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書店併設に介護相談… コロナ禍で変わるコンビニ、異業種参入で個性強化か「店舗ごとの訪れる楽しみ創出がカギ」

“コンビニは体に悪い”を逆手に取った高齢者向けサービス強化 地域コミュニティの場に

 加速する高齢化社会に目を向けたマーケティングを行っているのが、介護相談窓口やサロンスペースを併設した『ケアローソン』だ。そもそもコンビニには“体、環境に悪い”というマイナスのイメージがある。それを逆手に取ったローソンは、2000年頃からヘルスケア機能を付加した店舗に注力。ドラッグストアと提携し、医薬品の品揃えも強化。ケアマネージャーが在籍する店舗は現在23店にのぼる。

「これまで我々のメインターゲットだったビジネスマンは、今後どんどん減少していきます。2025年には65歳以上が3700万人と言われるこの世の中で、要介護認定者に合わせた商品展開や介護関連サービス、人とのつながりにも力を入れようと。これまでの“物売り一辺倒“から、”ローソンに行く用事がある”を目指すモデルです」(同社担当・金子大作さん/以下同)
 そうして2015年に立ち上げた『ケアローソン』では、介護相談窓口(介護事業者が運営)、サロンスペース(コミュニティカフェ)併設、200種ほどシニア・家族のニーズに配慮した品揃えをするほか、介護関連商品(栄養補助食、やわらか食。匂い対策の洗剤、おむつ、杖など)も販売。これがドラッグストアのない地域で売上を伸ばしている。「元気なアクティブシニアに向けては和洋菓子、納豆、豆腐などにも力を入れています。高齢者に元気でいてもらうことが医療費削減、介護予算削減にもつながるという信念です」

 現在は近畿7店、広島6店、関東6店、愛知1店、九州、甲信越、東北各1店で展開。これまでの一律マニュアル、一斉拡大というやり方ではなく、あくまで協力的なオーナーやパートナーとなる介護事業者、自治体や地域の特性を見極めながら、慎重に店舗拡大を図っている。

 その理由は、ねらいの1つにコミュニティ形成があるからだ。近所付き合いが希薄な今、街で孤立していたシニア層が繋がり、些細な事でも相談できる場の提供にもなっているという。何かあった時に助け合える仲間づくりや、定期的に専門家が顔を合わせることで、認知症早期発見にもつながる。通常、コンビニは長居できる場ではないが、ケアローソンでは介護施設にあるような高齢者でも座りやすい椅子を設置している。金子さんはむしろ、「無料で気軽に長居してほしい」と話す。
 そのほか、地域の医師や理学療法士などが開く座談会もあり、運動、無料健康測定イベント、文化交流(ペーパークラフト、絵画サークル、保育園と連携した家族の似顔絵展示会)などで、「ローソンへ行く」を誘導している。

「また、ワクチン予約などデジタルに弱いシニアのために、愛知県名古屋市の南区芝町店では、市と連携して大学生のボランティアが無料相談サービスなどを行いました。(6月末で終了)弊社としては誰1人として取り残さないような社会を実現したい。実際にシニアのご来店が増え、イベントも盛況。モノ+コト=通いの場として活用してもらえれば」
 そんなローソンだが、このコロナ禍でオフィス・観光地・繁華街の通常の店舗は苦戦。住宅街の店舗では「身近なコンビニで買い物を済ませたい」という期待に応えられる、冷凍食品、生鮮野菜、日常品の品揃えを強化している。また、従来の全国一律の店づくりからその地域に合わせた最適化を目指しており、現在約492店舗で改装を。できたて商品へのニーズの高まりで、店内キッチンで調理を行う「まちかど厨房」の導入店舗も拡大する予定だ。

 ローソンをはじめ、コンビニ各社は今、社会問題と向き合いながらの改革が進みつつある。これまでは全国どこに行っても変わらない商品やサービスを得られることが求められていたが、これからは“一番近いコンビニ”よりも、“行きたい理由があるコンビニ”が選ばれる時代に突入しているのかもしれない。その理由をどれだけ提供できるかに、“社運”ではなく、“店舗ごとの運命”が懸かっている。


(文=衣輪晋一)

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