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“ステンドグラス柄”の羽織に反響、令和にカジュアル着物発信する理由「着物にルールはない」

 “敷居がおもいっきり低い着物店”として、カジュアル着物ファッションを展開している、きもの屋・ゆめこもん。好きな生地を持ち込みOKなことから、手芸店ユザワヤで見つけたステンドグラス柄を持ち込んだ女性のリクエストに応えた羽織を公開すると、SNS上で「可愛すぎる」「とっても素敵」「売ってたら絶対買う」など大きな反響があった。現代では圧倒的に洋服を着る人が多いが、令和にカジュアル着物を発信する理由をゆめこもん店主に聞いた。

「こんなに可愛くできるなんて!」持ち込み生地で作られた羽織の出来栄えに感動

――着物店を始められたきっかけを教えてください。

テレビ番組の制作に30年携わってきましたが、50代になってスタッフの影響で着物に興味を持ちました。(この歳まで着物は一度も着たこと無し)以後、着物を楽しむコミュニティを作り、着物で参加する様々なイベントを開催しました。番組制作と並行して「着物の事業化」も考えてのことでした。ところが55歳のとき、テレビ局内で仕事中に急性心筋梗塞でダウン。危うく命を落とすところでした。これを機に、ハードワークのテレビ屋をきっぱりと辞め、着物をメインにビジネスをしようと切り替えたのです。
――「ステンドグラス羽織」に大きな反響がありましたが、これを作られた経緯を教えてください。

当店では「お好きな生地を持ち込んで着物や羽織を作ります」というサービスを強くアピールしています。今回のお客さまもネットで検索したところ、当店が上位に表示されたそうです。一般の呉服屋さんでは相談しにくいということで来店されました。

――着物向けの素材ではなかったと思いますが、制作に当たって工夫した点、苦労した点があれば教えてください。

よほど厚手とか特殊な生地でない限り、着物や羽織に仕立てることはそう難しいことではありません。今回の生地もかなり薄いという特徴はありますが、普段通りの作業だったと思います。「ミシンの針さえ通ればお仕立てできます」と縫製会社から言われています。先日は、やや厚手で重量感のある合皮を持ち込まれ「これでメンズの羽織を作って欲しい」というリクエストにもお応えしました。

――「ステンドグラス羽織」の完成品を見られたお客様の反応はいかがでしたか。

少し興奮気味で「こんなに可愛くできるなんて!」と驚き、喜ばれました。生地だけの状態で見たときより、実際に形となって袖を通した方が はるかに印象が良かったようです。

――Twitterで約7万いいねがつきましたが、ネットでの反響はいかがでしたか。

これが意外と静かです(笑)。当店のwebサイトやネットショップへのアクセスは飛躍的に伸びたのですが、当店で販売している商品ではないので、それ以上のアクションが無かったのだろうと思います。持ち込みの相談はいくつかあるのですが、これがTwitterの影響なのかは不明です。文面で「ユザワヤさんで購入した生地」と明記していますので、おそらくそちらへの問い合わせは多かったのではないでしょうか(笑)。

「高価」「大変」「面倒」くつがえす、40秒で着られる1万弱のデニム着物も

――これまで反響の大きかったデザインや商品があれば教えてください。

昨年、反響が大きかったのは対丈(ついたけ)のデニム着物(レディース)です。Twitterで1万7千いいねがつきました。おはしょりを作って着付けをするという面倒を省き、サッときてベルトを締めるという手軽なタイプ…言うなれば旅館の浴衣のようなモノです。40秒で着られるので「クイックキモノ」と名付けました。価格が一枚11,000円(税込)とリーズナブルなこともあって、この商品は昨年だけで130枚以上売れました。他にはデニムの羽織も好評です。最近は着物を着ない人でも、ジーパン・Tシャツの上に羽織を着る若い人が増えてきました。地下鉄のCMで石原さとみさんがそのようなコーディネートで登場されていたのも要因のひとつかもしれません。

――デニムや洋柄のカジュアルな着物を提案されているのはなぜですか。

デニムはとにかく「取っつきやすい」のがイチバンです。誰もが身近に愛用している超カジュアルな生地で、着物のハードルを下げてくれるのは間違いありません。初心者の方でも「デニムだったら着てみたい」という方は多いです。コーディネートも「自由でいいんだ」と感覚的に理解できるので、若い人たちでも受け入れやすいのではないでしょうか。

