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NHKなのにCM制作? 『オドモTV』制作P明かす“タブー”への挑戦「その先に表現の自由がある」

 2年前からNHK Eテレで放送されている『オドモTV』。子どもの自由な発想を一流クリエイターが表現するコンセプトで、桑子真帆アナや高瀬耕造アナが子どもに起こった出来事を伝えるニュースのコーナー、RADWIMPSが子どもたちとセッションする音楽のコーナーなどがある。中でも注目は、映像作家の藤井亮が“子どもたちの宝物”のCMを作るコーナーで、脳みそから心臓まで効き目がある『からだぐすり』や、どんな堅いものも切れるが柔らかいものは切れない剣『つよまる』などユーモアにあふれており、「腹よじれるほど笑った」「これだからEテレはやめられない 」などと反響が寄せられている。同番組エグゼグティブ・プロデューサーの河瀬大作氏(NHKエンタープライズ)にその舞台裏を聞いた。

「相当珍しい番組」対象年齢ありきのEテレで“ターゲットなし”、放送時間は夜

「『オドモTV』は、Eテレの中でも相当珍しい番組なんです。というのも、Eテレ番組の多くは、子どもの対象年齢を定め、その発達具合や理解度に合わせて番組作りをします。しかし当番組はターゲットを定めず、子どものアイデアから偶発的に生まれたコンテンツで、子どもから大人まで楽しめる。だから放送時間も大人も一緒に 楽しめる夜7時45分からなんですよね」(河瀬氏/以下同)

 番組がスタートしたのは2018年4月。“オドモ”は“コドモ×オトナ”を合わせた造語だ。 河瀬氏は以前、朝の情報番組『あさイチ』の統括をしており、映画『君の名は。』『天気の子』などを手掛けた名プロデューサー・川村元気氏に『あさイチ』に出演してもらったことが始まり。「番組放送後の打ち上げで川村さんが『NHKで子ども番組を作りたいんです』とおっしゃったんです。だったら一緒にブレストをしましょうということになり、川村さんを交えて、どんな番組をつくるのかを考えていきました」
 ブレストでは「クリエイターは、新しいものを生み出す時に大体自分の手数と型が決まってしまう」「でも、子どもの 自由なアイデアの前ではそれは通用しない」という話が出てきた。そこで、子どものものすごく自由な世界観に、大人がガチンコで向き合ったらどうなるかというアイデアが生まれた。それは取りも直さず、クリエーションに対する刺激にもなる。子どもたちとクリエイターのシナジーを見てみないか、と。

 つまり、クリエイターたちが本気で子どもたちのアイデアをカタチにしようと試行錯誤をし、その結果、作品に昇華されたものを見せようというコンセプトで、例えば『オドモおどり』のコーナーでは、子どもたちが音楽に合わせて踊った無茶苦茶な踊りを、MIKIKO氏の振付監修によりダンスグループ・ELEVENPLAYが完璧に再現する。『オドモのがたり』は子どもが自由なテーマで書いたお話に、森山未來や岩井秀人、前野健太が演じる…といった具合だ。

「サメを蹴ったら石になった」どんな奇抜アイデアも映像化する藤井亮の高技量

 話題になった『オドモCM』は、独自のセンスが光る映像作家・藤井亮氏と子どもがタッグを組んだコーナーだ。「藤井さんのセンスと子どものアイデアが組み合わさると面白いと思い、何をやったらいいか、川村元気さんと3人で 話し合いました。その結果、藤井さんは広告の方ですし、子どもたちの宝物を宣伝するCMを作ったら面白いのではないかと結論づいた」。

 制作過程はこうだ。まず子どもたちの宝物を持ってきてもらう。藤井氏は、まるでスポンサーとCMの打ち合わせをするように真剣に子どもと向き合う。ここで大事なのは、否定を挟まないこと。子どもが「サメを蹴ったら石になった」と言えば「そうなんだ」と面白がる。「このボタンを押すと助けに来てくれる人がいる」と聞けば「すごいね、それで?」と促す。こうすることによって子どものテンションは上がっていき、大人では考えつかない摩訶不思議なアイデアが飛び出してくる。既成概念からではない、まったくの新しいアイデアを育めるというわけだ。
 これを通常のCM制作と同じ手法で作品化していくのだが、河瀬氏は「いつもドキドキしている」と苦笑いする。『オドモCM』に限らず、子どもの口から発せられる“それ”は予測不可能であり、また子どもは「●●がいて、赤いワンピースを着ていたんだけど死んじゃうの」と、どんな登場人物もすぐに“死”に結びつける。だが死ぬと終わってしまうため、次にどうなるか聞き出さなければならない。クリエーターは、それぞれその理不尽さと向き合いながら、それを作品へと消化させなければならない。 子どもの破天荒なアイデアを受け止めるには、相当な技量が求められるのだ。

