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テレ東の“英断”に称賛多数 メインがぬいぐるみの『おじさまと猫』、前例にとらわれない挑戦
本物の猫ではなく人形を使った理由、「フルCGには予算がゼロ2つほど足りません(笑)」
「企画段階では、本物の猫でいくか、作り物でいくか選択肢はいくつかありました。以前、田中要次さん主演の『猫とコワモテ』を手掛けたのですが、その時は猫のありのままの姿を捉えることで成立するドラマだったので、本物の猫を使ったんです。ですが『おじさまと猫』では、ふくまるの気持ちがとても大事で、猫にも高いレベルのお芝居が求められる。本物でそれをやろうとすると撮影に時間もかかりますし、なにより猫にストレスがかかってしまいます。動物愛護の観点からも良くないですし、原作の桜井海先生も同じ気持ちでしたので、人形で表現することにしました」
――ドラマ発表当初は、ふくまるが人形であることに賛否両論だったと。
「SNSなどでは、実写化決定の喜び半分、『ぬいぐるみかよ!』というツッコミ半分でした。でも、撮影現場では出演者もスタッフもみんな、人形のふくまるをとても可愛がっていて。それを見て、『オンエアされたらきっと愛してもらえる』という確信はあったんです。声をあてる神木隆之介さんも、自分だけアフレコなことに不安はあったそうですが、最初の読み合わせで草刈さんから『かわいい!』と拍手が送られるほどでした」
――人形以外の選択肢はなかったんですか?
「フルCGでいけたら良かったのですが、それには予算がゼロ2つほど足りません(笑)。ただ、主演の草刈さんがおっしゃっていたのは『リアルタイムでふくまるとお芝居ができるので、人と演技をしているのとなんら変わらずに感情移入して演じられた』と。結果的に、良かったと思いましたね」
入り口の気軽さに比べて出口の感動が大きい、“ラッキー感動”が発動
「実は表情用と全身用で分けていて、表情用はマペット…下半身から手を入れて顔を動かします。全身用は差し金を使い、人形劇のような形になります。前足担当、後ろ足担当、人形を操るプロの方が2人で動かしてくれていて、これを後から合成で消す手法を取っています。お子さんには内緒ですよ(笑)」
――本物の猫とはまた違う、人形ならではの“ヌケ感”、ぬいぐるみのような質感が、視聴者の心に刺さっているようにも見えます。
「そのギャップが良かったなとも感じています。実は私は、バラエティー担当時代が長かったんですよ。テレビ東京というと、終電を逃した酔っぱらいについて行ったら、予想外のドラマティックな人生が垣間見えたとか(『家、ついて行ってイイですか?』)、空港にいる外国人について行ったら、すごい日本への愛情があったとか(『YOUは何しに日本へ?』)、入り口の気軽さに比べて出口の感動が大きいドキュメント番組が多々あります。これを僕は“ラッキー感動”と呼んでまして(笑)、今回のふくまるの演出にも少しあてはまっているのではないかなと」
――「人形かよ」という入口で観てたら、その人形に感動してしまう…という出口に出ちゃったということですね。
「そうです。実際、『人形にこんなに泣かされるとは』といった書き込みをたくさん見ました。人形だからこそ可能な感情表現がたくさんありますし。“ラッキー感動”はうまく発動しているようです(笑)」