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YouTubeとの親和性で再評価、『さんま御殿』の“日常あるある”再現VTRのコンテンツ力
テレビ離れ世代からの反響も「VTRごとのダイレクトな評価がバラエティ業界では斬新」
「最初はその部分を切り出して海外に販売するというアイデアもありました。ですが弊社のネット関連の部署から『YouTubeに違法にアップされている同再現VTRが結構回っています。それなら、公式で出した方がいいんじゃないでしょうか』と。確かに、公式で出すとクリアな画像で見て頂ける。動画をきっかけに番組を観てくれる人もいるだろうということでスタートしました」(宮本誠臣P/以下同)
「再現VTRを作っているディレクターにとっては、『さんま御殿』が高視聴率を取っても、それは番組全体の評価になってしまいます。ですが、YouTubeでは“再生数”という明確な数字で反響が分かります。非常にリアルな評価につながりますので、ディレクターたちにとってやり甲斐につながりますし、また出演していただいている役者さん、引いては投稿してくれた方にとっても放送で終わらず、ネットで配信、またその直接の反応はうれしいもの。かなりの刺激になっているのではないでしょうか」
さらには、YouTubeでは何度も観られるからか、細かいところに気づいて指摘するユーザーも。例えば、職場シーンで後方に映ったエキストラのパソコンのゲーム画像に対して「しれっと仕事をサボってる人がいる(笑)」などと、テレビで1回流れるだけでは気づかない、放送とは違った反応が見られており、今後ディレクターの“遊び心”に火がつくかもしれないと宮本Pは匂わせる。
さんまの“異なる価値観を尊重する”想いから生まれた番組 変わらず25年
「企画段階で、タレントさんの話だけではなく、一般の方の話も入れた方が面白いのではないかというアイデアがあったと聞いてます。そこで、初回の収録では再現VTRのパターンと、寄せられたハガキをナレーションで読み上げるパターンの2つを用意。結局、再現VTRの方がいいと判断し、今の形になったそうです」
「尺が短い分、あまりネタをこねくり回さないよう心がけています。また、ナレーションは笑いを取りにいくのではなく、ネタそのものを生かした笑いを出せる作りにするために、あくまでフラットに。面白さを端的に伝え、ここが面白いとスパッと伝える。限られたカット数でストーリーを伝えなければいけないので、イメージは4コマ漫画ですね」
「特に名の売れた方にオファーはしないという決まりがあるわけではなく、最も重視しているのは、そのネタに合ったキャスティングかどうか。一般の方の体験談ですし、有名な方が出演して役者さんに注目が集まってしまうと、ネタそのものの内容が損なわれることも。それでは本末転倒ですので、あくまでネタ自体に注目してもらいたいという想いで制作しています」
25年マンネリさせないキャスティングの妙+瞬時に個性引き出すさんまのキャラ発掘能力
もちろん誰が来てもさばけるさんまあっての番組であることは間違いないが、毎回“初出演”の人をキャスティングしていることも、長年マンネリを感じさせない奥義でもある。ここからブレイクしたタレントは、ローラ、鈴木奈々、滝沢カレンなど、枚挙にいとまがない。
「同じ人が連続で出演しても、常に新しい出演者がいれば、また違う化学反応が起きて見慣れたキャストもまた新しく見える。さんまさんがどんな人でも受け入れてくれるので、どうなるかわからない予測不能な人を思い切って投入することも多いですね。他の番組では扱い方がわからない見え方をする人でも、この番組でさんまさんが個性を引き出して、開花する瞬間を目にしたことは何度もあります」
「YouTubeでも、過去の傑作選など精力的に出していきたい。また、当番組で“再現俳優”としてお馴染みの役者さんごとにまとめたものなど、様々な企画を考えていますので、本放送、YouTubeともに今後もお楽しみいただければ幸いです」
本日13日放送の『夏の3時間SP』では、初の“人気声優くくり”で、山寺宏一や中川翔子らが出演。今回も個性あふれる12人がどんな化学反応を起こしてくれるのか、期待したい。
(文=衣輪晋一)