 そんな中、河瀬氏が印象に残っているCMは、先述の『つよまる』。あとは最大級の癒やし(?)という『カイコ』。「カイコの幼虫は人によっては苦手な方もいるので、一体、どんな作品になるか不安でした(笑) 。ですが結果、とてもおもしろいCMになっていると思います」

「オトナの事情やNHKの枠にはめたくない」タブーへの挑戦に込められた“子どもたちへの思い”

 そんな『オドモTV』がやろうとしていることは、今後日本の将来を背負って立つ子どもたちに“気づき”を与えること。「今後ますますAIも発達し、近い将来多くの仕事が奪われるとも言われています。では、機械にできないことは何か。そのために、私たちは1+1の答えが2にならない子どもたちを育てていきたいという想いがあるのです」

 ゆえに、どんなに自由な発想でも決して子どもを否定しない。すぐに“死なせ”たがっても、「死んだって言っちゃダメだよ」と言えたら話は簡単だ。だがそれは、子どもの表現の“死”を意味するので、根気強くその先を聞こうとする。結果、制作が難航することも。「自分たちで自分の首を絞めてる気もするのですが」と笑う。

 河瀬氏はドキュメンタリーの番組も制作しているが、そこで例えば3.11の映像を使うべきか、となった場合、出さないとその表現が“死”んでしまうと判断した場合、踏み越えて使用することもある。「やりたいこと、知ってほしいこと。それぞれのスタッフが何を伝えたいのかを追求したい。だが、そこにはタブーの壁が横たわっていることがあり、その先に“本当に表現したいもの”があることも。だから毎回、すごく悩みます」
 CM制作については、ほぼ藤井氏に一任。「この番組の肝はクリエイター選び。クリエイターのセンス・技術と子どもの発想をぶつけるのですが、ぶつけた後の飛距離が伸びそうな方に声を掛けるんです。ただ、飛んだ方向については出たとこ勝負」。そのため、藤井氏のセンスを信用して真剣に作ってもらう。河瀬氏は、そのシナジーから生まれたものに、できるだけ手を加えないようにしているという。

 そもそも、“NHKでCM制作”という時点で、河瀬氏は内心ドキドキしていたと明かす。「川村さんと藤井さんが、オドモCMおもしろい!と盛り上がっていたので、『いいね!』と瞬時に言ってしまったものの、NHKだしなぁ…と(笑)。でもやってみないとわからないし、面白いとドキドキを比べた時に、面白いが上回ればいいんです。人を傷つけることはダメですけど、勇気をもってやっていかないと面白いものは絶対にできないですからね。クリエイターの皆さんは、毎回ものすごく考えてきてくれていますから、むげにオトナの事情で止めたり、NHKだからこうしてください、とか言いたくないんです。毎回めちゃめちゃドキドキしますけどね(笑)」

 コロナ禍の今、子どもたちはデジタル技術を使って、違う国の人や田舎の祖父母と話せる反面、修学旅行や体育祭など“身体性”を伴った人との接触ができないでいる。「その中で子どもたちが心底面白がれるものは何だろうと、常に考えています。当番組は3月27日の放送を持って終了しますが、 『オドモTV』でまかれた種がどう芽吹き、その芽をどのように次の番組に生かすか 、これからにつながる“何か”を考えたいと思っています」と河瀬氏。タブーを超えて表現を突き詰める河瀬氏の次回作、そして“オドモ・キッズ”が大人になり、どんな素敵な日本の未来を描いてくれるか、今から待ち遠しい。


(取材・文=衣輪晋一)
NHKエンタープライズ 番組開発部長・エグゼクティブプロデューサー
河瀬 大作(かわせ・だいさく)
1993年、NHK入局。『有吉のお金発見 突撃!カネオくん』『ズームバック×オチアイ』『おやすみ日本 眠いいね!』『オドモTV』など、幅広いジャンルの番組を手掛ける。日本テレビと共同制作した特別番組『NHK×日テレ 60番勝負』 で2013年ソーシャルテレビアワード大賞など受賞多数。2018年より現職。

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