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AV女優は“第二の人生”を歩めないのか? 元AV女優が業界の悪習や性的画像問題を語る

 高校生時代に性犯罪被害を受けながら、2004年にAV女優デビューした大塚咲。2012年に引退し、現在はアーティストとして活動を続けている。先月には、性的画像問題防止のためのクラウドファンディングに尽力。彼女自身、現役時代のみならず引退後も、出演作の無断転載に悩まされ続けている。アーティスト活動をする上でブランドイメージを損なうなど大きな被害を受けている彼女に、AV女優になった理由から業界の問題、性的被害に対する思いなどを聞いた。

性行為をしないと立っていられない精神状態に…「AV女優になるしかなかった」

――大塚さんがAV女優を目指したきっかけを教えてください。

たぶんその当時は、そうするしかなかった。そういうことをしないと、立っていられないような精神状態になっていました。高校1年の時に性犯罪に遭い、そこから性に対して奔放になってしまった自分がいます。レイプされた時の恐怖感は、今でも忘れられない。そんな中AV女優という仕事を選んだ自分は、心の奥底で「性行為なんか、なんでもないことなんだ」と、思いたかったんだと思うんです。

――無意識的に、良い記憶や体験に塗り替えたいという強い衝動だったのかもしれないですね。

当時はわからなかったんですけど、後から勉強したら、強い恐怖を感じるものに対して何度も飛び込もうとするのは心理学的にもよくあることだそうで、はたから見たらおかしいかもしれないですけど、当人としてはすごく全うな現象なんだそうです。だから、当時の自分の中では、AVという仕事は「せざるを得ないこと」だったんですよね。

――AV女優になったのは「恐怖」が消えたからではなかったのですね。

あとは、もともと国が女性が裸になる仕事を容認しているということへの違和感もありました。一般的には裸をタブーとしていて職業差別もあるのに、世の中には当たり前にAVがあって、風俗がある。そのすべてを自分の中で納得したいという思いと、自分を傷つけた性にまつわる仕事で、自分の存在を知らしめたいという思いもありました。

傷を癒すために選んだ職業がさらなる傷を生むことに… 売れずに7年耐え忍んだ理由とは

――実際に仕事にしてみてどうでしたか。

私の場合は、さらに自分を傷つけてしまったように思います。性犯罪の被害者であると素直に公言していたら、業界からは腫れ物を触るような扱いをされて仕事が減ってしまい、ファンからは「性犯罪被害者がAV女優を選択する理由が分からない」とコメントをされ、一部の知人から偏見の目を向けられることもあり、傷口に塩を塗られる感覚でした。

――それでも辞めたいとは思わなかったですか?

当時は売れないことでさらに自己肯定感を完全に失っていて、ここで辞めてしまったら、性被害の経験から二度と立ち直れないという思いに縛られ、ますます自己嫌悪に陥ってしまうのではないかと思って辞められなかったんです。負のループに向き合い続ける中で、何度も自分を死に追いやろうとしたこともあったけれど、将来の夢もあったので、なんとか思いとどまってきました。

――将来の夢とは?

性被害に遭う前から、いつか絵や写真で有名になりたいという思いがありました。AV女優として売れることができたら「大塚咲」のまま芸術活動をしたい。そうすることで、性被害に遭っても、AV女優でも、セカンドキャリアを築けることを証明したいとも思っていました。

――そんな中、卒業を決めることができたきっかけは?

私は、女優として売れない期間が7年もあったんです。一番売れるはずのデビュー直後、まったく売れなかった。売れないと、長く続かずに引退しちゃう子も多いんですけど、私はもう必死にすがりついていました。そして7年目、たまたま1本、爆発的にヒットした作品があったんです。そこから1日置きに現場が入るくらいには忙しい日々を過ごして。やっと自分の気持ちに決着をつけることができました。

AV女優への偏見は減少傾向も「生活が苦しくて入るということがあってはならない世界」

――現在は夢を叶えて、アーティストとして活動されていますよね。離れてみて、AV業界について思うことはありますか。

「AV女優」という職業への偏見は、昔よりかなり減ってきていると思います。でも、やっぱり昔からある「悪習」が残っている部分も否めない。業界にいるすべての会社が悪いわけではなくて、純粋に作品や演者に向き合っているプロダクション、メーカーもあります。でも、いまだに「グラビアタレントになれる」という文句でスカウトされる女の子もいます。今は、自分から「AV女優になりたい」って思う子も増えているじゃないですか。だからこそ、悪徳スカウトマンがそのつもりがない子を勧誘することで、起こらなくてもいいはずの不幸が起こることがあることが悲しいです。AVは10代の子でも出演できてしまうけれど、そんな年頃に多角的で正確な判断ができるでしょうか。本当にやりたい子もいるから、そういう子たちが信念を持ってやればいい世界で、生活が苦しくて入るということがそもそもあってはならない業界だと思います。

