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手嶌葵、デビュー15周年ベストアルバム発売 「みなさんにお会いすることを一番望んでいるんです」

撮影:酒井貴生

オールタイムベストアルバム『Simple is best』を発表した手嶌葵 撮影:酒井貴生

 デビュー15周年を迎えた手嶌葵から、オールタイムベストアルバム『Simple is best』が届けられた。デビュー曲「テル―の唄」(映画『ゲド戦記』劇中挿入歌)、彼女自身が「転機になった曲です」と語る「明日への手紙」(ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』主題歌)、現在ヒット中の「ただいま」(ドラマ『天国と地獄〜サイコな2人〜』主題歌)などを収めた本作には、豊かな表現力をたたえたボーカルによって音楽ファンを魅了してきた彼女の15年がしっかりと刻まれている。

デビューから15周年を迎え「あっという間でした」

――デビュー15周年、おめでとうございます。15年を振り返って、率直なお気持ちを聞かせてもらえますか?

手嶌10周年のときも「あっという間だな」と思ったのですが、さらに5年が経って同じことを感じています(笑)。15年という数字はすごいし、長いなと思うんですが、振り返るとやっぱり、あっという間でした。

――2006年にスタジオジブリ映画『ゲド戦記』の劇中挿入歌「テルーの唄」でデビュー。当時の音源を聴くと、どんなふうに感じられますか?

手嶌子どもの声だなって(笑)。がんばろう!という気合いも入っていたし、負けん気が強そうな声だなとも思います。大好きなジブリ映画の楽曲ですし、振り返ってみると、とても幸せなデビューをさせていただきました。ただ、当時はあまりにも子どもだったので(笑)、心が追い付かないまま活動しているような状況だったんです。30代になって、あのときとは声も変わっていますが、楽曲から感じる寂しさや美しさは今も同じ。たくさんの人に共感してもらえているのも嬉しいし、本当に素晴らしい楽曲だと思います。

――デビュー当時、将来的なビジョンはあったんですか?

手嶌ぜんぜんなかったです(笑)。ただ目の前のお仕事に向き合うのに精いっぱいで。歌に関しては、今もずっと試行錯誤ですね。15年も経てば、自信だったり、何かしら定まるものがあるのかなと思っていたのですが。難しいですね、歌は。

――キャリアのなかで、ターニングポイントとなった楽曲を挙げるとすると?

手嶌「明日への手紙」ですね。ドラマの主題歌になった曲なんですが、この曲をきっかけにして新たにファンになってくださって、コンサートに来てくださる方が目に見えて増えたんです。「明日への手紙」は自分自身に向かって歌ってる部分もあるんですよ、じつは。この曲をレコーディングした時期はかなり忙しくて、ずっと東京にいて。2番の歌詞に<ふるさとの街>というワードがあるんですが、私も「福岡に帰って、ゆっくり心を落ち着かせたいな」と思っていたので。

歌い続けてきた「The Rose」への想い「成長しているなと思ってもらえたら」

――手嶌さんは現在も福岡に在住。地元にいることは、歌うことに良い影響があるんでしょうか?

手嶌ありますね。この声は、福岡のお水と土、食べ物でできていると思うので。福岡だけではなく、九州のいろいろな場所の血も入っているし、この土地に育ててもらったんですよね。デビューのときも「東京には出ないです」とお話させてもらったし、福岡で心と体を休めるのはとても大事だと思ってます。東京は仕事をする場所というイメージなんです、私のなかでは。

――今年リリースされた「ただいま」も話題を集めています。

手嶌作曲家の村松崇継さんに初めて書いていただきました。いしわたり淳治さんの歌詞もとても美しくて。歌うのはとても難しくて、練習が必要だったんですけどね(笑)。“大事に思っていた人が去ってしまい、今は側にいない”という寂しい曲ではありますが、生きていればまた会えることもあるという気持ちも込めています。私自身もいろいろな方と出会って、別れてきているので、それを思い出しながら歌ったところもありますね。とは言え、まだ心が追い付いていない部分もあるのですが……。