――現代における着物の「敷居の高さ」は感じますか。

ファッションに対する考え方は人それぞれで、極端な話、人間の数だけ楽しみ方があって良いと思っています。ただ「和装」と聞くと、何か決まりごとがたくさんあって面倒と思っている人が多いようです。この私も、着物のコミュニティを作った50代になるまで、敷居の高さを感じていました。どこかのアンケートにも「着物に興味がある」と答えた女性は9割近くもいるのに、「着物は高価だ」「着付けが大変」「手入れが面倒(自宅で洗えない)」などのネガティブな印象を持つ人が大半だったとありました。この原因は、比較的安価な商品もあるという情報が人々に伝わっていないからだと思います。「綺麗に着付けをしてきちんとした和装でお出かけしたい」という方がいらっしゃっても良いと思います。そういう方を見かけると私も惚れ惚れしますから(笑)。ただ一方で、カジュアルな着物を安価で楽しめるという情報も知ってもらいたいと思っています。

――着物には古くからの様々なしきたりがあるかと思いますが、着物を作る際や着る際のルールはどのようにお考えですか。

多くの方が誤解されているようですが、「着物のルール・しきたり」というものは、そのほとんどが戦後に作られたものです。諸説ありますが、人々の装いが洋服に変わろうとする中で、「着物文化を守ろう」と呉服業界が仕掛けたのだと言われています。時代を振り返ってみると、大正ロマンがブームだったころ、キモノファッションは自由で開放的でした。「着物にルールなど無い!」というのが私(ゆめこもん)の基本的な考えです。

アニメ好きや、育児卒業後の楽しみに着物着る女性も コロナ禍の気晴らしにおすすめ

――現代では圧倒的に洋服を着る人が多いですが、令和時代における“着物の魅力”は何だと思われますか。

そもそも、洋服と和服を別のカテゴリーとして分けなくても良いのではないか、と考えています。デパートの売り場も両方が同じところにあると、お互いが刺激し合って面白い変化が起きるのではないか・・そんな感覚です。着物も洋服も「身にまとうもの」という点では同じです。「なんとなく和っぽいカッコよさ」とか、「なんとなく洋服っぽい可愛さ」という世界観が広がれば、日本のファッション界も楽しいものになるでしょうね。

――先日、着物を着る美大生を紹介されていましたが、若者が着る着物は“逆にオシャレ”といった見方もあるかと思います。昭和、平成、令和の中で着物ニーズの変化は感じますか。

私が着物の業界に入ってからまだ8年ですので、長いスパンでは分かりませんが、最近ではアニメに影響を受けて、和装に興味を若者が増えてきたような気がします。ですが、全体で見ると着物を日常的に着るという若者はまだまだ少ないでしょう。先日ご紹介した美大生のように、ひと目見て「カワイイ!」と感じることができると、後に続く若者が増えるでしょうね。そう期待しています。

――客層はどのような方が多いですか。

大きな特徴としては、男性客が多いことです。東京でもメンズ着物を扱うお店(しかも優しい価格で買える店)はかなり少ないので、検索すると上位に上がってきます。年齢層は20代〜50代まで、かなり幅が広いです。女性は30代〜40代が中心です。子育てが一段落して、普段の暮らしの楽しみとして着物にハマる方も多くいらっしゃいます。

――持ち込み布での着物づくりや様々なカジュアル着物を作られていますが、どのようなリクエストやニーズが多いですか。

これは本当に十人十色、千差万別です。「ポケットを付けてください」「羽織にフードを付けてください」「右袖だけ違う色の生地を使ってください」「裾にファスナーを付けて開くようにしてください」などなど…、私から「とりあえずワガママを言ってください」とお伝えすると、出るわ出るわ!こちらも目から鱗が落ち、良い刺激を受けることが多いです(笑)。

――着物を作る際、意識していることやこだわりがあれば教えてください。

やはり身にまとうものですから「着心地」は大事なポイントです。通気性や柔らかさなど、その質感は素材によって大きく違います。そしてなにより、「自宅で洗えること」。今の日本の気候を考えると、これは重要です。生地を選ぶ際は、その点をよくチェックするようにお客さまにはお伝えしています。それでも「デザインが最優先!」というお客さまは多いですが(笑)。

――コロナ禍でお出かけの機会が減りましたが、着物をどのように楽しんでいただきたいですか。

浴衣のように部屋着でも楽しめるものはありますが、やはり着物の魅力は「外出して満足感得る」ものだと思います。近所のお買い物でも構いません。散歩でも通学でも、日常的にカジュアル着物を楽しんでいただきたいと思います。コロナの影響で気持ちも塞ぎがちですが、カジュアルな着物に袖を通し、一歩外へ出るだけで気持ちが晴れやかになります。「いつもと違う自分」を感じることで、日々の暮らしが豊かになるような気がします。

――着物を通して、どのようなことを伝えていきたいですか。

ファッションは自分らしさを表現するものだと思います。その表現の材料に「着物」というアイテムがあるのは、日本人にとっては大変ラッキーなことです。和と洋を上手にミックスして、装うことの面白さを追求していただきたいです。今の世の中で、もう一度「自分」を見つめ直す良い機会になると思います。

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