――大塚さん自身、引退後も出演作品の無断転載などの被害に遭われたとか。

引退して8年も経っているのに、10年以上前の作品や写真が再編集されたアダルトグッズが販売されていたんです。私は所属していたプロダクションに許可をとって、今も所属時と同じ芸名でアーティスト活動をさせていただいているのですが、その状況の中、あたかも新作のように映像を販売されてしまって、周囲から「女優として復帰したの?」と聞かれて驚きました。

アーティスト活動をしていくにあたって、自分のブランディングというものもしっかり考えてやらせていただいている中ですから…。コンプライアンス的にも、今契約させていただいている会社さんに迷惑がかかる可能性もあります。「復帰したの?」と聞かれればまだ否定できますが、「復活したんだ」「生活苦なのかな」と思っただけの人もいたと思うんです。名誉がすごく傷つけられました。そのメーカーとは今も弁護士を通じて協議中です。

――引退後もこのような苦悩があることについて、どのようにお考えですか。

たとえば、違法アップロードされた映像作品をまとめているダウンロードサイトなどがSNSにその情報を流すツイートをし、アフィリエイト収入を得ています。私が他のところで頑張れば頑張るほど、過去の素材を持っている人や第三者が不当な利益を得るというのはおかしいんじゃないかな、と強く思いますね。

デジタル性暴力防止のための活動も「性被害者に幸せになれるよ、と言える人生歩みたい」

――動画の無断使用から「デジタルタトゥー」の危険性についても言及されていますよね。

たとえば裸の画像を誰かに撮られたり送ったりすることでも、AVに出演することと同じくらいのデジタルタトゥーの危険性を孕むことになると思うんです。SNSで出会った大人に騙され裸の写真を送ってしまう未成年の子や、行為の動画を撮られてネットにさらすと脅され続ける女性もいる。AV作品なら国内のものを削除申請することはできますが、海外の違法サイトなどに渡ってしまうと、追いきれないくらい広まっていってしまうこともある。個人で撮影されたものは、削除申請で追いかけるのもAV作品より大変だと思います。

だから、2021年1月には、デジタル性暴力を防ぐためのクラウドファンディングにもご協力させていただきました。スマホカメラに裸を撮ることができなくなるAIを普及するためのクラウドファンディングです。私自身が性犯罪の被害者として、次に同じ思いをする子が現れないためになにかしたい、という思いで協力しました。
――大塚さんがこうして、性産業から離れても「性」にまつわることに関わっていくのはなぜですか。

実際に女の子たちからよく相談を受けるのですが、動画作品の消し方も、性犯罪被害者としての声の上げ方も知らずに困っている人ってたくさんいると思うんです。AV業界の悪習から、私に降りかかる問題が尽きないので対応せざるを得ないのです。表に出てる立場で私のように前のプロダクションと関係が切れている子も少ないですし、泣き寝入りしてしまう子もたくさんいます。批判や偏見の声もたくさんいただきますし正直面倒なこともたくさんありますけど、自分の子どもが大人になった時に少しでも生きやすいように、できることはしていきたいです。

――“使命感”のようなものも感じられているのでしょうか。

そうかもしれません。今は性被害に因われていた自分から抜け出すことができて、人生で一番幸せを感じています。あの時の自分はとにかく精神を保つことに必死で、心の傷を治すために、AV女優として頑張った自分に対してネガティブな思いはありません。もし性被害に遭っていなかったら、美大に行って、AV業界で働いていた時にはアーティストとして活躍していたのかな…という寂しさはありますが、人とは順番が違ったけど、あの事件を踏まえて、あの業界の過去を踏まえて、10代の時に思い描いた今がようやく実現できて良かったと、今心から思えています。性被害を受けて、自分の心の傷がいつ治るのか、治る日がくるのか、不安でしょうがない人たちはたくさんいると思います。そんな人たちのためにも、大丈夫だよ、幸せになれるよ、って言えるように、これからも頑張っていきたいですね。


(取材・文=ミクニシオリ)
大塚咲個展「女であるために」
■4/2-4/30
Gallery ETHER
https://www.galleryether.com/

大塚咲個展「私であるために」(仮)
■4/16-4/25
12時〜20時*最終日は19時まで
4/20.21休廊
Gallery FACE TO FACE
https://www.facetoface2000.com/

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