――歌い続けるうちに、曲への理解が深まっていくのかも。

手嶌そうだと思います。レコーディングの時点ですべてを理解しているわけではなくて、コンサートなどで歌っているなかで、自分の体に馴染んでいくといいますか「今、この曲の気持ちがわかった!」という瞬間があるんですよ。そういうときは「ああ、幸せやな」と思います。

――ベストアルバムには、デビューのきっかけとなった「The Rose」を新たにレコーディングした音源「The Rose(15th Anniversary Version)」を収録。

手嶌15年以上歌っている楽曲ですし、この曲が私のなかで育っていった感覚もあって。コンサートでもずっと歌っているんですが、声や歌い方も変わってきてますし、15周年のタイミングで、改めてレコーディングしてみようと。33才の「The Rose」をよかったら聴いてみてください、という感じです(笑)。成長しているなと思ってもらえたらいいんですけど。

――小さい頃から親しんでいた曲なんですよね?

手嶌はい。ベット・ミドラーが映画「ローズ」のなかで歌うこの曲が大好きで。「この人の声が好きだな」とちゃんと認識したのは中学生の頃ですね。両親にたくさん映画を観させてもらって、サントラもよく聴いてたんですよ。自分で最初に買ったのは、「ザ・ブルース・ブラザーズ」のサントラ。映画のなかでアレサ・フランクリンが歌う場面があるんですが、それがとにかくカッコよくて、「1曲丸ごと聴きたい」と思って。R&Bやブルースは今も大好きで、よく聴いています。そういう楽曲も歌ってみたいですね、今後は。

「私自身、歌うことに飢えているところがあるんです」ライブへの気概

撮影:酒井貴生

撮影:酒井貴生

――完全生産限定盤には、初の映像作品『手嶌葵 10 th Anniversary Concert』を収めたDVDも。デビュー10周年のライブ映像ですが、まさにファン待望のアイテムですね。

手嶌15周年を記念したベストアルバムに10周年ライブのDVDが入るという不思議なことになってます(笑)。私はもともと映像を撮られることが苦手で。このライブ映像はWOWOWさんで放送していただいたもので、スタッフのみなさんから「いつかDVDにしたいね」と言ってもらってたんですが、私としては「うーん……」という感じだったんです。でも、(コロナ禍の影響で)なかなかライブができない状況のなか、私自身も好きなアーティストのライブ映像やDVDなどを観ることが励みになっていて。5年前のライブ映像ではありますが、ちょっとでも歌声をお届けできたらなと思い、リリースすることにしました。

――ライブに対する意識も、キャリアのなかで変化しているんですか?

手嶌だいぶ楽しめるようになってきましたね。歌うことはずっと大好きなんですが、衣装を着て、メイクして、人前で歌うことに馴れるまで、すごく時間がかってしまったんです。最初の頃は本当に緊張していたし、お客様に申し訳ないなという気持ちもありました。でも、だんだんと気持ちが変化してきて……お客様が本当に温かいですよ。私のライブはピアノ、ギターと3人でやることが多くて、音量も大きくないんです。みなさんが耳をすませて、集中して聴いてくださっているのが伝わってくるし、拍手もとても温かくて。経験を重ねるなかで、少しずつ「一緒に楽しみましょう」と思えるようになったんですよね。

――ベストアルバムのタイトル『Simple is best』も、手嶌さんにぴったりですね。

手嶌私自身が素敵だな、好きだなと思うものって、シンプルなものだったりするんですよね。楽曲のアレンジやコンサートの編成もそうだし。15年という時間を表わすいい言葉だなと思って、このタイトルに決めました。

――6月からは全国ツアー「手嶌葵 15th Anniversary Concert 〜Simple is best〜」がスタートします。

手嶌私自身、歌うことに飢えているところがあるんですよね。最近、映像配信のために1年半ぶりくらいにミュージシャンの方々とセッションしたんですが、それが本当に楽しくて。配信などもいい形で続けていきたいのですが、私としては、コンサートでみなさんにお会いすることを一番望んでいるんです。ガマンするところはガマンして、健康に気を付けながら、早くみなさんにお会いしたいですね。

(取材・文/森朋之)

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