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再々出店から15年、北欧家具とDIYを定番化させたイケアの功績 空間への意識向上と生活様式の変化

 シンプルでナチュラル、ときに遊び心に溢れたデザインと機能性の高さが魅力の北欧家具。さらに低価格を兼ね備えたイケアの商品は、今や日本人の暮らしにすっかり溶け込んだ。何より「自分で組み立てる=DIY」という、かつての日本家具では主流になかった価値観を普及させた功績は大きい。1号店のオープンから15年、イケアの浸透とともに日本人のライフスタイルはどのように変わったのだろうか。

過去2度の手痛い敗北が糧に…自分で組み立てる楽しさを徹底的に普及

 スウェーデン発祥の家具とインテリア雑貨の量販店・イケアが、2006年4月にIKEA Tokyo-Bay(1号店)をオープンしてから15年が経った。約9500アイテムを常時取り揃えるイケアでは、日本1号店以降も主に広大な敷地を確保した郊外に大型店舗を展開してきたが、昨年6月に初の都市型店舗であるIKEA原宿、11月にはIKEA渋谷が開業。さらに今年5月にもIKEA新宿のオープンを控えるなど、都市部での出店を加速させている。都市部での出店を進める目的は「車を持たない都市部で暮らす方々に、よりイケアを身近に感じていただくため」(イケア・ジャパン広報担当者)とのことだ。

 1943年にスウェーデンで創業したイケアは、実は1972年にも日本に進出している。ところが当時は現在とは比較にならない円安の時代。輸入品であるイケアも高額だったため、業績が振るわずに閉店した経緯がある。さらに1981年に再度の日本進出をしたが、欧米に比べて「家具を自分で組み立てる=DIY」という概念が浸透していなかったことから撤退の憂き目を見ている。

 2006年の再々進出の際には、店頭でのワークショップや、オンライン動画で説明をするなどして、DIYの普及に努めてきた。また近年は、あらかじめ開けられた穴にくさび式のダボをはめ込むなど、短時間で簡単に組み立てられる家具も増えている。かつての“大掛かりで難しい”“いろいろな工具が必要”“家具を組む立てる広いスペースが必要”といったDIYに対するイメージを払拭する商品展開が行われている。

「イケアが低価格を実現している理由の1つに、分解された家具をコンパクトにまとめた独自の『フラットパック梱包』があります。これにより持ち帰りやすいのはもちろん、輸送コストが抑えられ、環境保全にも繋がります。『お持ち帰り』と『組み立て』をお願いすることで、その分、商品を安価で提供できることをイケアのコンセプトとしてお客様さまにお伝えしています」(イケア・ジャパン広報担当者)

 広大なフロアにレイアウトされたテーマ別のモデルルームで組み立て家具の完成した形を確かめ、自宅に並べた様子をイメージした上で、倉庫コーナーで希望する商品をピックアップしてレジに向かう。日本の一般的な家具店にはなかった自由で選択肢の広い購入プロセスを実現したのも、イケアの家具が組み立て式であることが大きい。

“一生モノ”から環境変化に適した家具選びへ…“子どもの視点”がすべての事業コンセプト

 イケアの浸透と足並を揃えるように、日本人のライフスタイルも大きく変わった。かつて家具を買うタイミングといえば自宅を新築したときなどが多く、特にタンスやソファといった大型家具は「一生モノ」とされた。そして、完成品を購入するのが一般的だった。

 しかし現代の都市部では多くの人々が賃貸住宅で暮らしている。契約の更新などで頻繁に引っ越しをする人にとっては、重厚な高級家具よりも組み立て家具のほうが便利なのは間違いない。ひとり暮らしが増え、「嫁入り道具」や「婚礼家具」といった言葉も死語となった。

「欧米と比較すると、省スペースでも使用できる商品が人気です。日本のイケアでは住環境に合わせてコンパクトかつ多機能な家具をより多く取り入れています。また『RASHULT』というワゴンは、定番品よりも小さいものが欲しいという日本のお客さまの声に応える形で商品化されたもので、今では世界的に人気の商品となっています」(イケア・ジャパン広報担当者)

 YouTubeでは「イケアの家具を組み立ててみた」といった動画が数多く投稿されている。「SNSや海外ドラマの影響などにより、自分のスタイルやテイストを重視し、ホームファニッシングを楽しむ人々が増えているようです」(イケア・ジャパン広報担当)と分析するように、暮らしの空間への意識の向上もDIYの人気を後押ししているようだ。

「自然の素材や温もりを大切にしている北欧家具は、日本の住宅にもよく合います。カラフルで斬新なデザインの商品もございますが、和の空間にアクセントとして上手に取り入れる方も多いですね」(イケア・ジャパン広報担当者)

 イケアと同様にリーズナブルな家具と生活雑貨全般を取り扱う企業としては、ニトリが挙げられる。近年はニトリも組み立て家具を拡充し、都市型店舗を続々出店するなど両者は競合の関係にあり、消費者としては選択肢が広がったことは歓迎すべきことだ。一方で子ども向けの家具や雑貨については、イケアが圧倒的に充実している。それはイケアがすべての事業において「子どもの視点」を持つことをコンセプトとしているからだという。

「イケアでは子どもたちはこの世界でもっとも大切な存在と考えています。家族が全員で一緒に過ごせる、また子どもたちが自由に遊び、学び、成長できる空間。実用的で遊び心があり、安全で想像力を刺激するような部屋作りをより多くの方々に提案し、より快適な毎日を過ごしてもらいたい。それがイケアの願いです」(イケア・ジャパン広報担当者)

サステナブルな暮らしを日常に取り入れるアイデアを提供

 また、循環型社会(サステナビリティ)への意識も高く、日本では2006年の1号店の開業時より展示品の中古販売、2017年より全国の店舗で顧客が使用した商品の買取サービスを行ってきた。昨年11月には本国スウェーデンで中古・再生家具の専門店がオープンしている。さらに今年2月には顧客から買い取った家具や展示品を安価で販売するスペース「Circular Hub」をIKEA港北に開設。家具のメンテナンスも見学できるなど、サステナブルな暮らしを日常に取り入れるアイデアを提供している。「Circular Hub」は今年夏までに全国で開設する予定だ。

 冬が長く厳しい環境の北欧では、限りある資源や「おうち時間」を大切にする意識が高いとされる。家具のDIYも「手間がかかる」のではなく、「個性を大切にし、自分らしい、オリジナリティあふれる空間づくりを楽しみ、おうち時間を楽しむアクティビティ」と捉える傾向があるという。こうしたポジティブな価値観を、「安価でおしゃれなホームデコ」という方法で、北欧家具とDIYを自然に日本人の暮らしに浸透させたイケアの功績は大きい。

(文/児玉澄子)
◆IKEAオンラインストアはこちら⇒(外部サイト)

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