自分的スター”を選べる“引き”の視線を手に入れた良い時代なのかもしれない。

 とは言え、キムタクや安室ちゃんのような圧倒的スターを待ち望んでいる人も少なくないだろう。「トレンドは循環する」と言うが、“引き”型個性が光る今、かつてのような“押し”型個性が目立つ時代とも言える。メディアが分散し、趣味嗜好が多様化した令和では、これまで以上の圧倒的カリスマ性が求められる。様々な意見が尊重される時代だからこそ、炎上の恐れも常に隣り合わせだ。そんな時代だからこそ、全世代全メディアを網羅する絶対的なカリスマたる者の誕生を見てみたい。


(文/西島亨)

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